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『私たちの司くんが!』俳優×アイドル/ちゅろの小説

『私たちの司くんが!』俳優×アイドル

18,101文字36分

【シリーズ設定をし、追加小話を新規投稿しました】
X掲載の過去作
俳優夜鷹純×アイドル明浦路司←司推しモブ子視点
ハリウッド俳優夜鷹純と人気急上昇中のアイドル明浦路司がW主演でドラマに出た!!そのBlu-rayの初回限定特典(撮影裏)を見る司推しモブ子視点です。

よだつかも神作たちが溢れるように多くなって(歓喜の涙)徐々に本来の読み専に戻っているのですが、とりあえずX掲載の分だけは支部に上げとかないとな……精神です。

何かございましたら、以下匿名メッセージボックスにどうぞ
https://wavebox.me/wave/6w3b52lygfareody/

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※俳優夜鷹純×アイドル明浦路司
司推しのモブ子視点


 今日はやっとやってきた待ちに待った日だ。

 なんと、私の推しアイドル明浦路司くんの初主演(正確にはW主演)連ドラのBlu-ray発売日なのだ!!

 私の推しは、3人組アイドルICEのメンバーである。白鳥ジュナ、鴨川洸平、明浦路司で、3人で歌って踊れて、バラエティーもお任せな最近話題急上昇のお茶の間アイドルだ。
 人気も世間の認知度も、正統派王子様顔で変顔もできるジュナが一番なのだが、私の推しは司くんだ。何にでも頑張り屋さんで、身長も高くてムキムキなのに、ベビーフェイス。声もおっきくて元気いっぱいの脳筋男子に見えるのに、歌ったり演技してるときはしっとりとしていて、そのギャップにやられる人も多い。

 司くんの魅力を語るとキリがないので、ここらへんで切り上げるとしよう。とにかく、その司くんが、地上派連ドラの初主演に抜擢されたと聞いた時は、SNS上の司オタが歓喜の涙を出した。
 司くんはICEのメンバーになる前は俳優志望で、小さな劇団所属だったそうだ。なかなか目が出ず、芸能活動を止めようと思った時、タイミング良くスカウトを受けた。それがジュナと洸平くんをグループ売りしようとしていた所属事務所が非公開で開催した男性アイドルオーディション。
 ジュナと洸平君との相性も考えて選ばれてと聞いている。本当に良かった。この時に選ばれていなかったら、私は明浦路司という私の太陽!アポロン!に出会えなかったかもしれない。
 ……つい、感傷的になってしまったけれど、司くんファンは、推しの夢である俳優活動をとっても応援している。ジュナはCMとバラエティの帝王だし、トークの上手い洸平くんはオールマイティーお茶の間アイドル。だからこそ、グループの中で世間からの知名度が少しイマイチな司くんには俳優としての大活躍してほしかったのだ。
 もちろんICEの活動が前提だけど……


 よしよし、Blu-rayのセットはOKだ。
 ドラマ放映時は、司オタは結託してネット再生数を回し、人気ランキング上げるために何度も各サイトで見逃し配信や有料配信を暇がある度に見続け、放送中はずっと1位を独占し続けた。
 まぁ、もう一人の主演の人が有名過ぎたし、内容も最高に良かったので、ワイドショー等でも話題になっていて、オタの活動はほんのちょっとの足しにしかならなかったのかもしれないけれど……
 ただ、司くん推しを知っている同僚や友人知人たちは、ドラマ放送開始後こぞって「見たよ!面白かった!司くんすっごく良いね!!」と伝えてくれて、私は鼻高々だった!!

 よし!さあ再生するぞ!本編はもう完璧に覚えているから、ずっと楽しみにしていた初回限定版ボックス特典の撮影裏だ!
 詳しい方々曰く、もう一人の主演の方は、あまり撮影裏を撮らせないらしいから、司くん密着がメインじゃないのかってことだった。
 アイドルの司くんオタが高価な限定ボックスの購買ターゲットだろうと。
 その通りだ。司オタはみんな買ってしまっている。


 話はそれたけど……よし!再生開始!!ぽちっとな!


 映像は、顔合わせからはじまっていた。広々としたスタジオにロの字に長テーブルが並べられ、席に着く人の前には紙で役名と役者名が印字されている。

 「では、キャストのみなさんに挨拶していただきましょう。」
 穏やかそうな監督の言葉に、まず中央にいた黒づくめの一人が立ち上がる。

 「……夜鷹純です」

 ピリリッと緊張感が、画面越しに伝わってくる。
 うわぁ、こわっ、まじこわっ!!オーラすごっ!私服も真っ黒って……暗殺者みたいだ。
 滅茶苦茶怖いけど、恐ろしいほど美形だ……。人気も実力も桁違いで、最近はほぼ海外で映画撮影しているあの【夜鷹純】
 数カ月前もハリウッドの有名作に出演していたけど、本当によく日本の連ドラでる気になったよね。世界のジュンヨダカだもん。
 ドラマ主演の一報が出た時、すべての報道の1面。ネットでもTVでもトップニュースになってたもん。そのおかげで、W主演のもう一人【明浦路司】って誰?ってSNSでも超話題になった。

 あっ!次は、司くんの番だ。って司くん大丈夫?めっちゃ顔青白いよ!緊張で死にそうな顔してる。

 「あ、あ、あ、あけうら、じ、……ちゅ、ちゅかさです!!!よろしくおねがいします!!!……っ!いでっ!」

 あー噛んじゃった。って思った瞬間、頭を下げた勢いで、司くんは、机におでこをゴッチンしちゃった。
 一瞬静寂となり、先ほどのピリッとした雰囲気はどこへやら、スタジオ内は爆笑の嵐だ。
 「ちゅかさくーんよろしくなぁ」
 司くんと共演歴もある大物ベテラン俳優さんが茶化してくれて、司くんは大きな体を縮こませながら、赤くなった額を隠しながら、赤面してペコペコとお辞儀していた。

