アンチフェミニストはなぜ生まれるのか?― 見えてきた5つの心理パターン ―
「アンチフェミニスト」とは、フェミニズムの理論や実践に反対する立場をとる人たちのことを指す。
私はフェミニストとして発信を続ける中で、多くのアンチフェミニストから攻撃的なリプライを受けてきた。
女性の権利について書く。
性暴力について書く。
女性差別について書く。
それだけで、
「男性差別だ」
「フェミはバカだ」
といった攻撃が飛んでくる。
最初は理解できなかった。
なぜ、女性が受けている差別や被害について話すだけで、ここまで強い怒りを向けられるのだろう?
発信を続けるうちに、私はあることに気付いた。
一見バラバラに見える彼らの反応も、その背景にある心理をたどると、いくつかの共通したパターンが見えてくる。
もちろん、すべてのアンチフェミニストが当てはまるわけではない。
それでも、私が実際に受けてきたリプライやネット上で見られる反応には、共通する特徴が見られた。
そこで私は、アンチフェミニストの反応の背景にある心理を、5つのパターンに整理してみた。
① 自分が攻撃されていると感じるタイプ
― 社会的アイデンティティ理論
「男だって生きづらい。」
「男ばかり悪者にするな。」
このタイプは、女性が家父長制や性差別といった社会構造を問題にしているにもかかわらず、それを「男性個人への攻撃」と受け取ってしまう。
社会心理学には社会的アイデンティティ理論という考え方がある。
社会的アイデンティティ理論から考えると、このような反応は、自分が属する集団への批判を自分自身への批判として受け止める心理と重なる。
その結果、女性が社会問題について話していても、「俺は悪くない。」 「男性だって苦しい。」という反応が返ってくる。
彼らは女性の話を聞いているというより、自分自身を守るために反応しているのである。
② 現状維持タイプ
― システム正当化理論
「もう十分平等だろ。」
「昔よりずっと良くなったじゃないか。」
このタイプは、現在の社会は基本的に公正であり、大きな問題は存在しないと考えている。
社会心理学にはシステム正当化理論という考え方がある。
人は、自分が生きている社会制度を「正しいもの」「公平なもの」と信じたい傾向があるという理論だ。
そのため、格差問題や女性差別を指摘すると、「そんな問題はもう存在しない。」という結論になりやすい。
現状を変えること自体が不必要、あるいは脅威として映っているのである。
③ ネット対立消費タイプ
― 承認欲求と集団心理
「またフェミが騒いでる。」
「フェミって本当に頭おかしい。」
このタイプは、フェミニズムを社会問題ではなく炎上コンテンツとして消費している。
フェミニストを探して攻撃し、その様子を仲間内で共有し、笑い合う。
SNSでは「同じ考えの仲間」に評価されることで承認欲求が満たされる。
そのため、議論をすることよりも、「フェミニストを叩くこと」そのものが目的になっているケースも少なくない。
こうした相手に、丁寧な説明やデータを提示しても、議論が成立しないことが多いのはそのためである。
④ 極端な事例を一般化するタイプ
― 確証バイアス・外集団同質性バイアス
「フェミは男嫌い。」
「フェミはみんな過激。」
このタイプには、いくつかの認知の偏りが重なって見られる。
一つは確証バイアスである。
確証バイアスとは、自分の考えを裏付ける情報ばかりを集め、それに反する情報を見落としやすくなる認知傾向のことだ。
もう一つは外集団同質性バイアスである。
これは、「自分たちの集団には様々な人がいるが、相手の集団はみんな同じような人間だ」と認識しやすい心理を指す。
そのため、一部のフェミニストによる過激な発言や、切り取られた投稿だけを見て、「フェミニストは全員そういう考えだ。」と一般化してしまう。
また、発言だけを切り取り、その背景にあるフェミサイドや性暴力への抗議といった文脈には目が向きにくい傾向も見られる。
⑤ 権益損失タイプ
― ゼロサム思考
「逆差別だ。」
「男の権利が奪われる。」
このタイプの背景には、ゼロサム思考がある。
ゼロサム思考とは、「誰かが利益を得れば、その分だけ自分は損をする」と考えやすい認知傾向である。
つまり、「女性が権利を得れば、その分だけ男性は損をする。」という発想である。
しかし、本来、女性の人権が保障されることと、男性の人権が失われることはイコールではない。
それでも、これまで当然だと思っていた立場や優位性が変化することへの不安から、「男女平等」が「男性への脅威」と映ってしまうのである。
おわりに
私はこの記事を書いたのは、アンチフェミニストへの理解を示してほしいからではない。
私が伝えたい相手は、フェミニストとして発信し、突然大量の攻撃を受けて戸惑っている女性たちである。
「どうしてこんなことを言われるんだろう。」 「丁寧に説明すれば分かってくれるかもしれない。」
そう考えて、何時間も、何日も議論を続け、心をすり減らしてしまう女性を私はたくさん見てきた。
しかし、その攻撃の多くは、単なる誤解が原因ではない。
相手の認知の偏りや自己防衛、集団心理、現状維持への欲求、不安などさまざまな心理的背景から生まれている。
だからこそ、必要なのは自分を責めることでも、「いつか分かり合えるはずだ」と無理に背負い込むことでもない。
「こういう心理で攻撃してくる人たちがいる。」
それを知っておくだけでも、突然浴びせられる言葉を必要以上に自分の中へ取り込まずに済む。
この分析が、フェミニストとして発信する女性たちにとっての「心の盾」になればと願っている。


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