「社会そのものがデザインでできている」――クリエイター・佐藤可士和の整理し続ける人生
今の日本をブランディングするとしたら
責任の重い仕事に挑みながらも、経営者とのやりとりは率直でざっくばらんに聞こえる。 「友達にアドバイスするような感覚なんです。クラスの友達から『あの子が好きなんだけど』と相談されたら、『こんなふうに接したほうがいいよ』とか、そういう感覚。だから、『作ってくれ』と頼まれても、『作らないほうがいいんじゃないですか』と言うこともある。誰にも忖度なく、素直に、いいと思うことを言っているだけです」 佐藤が仕事を受ける基準はあるのだろうか。 「その企業やブランドに、社会をよくしていきたいというビジョンがあることが重要ですね。何でもいいからもうかればいいとか、そういうお手伝いはしても意味がないかなと思います」
近年は、団地の再活性事業や教育活動など、社会課題の解決につながる取り組みも増えている。目下、力を注ぐのは、静岡茶のブランディング。世界に向けて「JAPAN TEA SHIZUOKA」を発信している。ではもし日本全体のブランディングを頼まれたら、どんなアプローチをとるのか。 「日本には素晴らしいコンテンツがたくさんあって、ある程度世界に伝わっていると思います。ただブランディングをしようとする時、アニメや漫画、伝統工芸など、コンテンツや領域の話になる。それはあまり効率がよくないと思うんです。横軸で刺すような根本的なことを伝えたほうがいいかなと。アニメや漫画、伝統文化、食、そこに共通していえるのは、感性の解像度が高いことだと思います。微差を感じ取れたり表現できたりして、それが質につながっている。強みになるのはクオリティーしかない。感性の解像度が高いから、そういうハイクオリティーなものができるんです、と説明するといいんじゃないかな」 自身の今後を尋ねると、「もっとすごいものを作りたい」と少年のような夢を語った。 「『Born to be creator』というか、それが生命活動みたいなものなので」 佐藤はこれから、混沌とした世の中をどう整理していくのだろうか。
佐藤可士和(さとう・かしわ) 1965年生まれ。東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、博報堂に入社。2000年に独立し、「SAMURAI」を設立。『佐藤可士和の超整理術』など著書多数。 (取材・文:塚原沙耶) 【RED Chair】 ひとりの人生をひもとく『RED Chair』。先駆者、挑戦者、変革者など、新しい価値を創造してきた人たちの生き方に迫ります。