 そうだよなぁ、この世界に入るきっかけになる大ファンの【夜鷹純】と、まさかの刑事ものでバディ組むんだもんなぁ。そりゃあ、緊張するよね。だけど、司くんのおかげか、それ以降のキャスト挨拶は和やかに行っているように見えた。


 そして、場面は切り替わり撮影1日目と出た。

 「あっ、おはようございます!」
 うわっ、可愛い!メイク中の司くんだ!!
 「へぇ、舞台裏撮影用のカメラなんですね!!」
 ニコニコとこっちに向けて手を振ってくれる。私も、意味がないのに手を振り返しちゃう!!きゃーかわいい!!
 前髪をダッカールで留められ、ポンポンとメイクさんにファンデーションをスポンジをはたかれながらも、司くんは、こちらと鏡越しに会話してくれる。
 「え?……すっごい緊張しましたよ!俺、夜鷹純さんの大ファンなんで!!!」
 司くんは、うううっと手に持っていた付箋だらけの台本を握り締めながらも「頑張ります!」と決意の目を見せてくれた。背後にメラメラと特攻が見えるよ司くん。頑張れ!


 カメラはメイクルームを出て薄暗い廊下に焦点を当てた。

 あっ!廊下に設置しているテーブルに山盛りの見慣れたプロテインバーがある!
 【明浦路司さんCM出演中の〇〇食品様からの差し入れです!】
 これこれ、めっちゃ食べたし、同僚にも配りまくった。
 司くん単独出演のCMのものだ。オタが盛り上げなくて誰が盛り上げるとばかりに買い込んだぞ!!ムキムキ!


 「夜鷹純さん、明浦路司さん、入りまーす!」

 ADの人の言葉に、スタジオに2人が入ってきた。
 夜鷹純は刑事ものなのに、真っ黒のスーツに黒いYシャツ。物語の導入部の司くんは、警察官の制服姿だ。初々しくて可愛い。

 このドラマのあらすじはこうだ。上司を殴ってしまい(勿論被害者の為だ)左遷覚悟の刑事の司くんの次の配属は、聞いたこともない部署。
 本庁内の地下にあるその薄暗い場所には、訳ありすぎるエリート刑事がいた。2人だけの部署でバディを組んで、彼は難事件に挑んでいく。……といういかにもよくある設定の刑事ものなのだが、実はこれはアクションがメインなのだ。
 犯人たちとの大立ち回りや、被害者を救出するために街中や建物を走りまくる飛びまくる。
 なぜ司くんが……と最初は驚いたが、納得する。これ、普通の俳優さんじゃ無理だよ。スタントマンを遣うって手もあるけど、やっぱり顔が見えた方が臨場感がすごい。
 夜鷹純はアクションシーンも万能なので、それに見劣りしないようにとキャスティングしたと監督もインタビューで言っていた。

 「はーいカット!次はシーン52」

 慌ただしくスタッフが動いている。司くんも夜鷹純もメイクを直されながら、監督と打ち合わせをしている。真剣な司くん顔超好き!!

 そこからは、他の出演者のシーンが続いていく、この部署の設立に携わった夜鷹純の友人で、同じくキャリア組の同僚を演じる鴗鳥慎一郎。
 彼は手に負えない難事件を夜鷹純と司くんの元へと持ち込んでくる役割だ。
 毎度、お騒がせの2人の後始末で胃が痛いと、困ったような顔をしているのが、お茶の間のおねぇ様たちを虜にしていた。


 どうやら、司くんの今日のシーンは終わりのようだ。密着カメラが彼に近づいていく。
 「あ!お疲れ様です。……NG出さなくてよかったです。……俺?今日は今からICEの打ち合わせがあるので事務所に行きます。あぁ、ありがとうございます!また明日!」

 送迎車のドアを開けながら司くんが手を振ってくれる。お疲れ様司くん!!!ICEのお仕事も頑張って!!


 あっ、なんか可愛いのが映っている。

 ちっさい女の子と、あの後ろ姿は司くんだ!カメラが撮影チャンスとばかりに走って近づいてくれる。
 あ、あ、あれは!!!
 「ムキムキぃ!!」
 ムキムキ体操だ!!
 司くんがプロテインバーのCMで踊ってたやつ!!
 お隣の女の子は!1話のゲストの、いのりちゃん!!強盗犯を見たけれど、ショックで声が出なくなっちゃった女の子だ。刑事役の司くんが色々と献身して、最後はやっと犯人の写真を教えてくれるのだ。
 その子が、司くんと一緒にムキムキ体操を踊ってくれている!
 CMでも子供たちと一緒に踊ってたけど、すっごく可愛い。司くん&いのりちゃんのムキムキ体操。
 いのりちゃん笑顔!かわいい!ドラマではおどおどしてたり泣いてたりとしていたから、こんな屈託ない笑顔見せられると、涙腺が緩んじゃうよ。
 「学校で流行ってるんです!」
 いのりちゃんは言葉と一緒に「小ムキムキ!」と言いながらポーズをとってくれる。
 あぁ可愛い。司くんも「可愛い」って昇天顔してる。だよねぇドラマではあんなに泣いたり、パニックで叫んでいた子が……ほんっと、演技派子役。


 おっと、次は若手人気俳優の蛇崩遊大さんだ。
 鑑識の役で、いつも夜鷹純&司のお騒がせペアにめっちゃコキ使われている関西弁のお兄さん。前にバラエティで共演したことがあるおかげか、司くんと楽しそうに雑談している。
 こういう交友関係が見れるのもいいよね……って、何故かそこからカメラはズームアウトして、スタジオ端から彼らをじっと眺めている夜鷹純を映す。
 なんだこの構図?


