自然によりそう地域づくり
―自然資本の保全・活用のための協働のプロセスとデザイン―
自然を活かして地域を豊かにするための協働のすすめ方
どのように地域のステークホルダーと信頼関係を構築し、活動目標が合意され、活動に関わる人が増やされ、継続されてきたのか。
実践者によるコミュニケーションプロセスの詳述と、パターン・ランゲージによる経験則の読解。
さまざまな地域で協働による自然資本管理を創出・展開していくための必携の参考書。
生物多様性の保全を目的として、国際条約やそれに基づき政府が実施・推進する制度や政策など、トップダウンによる枠組みの構築が進んでいる。環境省のホームページなどでは、複数の主体が目標を共有し協力して課題解決に取り組む「協働」活動が、地域の先進事例として紹介されている。しかし、地域ごとに土地の特徴や取り組むべき課題、人材や資金の状況も異なる中で、表層的な部分のみが紹介されても他地域での成果に繋がっていくことは少ない。
様々な主体(ステークホルダー)を巻き込む形で地域の自然資本管理を進めていくためには、目標設定のあり方、多様で多元的な主体間での合意形成の進め方、そのために準備すべきプラットフォームを地域の個性に応じて考えていけるようにするためのツールキットが必要である。
本書では、地域に入り込んで研究や実践活動を行ってきた研究者・専門家が蓄積してきた事例から、地域での活動の動機、それによって構築される同じ目標を持つ人・組織が集まるプラットフォームと、それによって形成されるネットワーク、そのネットワークを基盤に自然資本管理に結びつけていく一連の「コミュニケーション・プロセス」を整理し、ボトムアップによる「緩やかな環境自治」の創出プロセスを詳細に示す。そこから合意形成のためのコミュニケーションを促進し、ガバナンスの仕組みを構築していくためのマネジメントの論理や技術を経験則として構築する。最後に、経験則をパターン・ランゲージとしてとりまとめ、自然資本管理に関わる協働のプロセスをデザインし、マネジメントしていくためのツールキットを提供する。
【読者対象】
・生物多様性や生態系の保全・活用をテーマに地域で活動する研究者、実践者(NPO)
・地域の実践活動に貢献したい生態学研究者
・自治体やNPO・NGO職員、生態学者と組んでまちづくりをしたい市民
分野:景観生態学、生態学、環境社会学、地域政策学、都市計画学、地理学、観光学、農村計画学、土木工学、建築学、造園学、緑化工学
第1章 自然資本の自律的な協働管理を進めるために(鎌田磨人)
社会-生態システムとしての地球の危機
危機からの脱却に向けたグローバルな動き
日本における国や自治体の動き
地域社会でのボトムアップ活動の必要性
自律的なボトムアップ活動をマネジメントするための枠組み
他の地域でも使えるやり方を見つけるために
第2章 多様な主体による自然資本管理を進めるために―「実践としての超学際」という考え方(ハイン・マレー・田村典江)
学術と社会の「際(きわ)」を超えての問題解決
プラネタリー・バウンダリー
求められている持続可能な社会へのトランジション
自然の保全を目指す研究者・専門家へのメッセージ
第3章 パターン・ランゲージによる実践技術の共有(鎌田安里紗)
パターン・ランゲージとは
パターン・ランゲージの作成方法
パターン・ランゲージを使うと何ができるのか
本書で提供するパターン・ランゲージ
第2部 暮らしの中で自然を賢く利用するための協働のプロセス
第4章 生産から消費までの流通全体で取り組む里海保全― モズク養殖とサンゴ保全【沖縄県恩納村】(大元鈴子)
サンゴ礁が支える恩納村のモズク養殖
恩納村における海面利用ルールと赤土流出防止方策の構築プロセス
里海保全活動のモズクサプライチェーンへの拡大―加工会社との協働
第一次産業による生態系保全にサプライチェーン全体で参加する
漁協に研究者がいるということ
第5章 自然再生と地域活性― 農業政策を変化させたトキ【新潟県佐渡市】(岩浅有記)
トキの保護増殖から野生復帰へ
トキ保護の歴史
トキ認証米制度の創設プロセス
政策統合をもたらしたステークホルダー間のネットワーク
バウンダリー・オブジェクトとしてのトキ
▶Column1 ローカル認証で進める生息環境の保全と地域課題の解決(大元鈴子)
第6章 多様な人々による都市の森の再生【京都市宝が池の森】(鎌田磨人・丹羽英之・田村典江)
多様な人々が集う場としての“宝が池の森”
宝が池の森の劣化と市民活動
宝が池の森での協働の展開プロセス
協働を支える人々の関わり
▶ Column2 協働活動支援のタケコプター― ドローン(丹羽英之)
第7章 里山再生のための順応的ガバナンスの技術【広島県北広島町】(鎌田安里紗)
北広島町での自然資本の管理と活用
自然資本管理を支えるマネジメントの経験則
経験則を順応的ガバナンスに活かす
第8章 自然資本としてのマングローブ林を活用し続けるための仕組みづくり【沖縄県金武町】(鎌田安里紗・鎌田磨人)
自然資本としてのマングローブ林
マングローブ林の劣化に伴う金武町内の動き
マングローブ林の永続的活用と保全に向けた協働の創出プロセス
人のネットワークを広げて協働を創出していくための経験則
協働を促進するためのコミュニケーション技術
第9章 生物多様性地域戦略のつくり方― 合意形成プロセスのデザイン【徳島県】(鎌田安里紗・鎌田磨人)
生物多様性とくしま会議
協働の始まり―協力しあえるつながりをつくる
協働の展開―議論を深めながら市民・コミュニティの力を育む
継続的に活動が続く仕組みをつくる
戦略策定後の市民活動への接続
合意形成プロセスのデザインへの活用
第3部 地域の自然を守り活かす取り組みを実践していくために
第10章 景観生態学者は活動を行う地域をどのように見ているのか(長井雅史)
全体像 ― 観点の曼荼羅
景観生態学者が地域を見る際に用いる38の観点
第11章 地域によりそう自然資本管理の進め方(鎌田安里紗)
パターンの読み方
地域によりそいながら自然資本管理を進めるためのパターン・ランゲージ
おわりに
索引
関連書籍
-
景観生態学
価格:3,520円(税込)