ミモザ、印象派、ミューゼアム…。
安井かずみ晩年のパリ趣味全開曲を、高岡早紀が名唱!
「安井さんのパリのエッセイは、この世のものとは思えないくらいお洒落でした。」
1994年、安井かずみが55歳で亡くなった際、作家の林真理子は、追悼エッセイにそう記している。
安井かずみは、64年に作詞家デビュー。
以来、沢田研二、伊東ゆかり、西城秀樹らに歌詞を提供。
英・仏語、双方堪能で、訳詞も多く手がけた。
また、お洒落なライフスタイルが注目され、著書エッセイも30冊以上。
パリをこよなく愛し、一時在住もしていた安井の歌詞には、パリのお洒落な雰囲気が、常に漂っていた。
74年の「追憶」では、「ニーナ」という中東欧の女性の名前を、ジュリーが連呼。
ニーナって誰?というツッコミを許さぬほど、情熱的なバラードを展開。
同年の郷ひろみ「よろしく哀愁」、和田アキ子「古い日記」には、共に「アパート」という単語が登場するが、安井が書くアパートは、日本のそれではなくパリのお洒落なアパルトマン…の印象。
安井は、歌謡曲とパリをブレンドする、バリスタのような存在だった。
「ミューゼアムで 出会ったあの人 セザンヌを見てたの」
140曲に渡る歌詞作品の中、安井のパリ趣味が最も色濃く注入された楽曲が、高岡早紀の「セザンヌ美術館」。
88年デビューの高岡早紀に、安井の夫、加藤和彦は「真夜中のサブリナ」「眠れぬ森の美女」「悲しみよこんにちは」「薔薇と毒薬」と、ヨーロピアン路線の楽曲を連続提供。
「セザンヌ美術館」は、6枚目のシングルだ。
高岡のデビューした88年は、昭和のアイドル歌謡ブームが終焉し、J-POPへの過渡期。
アイドル歌手も、アーティスト的展開を必要とされ、他にも、原田知世やおニャン子出身の河合その子が、ヨーロピアン路線の楽曲をリリースしていた。
が、「セザンヌ美術館」は、それらを凌駕する本格的フレンチポップだった。
絵画好きなノーブルな彼との午後のデートを描いた優雅な歌詞。
「ミモザ」「プロヴァンス」「印象派」と、パリ・南仏を想起させるワード。
アコーディオン、カリンバ、マンドリン等、民族音楽たっぷりのサウンド。
細く繊細、かつ明瞭で美しい高岡のハイトーンボイス。
パリの午後の美術館の静謐な空気を携えたこの曲は、現地のフレンチポップと続けて聴いても全く遜色がない。
安井は、この詞を書いた3年後の94年、肺ガンで死去。
同年、高岡も映画「四谷怪談」でヌードになり、アイドル卒業。
以後、大人のマドモアゼルとして、今もこの曲をライブで歌い続けている。
「セザンヌ美術館」
作詞:安井かずみ
作曲・編曲:加藤和彦