『モニカ詰め合わせ』

『スパイ教室』、お楽しみSS企画が終了した。とても有難いことにたくさんの応募があった。ここで改めてお礼を述べたい。ありがとうございました!

 しかし、いささか心残りもある。フォロワーさんから届いたアイデアは数百以上だが、形にできたのは僅か十数個。せっかく投稿していただいたのに、その大半は執筆さえできずにお蔵入り。さすがに申し訳なくなる。

 この現状を少しでも改善すべく、リリィがモニカの部屋に向かった。

「特にモニカちゃんに関するお題が多かったんですよ。愛されておりますねー」

「ふぅん。それはどうも」

 照れくさそうに頭を下げた彼女に、リリィは「というわけで」と提案する。

「せっかくなので、残りのアイデアを片っ端からこなしてもらいます」

「なんで?」

 不服そうに訴えるモニカを無視し、数々の無茶ぶりがモニカに襲い掛かる!


 ◇◇◇


『もしもモニカが灯のボスになったら』 コードネーム:ボテボテさんより


 突如として『灯』のボスに任命されたモニカ。

(ま、案外、ボクがボスになった方がうまくいくんじゃない?)

 実はそれほど嫌ではなかった。クラウスがボスという現状に不満がなかったわけではない。自分ならば、もっとよくできるという自負もないわけではなかった。

 モニカはボスとして『灯』をどう運営するか考えて小一時間――完璧な答えを出した。

「グレーテ、いい感じにお願い」

「丸投げではないですか……」

 つまりは面倒くさくなったのだ。実際になってみると、大変なものである。

 丸投げされたグレーテは、ティアに相談。ティアは任務の方針を打ち出し、その方針に沿うようグレーテが調整。最前線にはジビア、ティア、モニカを配置し、その後方にはサラ、エルナ、アネット。「これでいいですか……?」というグレーテの問いに、モニカは「んー、いいんじゃない?」と適当に返答。

「つまりは、結局何も変わらないじゃない」

 そう呆れるティアに。モニカが肩を竦める。

「……ま、落ち着くところに落ち着くってことで」


 ◇◇◇


『ティア、ハイジさん、ニケさんに挟まれるモニカ』 コードネーム:こむぎさんより


 ティアが「モニカ、ボスになった昇進祝いをしましょう」と導き、ディン共和国首都のとある個室に案内される。待ち受けていたのは、ニケとハイジ。

「変態しかいねぇじゃねぇか‼」開口一番叫ぶモニカ。

「やれやれ。愛しい弟め。生意気な後輩を育てたものだ」

「特別な一時を楽しもうぜ、モニカ」

 騙された事実を悟り、モニカはティアを睨みつける。

 どちらも苦手意識のある相手。養成学校時代のトラウマ――『煽惑』のハイジ。そして、元上司にして仇敵『ニケ』。彼女たちはワインを嗜みながら、入室してきたモニカを愉快がるように見つめる。

 やがてティアを含めた三人は一度、視線を合わせ――服を脱ぎ始める。

「せめて理由を言えよ⁉」

「『変態』呼ばわりが気に食わない。この場に全裸しかいなければ、お前が変態ではないのか?」

「オセロじゃねぇんだよ!」

「さすが、フェロの娘たちだ。オレの行動を一瞬で理解し、同調してくれるよな」

 勝ち誇るように語るハイジに、ニケが拍手を送っている。

 しかし致命的な一手だった。全裸の女三人に、一人着衣の女。この場において浮いているのは、もはやモニカの方。次第に自身の常識が間違っている気になってくる。

「い、いや、なんだこれ……各チームの痴女を一堂に介して、一体――」

 脳みそが汚染する心地に頭を抱えるモニカに、ティアが「いや」と声で制した。

「ちょっと違うわね、コレ」

「いや、違うもなにも全員脳みそが媚薬に浸かっていて――」

「人数が足りないと思わない?」

「………………………………………………は?」


 ◇◇◇



『ニケ、翠蝶、ティア、ファルマ、ハイジに滅茶苦茶にされるモニカ』

コードネーム:ころんさんより


「増えんなあああああああああああああぁっ‼」

「がぁっ‼」

 痴女会場に招かれた『翠蝶』は久しぶりのモニカとの再会に、朗らかに――それは、もう嬉しそうに頬を緩めたが、一歩部屋に足を踏み入れた瞬間、モニカにボディブローを腹にぶち込まれた。