 場面は切り替わって ─ アクション練習日
 動きやすそうなトレーニングウェアを着た司くんが、アクション監督から指示をされて、犯人とのシーン動きを確認している。ジャージ姿も可愛いねぇ!
 スタッフの指示で、一回本番同様に通してみることに……。

 あれ?うん?こんなシーンあった?
 思わず私は首を傾げた。
 ボツシーンかなぁなんて思っていると、そこに同じくトレーニングウェアを着た夜鷹純が現れ、監督を呼びつけていた。
 監督とアクション監督、プロデューサー、お偉方さんたちが夜鷹純の元に集まり、あーだこーだ話し合い始めた。
 それを見ている司くんは状況が掴めず、困惑顔だ。叱られた子犬みたいな顔している。

 「司くん、ちょっといいかな。」
 
 困った顔をした監督に呼ばれて、司くんはダッシュで彼らに近づいていく。ふんふんと首を振りながら彼らの説明を聞くと

「え!いいんスか!!やります!やりたいです!!!え!事務所!マネージャーにすぐ確認とって……俺が社長に電話してきます!!!」
 
 司くんは部屋から慌てて飛び出していき、カメラは監督へと近づいていく。

「あー……夜鷹さんがね、司くんはもっとアクションできそうだから、このシーンは2人組んでもっと高度なアクションシーンをやろうって提案してきてね。ほら、ケガの問題もあるし、アイドルの司くんの方はあんまり乱闘シーン入れてなかったんだよ」

 夜鷹純はアクション監督と2人で指で指示しながら話し合っている。
 
も、もしかして、1話で話題沸騰だった。2人の共闘シーンの滅茶苦茶かっこいいアクションってこの夜鷹純の提案がなかったら見れなかったの?

 うそぉ、夜鷹純様、ありがとうございます。ありがとうございます。司くんにスーツで飛び蹴りされるのを被害者目線で見られるなんて、すごく美味しかったです。
 足5ⅿあったよ。本当だよ!!
 戻ってきた司くんは「社長からOK貰えました!!」とフリスビーをキャッチして戻ってきた大型犬みたいにワクワク顔でやってきた。

 ふぁぁ、何度見てもアクションシーンかっこよ。2人ともトレーニングウェア着てるし、ところどころにマットレス敷いてるけど、息もあってるし、スピード凄い。
 背中合わせで相手に対峙するシーン。
 夜鷹純が背後の司くんに声をかける。
 「もう一歩寄れる?」
 「行けます!」
 「背中、当たってもいいから」
 「はい!」
 あの、シーンはこうやってできていたのかぁ、あぁ、特典買って本当に良かったよ。


 そこから、何だか司くんと夜鷹純の距離が縮まっているように見えた。
 休憩中でも大抵2人で何かお話してない?
 ロケのジャンバー羽織った2人がくっついて喋っている。
 よかったね司くん。大ファンの夜鷹純とお近づきになれて、つい母親の気分で内心ほろりと泣いてしまう。


 「……え……」
 
 衝撃映像に、思わず一時停止ボタンを押してしまった。
 早朝からのロケの日、深夜まで及んだそれを見ていて、突然起こった。  
 出番待ちで、キャスト用のパイプ椅子に座っている夜鷹純と司くん。
 そこから、司くん頭がカックンカックンとしてきて……司くんの頭が夜鷹純の肩にもたれかかったのだ!
 夜鷹純はその重みに反応を示さず、ただ台本に目を通している。
 
 え?なに、司くん、君、いま、世界の夜鷹純の肩にもたれかかってるよ……

 カメラはそこで場面が変わった。
 ええ!司くんが起きたシーンまで映してよぉ!!!絶対慌てて赤面してるはずなのに!!!


 「って、えええええ!」


 次に現れたのは、煌びやかなステージ衣装のまま走ってきた司くんだ!!スパンコールがまぶしい。スタジオ内の少し薄暗い雰囲気とあまりのミスマッチぶりに、周りのスタッフも目を見開いている

 「すいません!!遅れてしまいました!すぐ着替えてきます!!」

 キャストたちの休憩室代わりの広い控室。そこに飛び込んできたアイドル仕様の司くん。めっちゃ浮いてる。あれは、この前のコンサートのステージ衣装のはずだ。キラッキラで、ロングコートもひらひらしていて、お気に入りの一枚だ。もしかしたら、コンサートのパンフレット撮影だったのかもしれない。

 共演者さんたちはあんぐりと驚いているし、あの夜鷹純も目を見開いて固まっていた。

 「こうしてみると、司くん。マジでアイドルやなぁ」
 鑑識服のままコーヒーを飲んでいた蛇崩さんは、隣に座っているスタッフに話しかけている。
 夜鷹純、まだ固まったままじゃない?

 キラッキラのアイドルモードから、いつもの大型ワンコ刑事の衣装にチェンジした司くんが、夜鷹純に「お待たせしてすいません」と謝りにいくと
 「……君、アイドルだったの?」
 え、そこから!!??夜鷹純、いままで司くんがアイドルって知らなかったの?っていうか、共演者に興味なさそうだもんな。この人。
 「は、はい!!【ICE】っていうグループで活動しています!!!」
 「純くん。明浦路くんは、とても人気のアイドルグループなんだよ。」
 夜鷹純の隣に座っていた鴗鳥慎一郎の言葉に、夜鷹純は何かぼそっと言っていた。

 そこから息があった撮影が続いていく。5話犯人役の梟木豊さんは超紳士で見ていた私もぽーっとしてしまった。
 私服も英国紳士みたいでかっこよかったです。
 
 時折、ICEの2人がゲスト出演するのも面白かった。ジュナが目撃者のホスト役とか、洸平くんが司くんの同期の刑事役で、司くんの過去の事件を語ってくれたりとか……

 「うちの明浦路がお世話になっています」と手土産をもってスタッフや共演者一人一人挨拶に行くのを見てると、ICEファンとして本当に誇らしかった。

 場面は変わり、司くんのドアップが映る。

 「えっと、今日は控室でラジオ撮らないといけなくて……密着?系列局だし良いのかなぁ」
 司くんは撮影合間に自分の控室でラジオを撮らないといけないことになったと話してくれた。そういえば、1回だけ今日はドラマの現場の控室から放送させてもらいます。雑音入っていたらごめんね。と謝ってくれた回があった。
 そして、司くんのカメラが【明浦路司 様】と書かれた控室に入ると……

