好調な売れ行きのプレイステーション4、独自技術を盛り込んだデジタルカメラ、原音に近い音質が自慢のハイレゾオーディオ──。最近のソニーには、話題になる新製品が少なくない。年初に米ラスベガスで開かれた家電展示会でも、多くの新製品を発表。「ソニー復活」の声も多く聞かれる。
しかし、マーケットの評価は極めて厳しい。1月27日、米ムーディーズはソニーの長期信用格付けを引き下げ、投機的水準とした。「コアであるエレキ事業(テレビ、携帯電話、デジタルカメラ、パソコンなど)の大部分では、引き続き収益が大きな下方圧力にさらされている」というのが格下げの理由。昨年11月には英フィッチも「投機的」に格下げしており、社債発行コスト上昇は避けられない。
確かに、ソニーの2014年3月期業績見通しは厳しい。第2四半期決算発表の際に、従来の営業利益予想2300億円を1700億円に引き下げたが、主力市場である欧米の年末商戦では苦戦を強いられたもようで、エレキ事業が全般に下振れしそうだ。13年3月期はニューヨーク本社ビルなど資産売却により2000億円超の営業利益上乗せがあったが、今期はそうした「ゲタ」を履いていない。そのため、エレキの採算の悪さが、そのまま利益数字に表れてしまうのだ。
すぐに稼げるヒットなし
12年4月に就任した平井一夫社長は、製品への強いこだわりを持つ。たとえばハイレゾオーディオ戦略は、ハワード・ストリンガー会長・中鉢良治社長体制下で2年も塩漬けにされていた企画を平井社長が拾い上げたものだ。
当然、こうした新事業は先行投資がかさむ。平井社長は1月上旬のインタビューで「商品企画の現場は、失敗を恐れて収支を読みやすい実績のある製品を出したがる。しかしソニーの長所は、感性に訴えることができるよい音、よい映像を楽しめる製品を生み出す点にある。失敗を恐れず、リスクを取っていかなければならない」と説明。「リスクを取る」というフレーズを多用してみせた。
確かに、平井社長はリスクを取った種まきを積極的に行っている。出井伸之社長体制以降、ソニーのトップは製品開発の現場から離れた存在になっていたが、その状況を「古きよきソニー」の雰囲気へと変えつつあることは間違いない。新製品プロジェクトがいくつも立ち上がることで、開発現場の士気も上がっている。
が、言うまでもないことだが、こうした種まきを続けるためには、重要な大前提がある。赤字体質から脱却していることだ。今後とも家電ビジネスは厳しい価格競争を避けられないが、ソニーは何で稼いでいくのか。その点を平井社長に問うと、「他の収益源を確保しながら進めていく」との答え。「得意とする映像処理やイメージセンサー技術を生かせる、新たな事業領域(医療分野やヘルスケア、美容、農業)を中長期スパンで育てていく」というのが、平井ビジョンだ。
その一方、すぐに稼げるような「目先のヒット」が現れない点が、ソニーの悩みだ。全米家電協会は今年、情報家電の売り上げのうち、実に4割がスマホとタブレットで占められると予想している。そうした中ではソニーも、スマホ「エクスペリア」シリーズの販売シェアを引き上げ、屋台骨に育てていく必要がある。しかし、「モバイル事業で新たに加わる売り上げよりも、カメラ、テレビ、パソコンの不振による売り上げ減のほうがずっと大きい」(ソニー関係者)。
平井社長のビジョンを成り立たせるためには、国内工場の一層の削減など、一段のリストラによる損益分岐点の引き下げが不可欠なのかもしれない。
(週刊東洋経済2014年2月8日号〈2月3日発売〉 核心リポート02)