「一言くらい喋らせてあげたらよかったのにぃ」

 壁に叩きつけられ、気絶した『翠蝶』を踏みつけながらファルマが入室する。

 彼女は全裸のニケ、ハイジ、ティアの姿を順に見て、なにか得心いったように頷いた。迷うことなく服を脱ぎ始める。

「なんでキミも、この痴女どもの意図を汲めるんだよ⁉」

「心で繋がっているんだよねぇ、ファルマたちはぁ」


 ◇◇◇


『もしモニカがハーモニカを吹いていたら』 コードネーム:細マッチョ未満さんより


ふああああああああああああああああああああああああああ(怒)

ふああああああああああああああああああああああああああ(怒)

ふああああああああああああああああああああああああああ(怒)


 ◇◇◇


『モニカが風邪を引く話』 コードネーム:タルタロス囚人49121番さんより

『風邪ひいたモニカをたっぷり甘やかすジビアとリリィ』コードネーム:いそにゃんさん

『モニカが風邪をひいて、リリィなどが看病するドタバタの日常』コードネーム:ちくわさん


「珍しいですねー。モニカちゃんが風邪なんて」

 ある日、体調を崩してしまったモニカを、リリィは不安そうに見つめる。ベッドに横たわる彼女のそばで、リンゴの皮を剥きながら「『体調管理もスパイの仕事』とかよく言っているのに」と呟いた。

 体温を測ったところ、三十九度。かなりの高熱だった。

 熱にうなされるモニカを、同じく看病するジビアが労わるような視線を送る。

「なんだか大変だったみたいだぜ、『灯』のボスの初任務」

「あれ? まだそんな高難度の任務、聞いていないような――」

「――痴女に囲まれて全裸でハーモニカを吹いていたんだって」

「本当に聞いていないんですが⁉」

「さすがのモニカも痴女軍団には、勝てなかったか」

 真偽は不確か。なんにせよ、重たい病気を受け取ってしまったモニカは「マジ……無理……しんどい……」とベッドで呻いている。その苦しそうな声を聞き、リリィが慌てた様子で「わたし、氷嚢取り換えてきますねー」と部屋から出て行った。

 ジビアはリリィが離れたことを確認し、横たわるモニカを見つめる。

「なぁ、モニカ」

「……………………なに?」

「リリィによく言ってんの? 『体調管理もスパイの仕事』って」

「…………なんか間違ってる?」

「いや、あたしに言ってくれたことないなぁって」

「……………………………………………………マジで黙って」


 ◇◇◇


『もしモニカがメイド、もしくは執事にならないといけない任務があったら』

 コードネーム:パインさんより


「……モニカさん。病み上がりで申し訳ないのですが、メイドとしての潜入任務をこなしてください」

「え、なにそれ。聞いてない」

「聞いていないのは、わたくしに丸投げしたからですね……」

「……もしかして怒ってる?」

「スカート丈が短めのメイド服をティアさんが用意してくれました……」

「ごめんってば」

「潜入先は、ガルガド帝国からディン共和国に亡命してきたご家族ですね。念のために、二重スパイなどの危険はないか、などの思想調査を……」

「いや、だから、だからマジでごめんってば」


 ◇◇◇


『マテルがモニカと再会して弟子入りしたら』 コードネーム:ゲナテマさんより


「え……師匠? え、お父さんが雇ったメイドって………え?」

「………………………………………………………別人」


 ◇◇◇


『「髪切ったんですね、似合ってます」とリリィに言われた、1ミリも切ってない気まずすぎるモニカ』 コードネーム:ももんさんより


「あ……うん…………切ってないけどね……ま、似合っているなら、なによりだ」


 ◇◇◇


『もしモニカが「灯」全員を口説いたらどうなるか?』 コードネーム:Poyoさんより


「おええええええええええええええええええええええええっ‼」

「緊張・嘔吐・ギブアップの三連コンボ‼ 一人目で脱落したの!」

「俺様っ、チャレンジ大失敗に爆笑しますっ」

「……なんで一人目からリリィ先輩に挑戦したんすか? いや、本当に……」


 ◇◇◇


 ――などなど他にも山ほどのアイデアをリリィは読み上げる。


「モニカちゃん、他にもたっくさん来ていますよ? ……コードネーム『陽月』さんより、『リリリンを口説くアイオーン』……コードネーム『スパイ学校序列11位』さんより『もしモニカが「灯」最弱だったら』とか、他にも――」

「マジでしんどい、もう無理」


 が、そろそろモニカのメンタルが限界を迎えていた。

 どうか、これで勘弁してください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る