 「え?なんで夜鷹純がいるの?」
 
 司くんの対面に夜鷹純が何故か座っている。マイクは司くんの方を向いたままなので、ゲスト出演という訳ではないようだ。周りのラジオスタッフがあからさまに怯えている。

 何か司くんと夜鷹純が話していたが、ここまでは音声が拾えてない。
 
 「と、とりあえず、収録始めます。」
 タジタジのままラジオの進行をはじめる司くん。

 ≪えっ~と、俺は今、ドラマの撮影の真っただ中で………放送は4話が終わったあたりかな?撮影自体は終盤です。≫

 司くんは、目の前に座る夜鷹純を意識しないように、必死で喋っているが、この時、司オタたちは、今日の司くんおかしくない?やっぱりいつもと違う場所だったからそわそわしちゃうのかな等と呑気に話していたが、まさか目の前に魔王のような夜鷹純がいるとは想像すらしていなかった。
 
 夜鷹純はファンからのお便りを読む司くんを眺めると、印刷されたお便りの紙束に目を通し、その一つを勝手に司くんに突き出した。

 ≪え!あ……はい、次のお便りは、愛知県アヒルさんから、司くんこんばんは。こんばんは!ドラマ楽しく家族で見ています。司くんにとって大ファンでこの世界に入るきっかけにもなった憧れの夜鷹純さんとの初共演なのですが、撮影裏はどうでしょうか?仲良くなれましたか?……≫

 あった、あったそんなお便り。大ファンだと公言してやまない夜鷹純との共演だ。テンション高く色々語ってくれると思っていたが、妙におとなしかったけど、目の前にいたのか、というか、夜鷹純本人がこの質問選んで、読ませたのか。

 ≪え、え……っと、その、良くしていただいて……ます。……この前は俺が好きっていったら、ドーナツをICEのコンサートの練習現場に大量に差し入れてくださって……おいしかったです≫

 夜鷹純、テレまくってる司くんをガン見じゃないか。いつの間に、こんなに仲良くなったのだろう。
 そういえば、ジュナのインスタに、コンサートのダンス練習中の3人がドーナツ食べている写真がのっていたな。司くんだけが赤面しながら食べていたから、不思議だねぇとオタ友とは話していたのだが、まさかの夜鷹純からの差し入れだったとは……ジュナもそう書いてくれてらよかったのに。
 おいおい夜鷹純……ラジオに飽きたからって、司君の衣装のモッズコートの紐イジイジしすぎじゃない?司君タジタジになってるじゃん!ああああっ蝶々結びしてる!司くんの眉が困ってへにょりんってなってるよぉ可哀そうだけど……可愛い!!!グッジョブ!夜鷹純!


 おっ、今度はまたロケだ。

 司くんと夜鷹純。最近はだいたいセットで映っているけど、あっ、カメラが寄っていく。2人で何してるんだろう……
 丁度近くにいた夜鷹純役の刑事の因縁の相手役、高峰匠さんがカメラに気づいてくれた。

 「あぁ、司のヤツにオイルライターの点け方教えてるんだってよ。俳優志望なら知っておいた方がいいってな」

 夜鷹純が愛煙家というのは周知の事実だ。手品のようにくるっと回して一発で火をつけたり、指先で蓋を外すと同時に着火させたり「やってみて」と言われ、彼の高級そうなライターを手渡され、司くんはおろおろしている。
 そして、司くんに火を点けさせ、自分はその火でタバコを吸っている。
 なんか、こう、グッとくる構図だな。
 まるで映画の1シーンみたい。
 「おいおい、そこでイチャつくな!!次の撮影始まるぞ!!!」
 高峰さんは呆れた様子でその場から去っていく。
 
 司くん、めっちゃ顔赤いよ。夜鷹純の急な顔面アップに驚いちゃった?タバコ吸ってる姿もカッコいいって前に雑誌で言ってたもんね


 そして、とうとう最終回の撮影がはじまる。

 廊下には【過去最高視聴率〇〇%】【前回超え〇〇%】【局内歴代トップ!〇〇%】【瞬間最高〇〇%】などと視聴率がたくさん張り出されている。
 これも舞台裏撮影中よく見た張り紙だ。毎回放送日の度に更新されていく視聴率に、司ファンも鼻高々だった。
 今日の差し入れは【夜鷹純さん&明浦路司さんからの差し入れです。叙〇苑 焼肉弁当】ドラマ終盤恒例の主演からの高級弁当差し入れだ。司くんも食べている姿が超かわいいね。
 カメラに向かってお肉あーんしてくれる!キュートキュートキュート100点満点だよ司くん!!


