掃除する暮らし方を身に付けるには 掃除セットで「その都度方式」

中島美鈴
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 部屋が汚くなって悩まないために、掃除する習慣を身につけるにはどうしたらよいでしょう。ふだんの生活の仕方や心構えを工夫することに乗り越えるヒントがあります。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

探すの避けたい「必要なモノ」

 突然ですが、みなさんはお掃除をマメになさいますか? 私はどうにかこうにか生きている人間で、「美しい部屋にしましょう」とか「蛇口がいつもピカッと光るように掃除しましょう」なんて口が割けてもいえません。

しかし、

 「印鑑やパスポートなど代替が効きにくい生活必需品がなくなると、さすがにやばい」

とか

 「いちいち書類や印鑑を探すところから始めないといけないから、先延ばし」

 なんていう状況は、ほんとに避けたいと思っていきています。

 なぜなら、大事な物が見つからないほど汚い部屋に暮らしていると、ただでさえやりたくない雑用のto doリストの最初の項目が「必要なものを探す」になってしまうからです。

 「必要なものを探す」がto doリストの最初にくると、どうまずいかといいますと、所要時間が見積もれないからです。「契約書に目を通す(5分)」「署名、押印をする(5分)」などとおよその所要時間がわかっていれば、その時間を空けることができますし、「そうか、合計10分間がんばれば終わるんだな」と、解放感に出会うまでの見通しをもつことができます。

 しかし、これが「必要なものを探す(1分から無制限)」となると、全く予定が立たないのです。そして、「ああ、下手すると何時間かかっても、それが出てこないかもしれない」と途方も無い気持ちになって、そのプロジェクト全体を先延ばしてしまいます。

 だからやっぱり、少なくとも、何がどこにあるか、だいたいのエリアでいいからわかっていて、ざっくりでいいからそこにあって、失くなっていないことは大事なんです。

清潔か、不潔かは主観的

 それで、お掃除の話に戻りますと、

 「私ってずぼらだから、すぐにお掃除をサボってしまう」

 と考えてしまいがちなんですが、私の出会う、いわゆるADHDの「片付けられない」人たちは、みなさん、どちらかといえば「すごい潔癖」「きれい好き」です。

矛盾しているように聞こえるかもしれませんね。

 清潔か、不潔かの区別は案外主観的です。

 私たちが物心つくかつかないかの時点で、養育者によって教えられたり、その後の人生経験で身につけたりします。健康を守るために、教わるので適応的な場合が多いのですが、中には、「自分の頭から生えている髪の毛は清潔だけど、ひとたび抜けて、床に落ちた時点から触れない」なんていう人もいます。

 でも、元々清潔・不潔の区別がざっくり緩めの人なら、素手でだいたいの掃除ができるので、手間がかからず、掃除が1ステップで終了します。

 これがキレイ好きすぎると、まずゴム手袋をして、掃除道具を取り出して、なんならそのあと念入りにシャワー浴びて……と非常に手間も時間もかかるわけです。その分掃除に対して、重い腰が上がりにくくなります。

乗り越える方法

 でも安心してください。いくつか乗り越える方法はあります。

 ①お掃除に必要なものをまとめて、むき出しにして取り出しやすくしておく作戦

 使い捨てのビニール手袋、割り箸、ゴミ袋など、必要な場所にその都度掃除セットを置いておきます。なるべく1回で全て捨てられるようなセットを作ってその都度処分します。これで随分ハードルが下がるでしょう。

 ②慣れを生じさせてしまう

 手荒な方法ですが、回数こなして、慣れていく方法もあります。

 主婦として台所に立つうんと前の小学生低学年の時、友だちの家に遊びに行ったときのことを今でも覚えています。その友達の家はとても古くて、台所の生ゴミコーナーがすごく臭っていたんです。小学生ながらに「ああ、こんなの絶対触れない」と思いました。どうして主婦などできるのかと思いました。

 でも、主婦となった今や、平気で掃除します。これは毎日何回も、何年間も台所に立ってきたからでしょう。慣れてしまえば楽なものです。「汚い」と思いすぎなくなれば、掃除の回数は増えます。

 でも、なかなか慣れが生じるまではやっぱりきついですね。

ついでにちょいちょい掃除

 ADHDの方におすすめしていることは①と合わせて、「その都度方式」です。

 やはり汚れもたまらないうちのほうが、清潔で、掃除のハードルも低いでしょう。それだけでなく、ADHDの方は、重い腰上げて活動に移るための「活性化エネルギー」が出にくいことがわかっていますから、汚れをそもそもため込まず、やる気を出さなくていい状態にもっていくのが正解なのです。

 トイレに入るたびに、顔を洗うたびに、お風呂に入るたびに、ついでにちょいちょい掃除する方式です。こう活字にしてしまうと、なんだかマメな人みたいですが、「大掃除をしなくてすむ!」「私はため込むとほんとに掃除しないから」「ついでだとまだ続く」と自分に言い聞かせてやっています。

 部屋が汚くて自分はだらしないと悩むなら、代わりに「キレイ好きすぎるんだ。だから怖いんだね」と変換してあげましょう。

 そうすると、改善策も見えてきます。

     ◇

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中島美鈴
中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。