Yahoo!ニュース

日本人の8割が知らない子どもの権利・こども基本法 #こどもの日 にこそ学ぼう(チェックリストつき)

日本大学教授・教育政策・こども政策・子ども若者の権利
大阪市には小学校3年生から子どもの権利を学ぶ公立学校がある

あなたは、子どもの権利条約・こども基本法を知っていますか?こんな調査を2025年3月にこども家庭庁が実施しています。

「聞いたことがある」「名前だけ聞いたことがある」と回答した大人(18~80歳以上)は子どもの権利条約・こども基本法ともに8割以上。

つまり日本人の8割は、わが国の子どもに関するもっとも基本的な法制である、子どもの権利条約・こども基本法を知らないのです。

もっともこれは大人に限ったことではありません。子ども若者も、自分たち自身の権利を規定している子どもの権利条約・こども基本法の内容について、「詳しく知っている」「知っている」と回答した人が1割もいないのです(2023年・日本財団こども1万人意識調査・10~18歳対象)。

1.日本人は子どもの権利を知らず、侵害しすぎている

みなさんは日本の子どもたちは幸せな環境で生きていると思われていますか?

乳幼児死亡率の低さをはじめ身体的な幸福度やテストスコアは先進国トップです。

しかし友達をつくるスキルに自身のない子ども若者が多く、精神的幸福度は38か国中37位。

心が幸せではなく、幸せな人間関係を作ることに自信が持てない、そんな子ども若者の状況が指摘されてきました(2020年・ユニセフレポート)。

子ども若者の自殺者数が過去最多を更新しつづけています。

大人から子ども若者への性暴力・児童虐待、教員から児童生徒への不適切指導も減りません。

子どもを狙う卑怯な犯罪の報道に心を痛めている方も多いでしょう。

公園でボール遊びすら禁じられ子どもの声が騒音扱いされる日本です。

このような日本の子ども若者の状況は、日本人は子どもの権利を知らず、侵害しすぎていることによって引き起こされている。

だからこそ、大人も子ども若者を、子どもの権利・こども基本法を学び、積極的に子ども若者の権利を守り実現していかないと日本に未来はない。

こども基本法に関わった研究者・実践者たちはこのように考え、取り組んでいるのです。

2.子どもの権利条約・こども基本法に定められる「こどもの権利」とは?

こども家庭庁は上記の調査で、「以下のうち、あなたが、こどもの権利だと思っているものをすべて教えてください」と聞いています。

みなさんも、どれが「こどもの権利」か考えてみましょう。

□すべてのこどもは、男女などの性別や、肌の色などで差別されないこと

□こどもにとって最もよいことを考えてもらえること

□すべてのこどもは、健やかに生きる・育つことができること

□自分に関係があることについて、意見や気持ちを聞いてもらえること

□こども同士で集まったり、活動のためのグループを作ったりすること

□親などの一緒に暮らしている大人からの暴力やひどい扱いから守られること

□医療・保健サービスを受けること

□生活が難しい場合に、国からお金などのサポートを受けること

□心や体を十分に成長させていけるような生活を送ること教育を受けること

□休んだり遊んだりすること

□スポーツ・文化・芸術活動に参加すること

□心や体によくない危険な仕事や就学に支障を

□きたす仕事から守られること

□誰からも幸せを奪われないこと

さあ、あなたが「こどもの権利」として選んだものは何個ありましたか?

3.実は「すべてがこどもの権利」

実は、前の選択肢の「すべてがこどもの権利」なのです。

さて、日本の大人たちはどのように答えているでしょうか?

こども家庭庁の調査から確認してみましょう。

こども家庭庁,2025,児童の権利に関する条約の認知度等調査(簡易版)報告書,p.16
こども家庭庁,2025,児童の権利に関する条約の認知度等調査(簡易版)報告書,p.16

「教育を受ける権利」、「健やかに生きる育つ権利」などは、6割程度の大人がこどもの権利と認識しています。

いっぽうで、子どもの権利条約・こども基本法上、もっとも重要な規定とされる「こどもにとって最もよいことを考えてもらえること(子どもの最善の利益の優先)」は、3割程度しか認識されていません。

来年2026年に施行予定の、卑劣な性犯罪前歴者から子どもを守る、日本版DBS(こども性暴力防止法)は長年、性犯罪者の職業選択の自由を優先させる法務省によって妨害されてきました。

子どもの権利を知らない大人たちが、子どもを傷つける日本にしてきてしまったもっとも残念な事例のひとつです。

大人たちが子どもの権利・こども基本法を知らない学ばない。

それこそが子ども若者が簡単に傷つけられ、幸福を奪われる日本の基盤となってしまっているのです。

こども基本法に「子どもの最善の利益の優先」が規定されたことではじめて、日本は「子どもたちが健やかに生きる育つ権利」を性犯罪者から守られる仕組みとして実現できたのです。

子どもの権利・こども基本法を、大人も子ども若者も知り学ぶ。

それこそが子ども若者が傷つけられない、幸福に生きられる、自らのそしてお互いの尊厳と権利と大切にしあう日本の基盤となるのです。

みなさんも、こどもの日に、子どもの権利・こども基本法を学んでみませんか?

私自身は依頼があれば子ども若者向けの授業を無償で実施しています。

またこども基本法についても以下の記事を書いていますので、知りたいなと思ったみなさんはぜひご一読くださるとうれしいです。

こどもがわかる「こども基本法(きほんほう)」、どんなほうりつ?、どんなけんりがあるの?(こどもむけ・2023年4月2日・Yahoo!エキスパートきじ)

子どもも大人もわかる「こども基本法」、どんな法律?どんな子どもの権利があるの?(大人向け・2023年4月2日・Yahoo!エキスパート記事)

  • 8
  • 2
  • 0
ありがとうございます。
日本大学教授・教育政策・こども政策・子ども若者の権利

末冨 芳(すえとみ かおり)、「子ども若者が幸せな日本に」、教育政策・こども政策での分野横断型の研究活動を展開。専門は教育行政学、教育財政学。教育費問題の専門家として、2014年より内閣府及びこども家庭庁にて子どもの貧困対策の審議会委員を務める。こども基本法、こども性暴力防止法、小学校35人学級、教員の働き方改革、高校無償化、児童手当の所得制限撤廃など、国会参考人として提言の実績。主著に『子ども若者の権利とこども基本法』(明石書店,編著)、『子育て罰―親子に冷たい日本を変えるには』(光文社新書,編著)、『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

末冨芳の最近の記事

あわせて読みたい記事