 そして、ロケの日、2人めっちゃボロボロになってる。最終回は大きな爆発シーンあったもんね……煤っぽいって、司くんも咳き込んでいた。大変だな。

 ドラマの現場は、役者さん個人のクランクアップの時、監督や共演者から花束を渡される。
 今日はクランクアップの方が多いのだろう。
 監督がどんどん花束を渡していった。
 他の日の時は、よく司くんが渡しに行ってる。蛇崩さんの時も花束渡して、2人でスマホで2ショット撮っていたの覚えている。蛇崩さんのインスタでチェックしたしね。

 そして、司くんの最終カット。
 一人で、誰もいない、空になった自分たちの部屋を見て、静かに涙を流すシーンだ。

 「はーいカット!!!おっけーです!!!」

 「っう、……っ、長い間、ありがとうございました!!!」

 司くんが頭を下げていると……彼の前に赤い薔薇の花束を持った夜鷹純が現れた

 「お疲れ様」
 「あ、……」

 そのまま、あの夜鷹純が自然に司くんをハグする。

 「っう゛、う゛、あ、あり、が、と、ご、ざ、い゛、ま、す……っう゛」

 うわぁっぁぁと夜鷹純にぎゅうぅ抱き着き、泣き出しだ司くんと、それに応えるように抱きしめ返す夜鷹純。


 うわぁ泣いちゃった。

 そうだよね。見る方は楽しいけど、連ドラだけでも超過酷なのに、アイドル業もあって大変だったよね。
 洸平くんのインスタにも台本を抱えたまま眠っている司くんのシーンが何度もあったもんね。
 結構、腕とか足に擦り傷や、ファンデーションで隠された打撲痕があると、司オタの間では有名だった。


 良いもの見れたなと、おなか一杯の気分で、終わった画面を閉じる。
 あれ、そういえば、夜鷹純のクランクアップ映ってなかったな。
 NG出ちゃったのかな。仕方ないなぁと思いながら、数時間ぶりにスマホをつけると、ドラマの公式インスタとXからの通知が来ている。

 「え、え、え、え、え!!!!」

 ≪夜鷹純さんクランクアップ。この日はすでにクランクアップを終えた相棒の明浦路司さんがわざわざ現場までやって来てくださいました!!≫ 

 内緒なのだろうか、ふわふわニットを着たツヤツヤきゅるんアイドル顔の司くんは、監督が渡した花束をもって、そわそわセット裏に隠れている。
 カットの声と同時に、飛び出すように行って、夜鷹純へと花束を渡した。

 「……きてたんだ」
 「勿論じゃないですか!」

 ぎゅっとハグする姿で、映像は止まる。


 そしてソファに寄り添うようにして、花束を抱えたままキメ顔で座る2人。これはこのドラマの番宣ポスターと同じ構図だった。

 ≪本日DVD・Blu-rayボックス発売日!初回限定盤には舞台裏たっぷり入れてます!≫


 それから数分後、司くんのインスタの更新通知がやってきた。


 ≪この前のコンサート夜鷹純さんが来てくれました!ドラマのDVD・Blu-rayボックスも本日発売です!≫

 アンコールを終えて帰ってきた、汗さえも煌めくTシャツ姿の司くんの横に、全身黒づくめの夜鷹純がいる。

 「え、そんなに仲良くなってたの。というか、アイドルのコンサートに夜鷹純って……」


 ん?……なんか、司くんのオタアカの通知が煩いぞ……

 ≪司くんと、夜鷹純のしてるブレス、お揃いじゃね?≫

 そこには先ほどの写真、コンサート中にも必ずつけていたシンプルな細身のシルバーのブレスレット。司くんはよくアクセサリーを衣装さんから付けられている。その中で気に入ったものを買取したのかと思っていたが……
 先ほどの夜鷹純の袖口に似たようなものがある。チラっとしか見えないし、画像も鮮明でないが……

 まさかね……

 夜鷹純からのプレゼントとか……


 まさかだよね。俺たちの司が……かっさらわれるなんて……嘘だよね……


 数か月後、夜鷹純が表紙の海外の有名ファッション雑誌でそのブレスが写り込んでいた。

 司くんが持っていたものと、同じ型のものが……
 特定班によると、超高級ジュエリーのオーダーじゃないかということ……

 うそだよね。ただ共演記念のプレゼントだよね。

 司くんだったら、きっと≪共演の記念でいただきました!≫とか報告があるはずなのに、何もないのが、すごく気になるし、いまだにプラべ写真の時は必ずそのブレスを着けていることは特定班が確定している。


 ≪夜鷹純と付き合ってるんじゃね?≫


 司オタの間では、水面下にその可能性が広がっていた。


 嘘だよね!私たちの司くんが!!!!!



END


 ちなみに、付き合ってません。このまま謎のブレス疑惑で、ファンから、関係者から、そして業界では≪夜鷹純と明浦路司は付き合っている≫と水面下で情報が共有されファンからは「夜鷹さんとお幸せに涙」とか周りのスタッフから気を遣われたりして司くんは「?」状態。
 「あれ?俺、夜鷹さんと付き合ってる……のか?」と疑問に思っているうちに外堀を埋められ……あれ?と思っているうちに喰われちゃってます。


以下おまけ


◇番外1 舞台裏特典DVD編集スタッフの話

 未公開で面白いもの?あぁ、≪鹿本すずちゃんon Stage≫ですね!
 主演の2人の刑事を引っ張りまわして、脅迫状が来ているのに、遊園地に連れて行かせる資産家の娘役。それがアイドルの鹿本すずちゃん。
 僕大ファンなんですよ!赤ちゃんの頃からCMとかいっぱい出ているし、あの「可愛い」を追求する姿勢はすごいですよねぇ。
 僕ら下っ端スタッフにも『かわいい』をいつも提供してくれるし、裏方でも彼女のファン多いですよ。
 彼女、司くんと同じ事務所なんです。
 で、司くん。芸歴的にはすずちゃんの後輩にあたるそうなのですよ
 「あ、すず先輩!おはようございます。」って司くんが声をかけたときはちょっとびっくりしました。
 話を聞いてみたんですけど、ICEになりたての時の司くん、全然アイドルっぽくなくて、笑えなかったらしいです。
 いっつも緊張ガチガチで、ちょっと根暗っぽかったらしくて……どうやら、劇団時代に認められなさ過ぎてだいぶん自虐的になってたみたいですね。
 あそこ、給料がほぼ出ないのに、チケットを売るのに手出ししないといけないとか、小さな劇団はかなり経営が厳しいって聞きますしね。

 で、そこで事務所の社長から依頼を受けた同事務所の先輩齢11歳の≪アイドル鹿本すず≫が、司くんに≪かわいい≫を提供する授業をしていたらしいです。
 貪欲に≪かわいい≫を求めろ!ってあの時期、ずっと司くんの顔が≪鹿本すずフェイス≫になっていたと噂で聞いたことあります。
 それで、司くんのアイドル的可愛さが磨かれたというか……それで尊敬を込めて『すず先輩』呼びらしいです。

 ロケで遊園地貸し切りの日、ちょうどすずちゃんと仲良しって言われてる鑑識役の蛇崩遊大さんも出演していた時なんですが、機材トラブルで2時間ほど待機になっちゃって……。
 当時、遊園地のお客さん役で一般人のボランティアエキストラの方が百名以上いたので、彼らには屋外ステージの観客席の所で座って待ってもらっていたんですよ。
 ただ、外もすごく寒かったし、ちょっと現場の雰囲気も悪くなっていって……

 そうしたら、すずちゃんが……
 「ここは、ウチの≪可愛い≫の出番や!」って言って、たまたま暇そうにしていた裏方スタッフと打ち合わせして、遊大さんと司くん引っ張って屋外ステージにのぼっちゃったんですよ。


 「みんなぁ、今日は可愛いウチの為に、集まってもろて、ほんまおおきにぃ♡」
 「いや、ドラマ撮影やて……」
 「ちょっと、時間がかかるみたいやさかい、せっかくやし、鹿本すずonStage見てってなぁ♡」
 「え、ちょ、すず先輩?」
 「ジャッキーせんせも、司くんも、うちの持ち歌は当然踊れるわなぁ?」
 「まぁ、なんべんか付き合うたしな……」
 「まぁ俺も……すず先輩のレッスンで何度も踊りましたし……」
 「うち、いつでもこないなことがあってええように、CDも持参しとるんや!はい、ジャッキー先生あっち、司くんこっち!じゃあ、いくでぇ!スタッフさんよろしゅう!!」

 屋外のスピーカーから鹿本すずちゃんのデビュー曲が流れて、そこからは熱狂の嵐でした。
 エキストラさんたちも、最初は何があったら分からずにポカンとしていたんですけど、昔からのお馴染み美少女アイドル≪鹿本すず≫に、ガチ恋だらけの初恋泥棒の異名を持つ俳優≪蛇崩遊大≫、そこに人気アイドル≪ICEの明浦路司≫。
 彼らが大ヒットした鹿本すずちゃんのデビュー曲を全力で踊ってくれるんですから。
 気づいたらスタッフの俺たちも
「SUZU!SUZU!か・わ・い・い・SUZU!」ってオタ芸の合いの手でコブシ突き出して叫んでました。

 遊大さんも『遊くーん!!』って叫ぶファンにウインク飛ばしながらバキュン!って撃つポーズしたり、司さんも「司くーん!!」って叫ばれてニコッと笑顔返して振り向きざまにウインクしたりして……すごかった。

 「みんな、おおきにぃ♡応援ばっちり、可愛いらしいウチの元の届いとったでぇ♡」

 キラキラ笑顔を振りまきながら、すずちゃんは、蛇崩さんと司くんに捕獲された宇宙人状態でステージ裏に連れていかれ、怒り心頭のマネージャーの亀金谷さんに引き渡されてました。

 これも舞台裏に入れたかったんですけど、諸々の事情で、泣く泣くカットすることになりました。本当に残念。まぁ僕のカメラもブレッブレでしたし……

 後日談なのですが、あの時、トラブルがあったスタッフ側に行っていた夜鷹さんとか、監督とかはステージを見れなかったそうなんです。
 カメラもほとんど機能してなかったですしね。だから、鹿本すずちゃんのクランクアップ前に……ってことで、監督の計らいで、ドラマのセット使って、3人にまた踊ってもらってもらいました。

 最前列は、パイプ椅子に座った夜鷹さんと監督と統括プロデューサー、ベテラン大物俳優2人。あとはみんな立ち見でした。

 ふりっふりのお嬢様衣装の鹿本すずちゃんに、鑑識服の蛇崩遊大さん、そしてちょっと寄れたスーツにジャンパー姿の刑事役の司君。
 このちぐはぐトリオで全力で踊っていただきました。
 みなさん、結構な割合で、スマホを横にして3人を撮っていたんですけど、そういえば、夜鷹さん。あの人、スマホ縦撮影で、司くんだけ映してなかったか?
 確か……あの人、スマホの画面見てなくて、踊る司くんガチ見だったので……まぁ貴重な体験でしたね。




◇番外2 ※すでに付き合ってる2人


2 /22ねこの日小話
俳優 夜鷹純×アイドル司(ICE所属)

 「ファンの皆さん、こんにちは!本日は2月22日ニャンニャンニャン猫の日ということで我がICEもファンクラブ限定動画をお贈りすることになりました。」
 洸平の言葉に、真ん中に座っているジュナは腕組みをしながら「うんうん」と頷き、左に座っている司は小さくカメラに向かって手を振った。
 「ということで、はい、スタッフ!」
横からやってきたスタッフは彼らに猫耳カチューシャを渡していく。
 「洸平くん、こういうのって、成人男性がやってもいいの?」
 司は渡された茶虎の猫耳を眺めながら、ノリノリで白猫耳カチューシャを嵌めているジュナに少し引いた顔をする。そういえば、ジュナはこういう遊びが大好きだった。
 「何言ってるんだツーくん!アイドルというもの、どんな衣装も被り物も完璧に着こなすべきだよ!」
 「……え゛ぇ゛」嫌そうな司の声に、洸平は苦笑いを浮かべながらも、自身の黒猫耳を身に着けた。
 「まぁまぁ司くん。お遊びだよ。……えっと、さぁ今からゲームを始めます!ゲーム中は語尾は【にゃん】ゲームの敗者と【にゃん】付け忘れ10回以上は、罰ゲームがあります!では、ゲームスタート!!」
 カンペを読み終えた黒猫カチューシャの洸平の言葉に、スタッフがドンドン!パフパフ!鳴り物音をならしていく
 「え、まってよ!」
 「はい、司くんニャン忘れひとつだ……にゃん」
 「ツーくんだっさぁ」
 「珠那も1つにゃん」
 「えぇぇぇ、コウそれ、ひどっ……にゃん」
 司は諦めたように茶虎の猫耳をつけ、スタッフに渡された、黒ひげ危機一髪の玩具を机にセッティングした。
 「えっと、ナイフを順番に刺して、人形を飛ばした人が負け……だにゃん」
 「そうそう、司くんその調子にゃん」
 「洸平くん、自然過ぎない?……にゃん」
 「は、ツーくん、コウを甘く見てはいけないニャン!バラエティで培われた適応能力!これこそがコウの強み!!」
 「はい、珠那、にゃん付け忘れ2つ目だにゃん」
 「!!コウを褒めたのに!!にゃん!!」
 「これって、あんまり喋らない方が有利なんじゃ……にゃん」
 「はい、司くん、アイドルあるまじき発言はしないことにゃん。お遊びなんだからにゃん。」
 そこから3人は黒ひげ危機一髪のゲームをはじめた。結果は3週目で司が人形をふっ飛ばして、ジュナの大爆笑の元、敗者となった。
 「はい、結果発表!ゲーム敗者は司くん。にゃん付け忘れペナルティは、俺が3回、珠那が12回、司くんが6回……罰ゲームは司くんと珠那で決定」
 「……罰ゲームは?」
 「なになに、猫耳をつけたまま、カメラの前で猫の真似……よし、司くんから行こう!」
 「え、なんで、洸平くん!」
 「司くん、オチは珠那のヤツに任せておいた方がいいよ」
 「……そうだね。そういうのはジュナくんが最適だね」
 「ツーくん!!!」
 司はとぼとぼとカメラの前へ行き、顔を赤くさせながら、両手で猫の手を真似て
 「……負けたニャン…あっ、違う、猫の真似だから……にゃー?」ドンドン!パフパフパフ!!
 「はい、かわいいかわいい。次、珠那!」
 ジュナは、顔を顰め、顎をしゃくれさせ、爪丸出しな猫の手をすると
 「ぎに゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
 「珠那…なにそのブスネコ声?」
 「昔近所に住んでたボス猫の真似だ!」
 「……さすがジュナくん」
 「司くん……君は、そんなにバラエティ慣れしなくても良いからね。司くんは初々しいのが売りなんだから」
 「コウ、何言ってるんだ。ツーくんだってもっとバラエティに!」
 「司くんは、俳優をメインにして……」
 「ちょ、ちょっと2人とも揉めないでよ!これ、ファンクラブ動画なんだよ!」
 「「う、そ、そうだった……」」

 「よし、気を取り直して!皆さんはご存じでしょうが俺たちICEの全国ツアーが決定しました!」洸平の言葉に、2人がうんうんと頷く。
 「全国13カ所、29公演、ICE初のドーム公演も含まれているので、是非遊びに来てください!では、ファンの皆さんに一言、珠那!」
 「皆さんを、アッと驚かせる仕掛けも用意してるので、是非、僕に会いに来てくれ!!!」
 「……はい、司くん」
 「えっと、実は初めて訪れる県も多いので、楽しみにしています。激しい曲も多いので、みなさんと盛り上がれたら嬉しいです。ぜひ遊びに来てください。」
 「はい、ということで、チケットのファンクラブ先行抽選が来週からはじまります!詳細は、ファンクラブホームページからお願いします!」
 「では最後に、猫の日記念ということで、お別れの挨拶はにゃんで閉めさせてもらいます。せーの!」
 「「「にゃんにゃんにゃーん!!」」」
 ばいばーいと3人が手を振りながら映像はプツッと暗転した


ガチャ……

 「あっ、純さんの方が早かったんだ!」
 司は1人暮らしのはずの自室の室内の明かりがついていたことに驚きつつも、恋人から海外からの一時帰国の連絡を受けていたので、ウキウキと靴を脱いでリビングへと声をかけた。
 「おかえりなさい、純さん!時差ぼけ大丈夫ですか?」
 「…………ねぇ、猫耳ってどこに売ってるの?」
 帰宅直後の司に、ソファに気だるげに座っている顔面国宝と評される麗しい男は、無表情に予想外の言葉を発してきた。
 「猫耳?ドンキとかじゃないですか?」
 「どんき?」
 「ドンキホーテですよ。安売り店の」
 「Don Quixote?」
 「小説じゃなくて、お店の略称です!まぁそんなことはいいんですけど……猫耳って急にどうしたんですか?」
 「これ……」
 司は夜鷹から渡されえたスマホの画面を見た……
 「……え、なんで、純さん、ファンクラブの動画見てるんです……」
 「……君のところの社長が過去のも見れるからって、スタッフIDくれたよ」
 「……えぇ……」
 「それより、その店って、今から行けるの?」
 「ドンキですか?まぁ深夜営業してるし行こうと思えば行けますけど……純さん行ったら大騒ぎになりますよ」
 「…………わかった」
 司は夜鷹がどうにか納得してくれたのに安心して「俺風呂入ってきますね」とリビングに夜鷹を残してバスルームへと足を延ばした。
 
 「えっと、純さん、今なんて言いました」
 夜鷹の方が先に寝室に入っていたのでてっきり就寝していると思って、警戒心ゼロでベッドに潜り込んだ司は、現在その夜鷹の伸し掛かられている。
 「……猫耳は諦めた。だから語尾は【にゃん】にしなよ」
 「……え?」
 「にゃん、だよ。司」
 「にゃ……ん?」
 「忘れたら酷くするから」
 「……う、うそですよね……にゃん」
 「……」
 「お、お手柔らかにしてほしい…にゃん」
 「……いい子だったらね」
 「……が、がんばる……にゃん」


 その日、夜鷹の希望のニャンニャンプレイで精神的に疲弊しきった司は(途中から、にゃんにゃん鳴きまくってノリノリだったことは自覚している)、翌日、げっそりとしたアイドルらしからぬ顔で事務所に顔を出した。
 その後、偶然出会った鹿本すずに「司くん、どうしたん、そんなジュワっとした顔して?可愛いを提供するアイドルの顔やないで?」と特別に鹿本すずフェイスマッサージを受け、どうにかアイドルフェイスを保つことができた

「司くん、またすずちゃんフェイスになってる…」
「気にしないでにゃん……」
「ツーくん、本当に大丈夫?」

ジュナにまで本気で心配される司であった。



◇番外3 ※途中まで

 とあるドラマ監督のお話

 えっ、ドラマ撮影のここだけの話を教えてほしい?あくまでオフレコですよ?
 夜鷹くんをどうやってキャスティングできたかっていうのは、本当に偶然がうまく重なったんです。
 局からお話をいただいた時、ダメ元でオファーを出したんです。
 誰も期待はしてなかったんですよ。だけど、結果的にOKが出た。
 理由は、僕の監督した作品を見たことがあって、興味があるからということでした。売れないB級映画だったんですがねぇ。まさかあの夜鷹純が観てくださっていたとは、本当に偶然って凄いですよ。

 そして、W主演の相手役にアイドルを起用した訳は……これも偶然なのですが、僕、明浦路くんがまだICEに入っていない劇団時代に、彼の演技を見て惹かれていたからなんです。
 その頃は、僕も駆け出しの助監督でしたし、ただ、いつか彼みたいな人を撮ってみたいと強く思っていたんです。
 その後、彼はアイドルとしてデビューしたと聞いて驚きましたが、安心もしました。
 まだ芸能界にいてくれてるってね。
 この世界、どんなに才能があっても、すべては運やタイミングで左右されますしね……。

 まぁここまでは、色んな取材でお伝えして、知っている方も多いですが……ここだけの話ですね。

 あぁこれも面白かったな。
 明浦路くんが前の仕事が押して、アイドル衣装で現場へやってきた時、夜鷹くんが驚いていたでしょ?
 後で聞いた話だと、夜鷹くんは彼が俳優だと思って、映画で出演作を調べていたみたいなんですよ。
 最初から検索サイトで名前を調べれば一発で出てくるのに、わざわざ映画出演者検索って……よほど彼の演技が気に入っていたんでしょうね。
 スタントマン上がりと思っていたらしいです。
 夜鷹くんの生きてきた世界は映画ばかりですしね。アイドルからとは思いもよらなかったらしいです。

 そのおかげで、夜鷹くんもアイドル文化にハマったらしいですね。
 次の日には、明浦路くんが楽屋で、マネージャーに急かされながら、過去のコンサートのDVDやMV集すべてのパッケージに≪夜鷹純 様へ ICE TSUKASA.A≫ってサインを書いていましたね。
 「俺のサインなんか必要なんですか!?」て半泣きになってましたけど……マネージャーさんに「何が目に留まるか分からないでしょ!!」と怒られながら、一緒に持ってこられていたグッズや写真集にも、サインを一生懸命書いてらっしゃいました。
 タオルの小さいタグにも『司』って書いているのは、笑いましたけど……。
 僕もマネージャーさんに余分に持ってきたものを少しいただいたのですが、彼、大型犬みたいで可愛いですねぇ。
 ICEの皆さんもコンサート中楽しそうにキラキラしていて、後日事務所の方からチケットいただいて、ドラマスタッフ班で観に行かせていただきました。すごく楽しかったですよ。

 え?夜鷹くんがアイドルにハマったってどういうことかって?
 あぁ、共演者大爆笑を誘ったのは、夜鷹くんが明浦路くんのコンサートグッズのタオル持参して使っていた時ですね。

 ほら、ロケって待ち時間長いでしょ?キャストの方々、結構ロケバスで仮眠撮る方も多くて……その時、夜鷹くんもリクライニングを少し倒して座ったまま眠っていたのですが、彼、顔に司くんのコンサートグッズのタオルをかけて寝ていたんですよ。≪ICE TSUTAYA≫って大きく書かれて、デフォルメされた小さな犬のキャラクターがたくさんプリントされているもの。
 気づいた共演者たちは、死ぬほど笑ってましたね。いつも黒づくめの夜鷹さんが、キャラものタオル使ってらっしゃったから。
 勿論気づかれないようにバスの外でですが……。
 気づいて、真っ赤になった司くんが「解釈違いです!!」って大声出してタオル回収していきました(ちゃんと司くんの私物タオルを起こさないように寝顔にかけ直してましたが)

 あぁ、あと、夜鷹さんは司君に貰ったコンサートDVDや写真集もすべて目を通したみたいで撮影の合間にそのことについて結構話していましたよ。

 この衣装のモチーフは〇〇という映画なのか……コンセプトは〇〇という小説なのか……とか、音響連動型のペンライトのこととか、司くんも夜鷹さんに慣れたのか、彼の映画の仕事についても色々聞いてましたね。視覚効果とアクションの上手い融合方法とか……グリーンバックでの演技の没入のしかたとか。話が進み過ぎて、僕らも声をかけにくいことも多々ありました。



途中までで申し訳ない。


シリーズ設定をし、続き?追加小話を新規投稿しました。

コメント

  • 空木

    クランクアップの時に夜鷹純が渡した赤い薔薇の本数が気になります(本数によって愛の言葉が変わる花!)

    2025年4月10日
  • ぺりこ
    2025年4月9日
  • mamimami1012
    2025年4月5日
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