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この作品「死に戻り太陽は夜明けの夢を見るか」は「メダリスト」「明浦路司」等のタグがつけられた作品です。
死に戻り太陽は夜明けの夢を見るか/SORAの小説

死に戻り太陽は夜明けの夢を見るか

19,629文字39分

司先生が死に戻り、何度も人生を繰り返し、夜明けを目指す話。問:ハッピーエンドでは無いけどここから入れる保険はありますか…?答え:世界が総出で司先生を氷の上に戻せばなんとかなるかもしれませんね。
※色んな死表現があります。苦手な方はご遠慮ください。自分で、というのはありません。
※キャラに対して厳しめ表現があります、主に光。昔風に言うとスレ司状態です。
※夜鷹純に激重感情がありますが、夜鷹はあまり出て来ません。そもそもあまり人と会話していません。
時系列はバラバラ、最新話未読のため家族捏造、年表間違ってたらすみません。スケートは超初心者。
編集しました!3,000字増えました。

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司は死んだ。交通事故だった。
仕事からの帰宅時、子供が轢かれそうになっているのが見えて、咄嗟に駆け出していた。腕を伸ばして思い切り引っ張って、自分が代わりに車道に倒れ込んでいた。
そしてその次に目を覚ました時、司は中学生になっていた。


死に戻り太陽は夜明けの夢を見るか

昔出て行ってから帰っていないはずの、自分と弟たちの子供部屋にいる。
成長するにしたがってどんどん体がデカくなったから、三人詰め込まれるとそこそこ狭くなった、そんな中学時代の子供部屋。見覚えのあるカバンや学生服もある、間違いなかった。
意味がわからない。混乱の中で出た声も少年のもので、手も腕も脚も、成人男性のものではなくて。なんで、と口を押さえる。
ーー自分は、いのりさんのコーチをしていて、彼女がオリンピックに行くのを目指していたはずだ。
そして事故にあった…それなのに目を開けたらスケートに出会ったばかりの子供になっているなんて、死ぬ前の走馬灯にしてもおかしいだろう。俺はなんて変な夢を見ているんだ?
「……夢、か」
夢なのかもしれない。夢だとしたら、俺は、
もし、もっと早く、スケートに出会えていたら。もしもっと早く、この年齢からスケートをしていたら、もし、
もしも、誰かに、正しく、教えてもらっていたら、
もしかして、俺は、シングルの選手になれるのではないか?
たられば、ただの幻想、幻覚、そんなことできるはずがない。でも、いのりさんに向けて俺は何度も強気な言葉をかけてきた。それをコーチである俺が否定するのか?
「……ただの、夢、なら、」

夢ならば好き勝手させてもらうと決めた俺は、今から最短でメダルを取りに行く。
スケートリンクにただ滑りに行くだけじゃダメだ、クラブに入らないと。入ってコーチについてもらう。
普通のスケート教室は論外。以前と変わらないだろうから門前払いになる。
一回、一滑りだけでもいい、俺の滑りを見てほしい。どんなにすごい子なんだと一目見て感じて信じてもらわなくてはいけない。
事前準備も必要だ。体力をつけて生前の持ちうる技術を陸で磨きつつ、俺は以前は特に親しくはなかったとあるコーチにコンタクトを取った。
嘘はったりそして真実。それを捩じ込んだ中学生らしからぬ文章の手紙はーー相手方の訝しむ気持ちが透けてみえるもののーー了承の返信が届いたのだ。

実績はない、だが滑れる。その一つの強みで司は無事クラブに入ることができた。コーチング料は出世払い、そしてスポンサー払い。それでも許可をしてくれたクラブには頭が上がらない。
本当に初心者か?と疑われるくらいのスピードでバッジを取得し、その勢いのままノービスに出場。知名度のないまま、司は金メダルを取得した。
夜鷹純のあとの男子シングルは潤っていたので女子シングルほどではないが出場者がいたのに、そこを差し置いて、だ。
見覚えのある若手コーチの幼い頃の姿もあったが、一切馴れ合わずに司は台に乗った。
男子が少ないから滑り込んだのだと言えないほどの上手さを見せつけての優勝。
司の初めての金メダルだ。


犠牲の話をしよう。
司はこの場に立つために、まず家族を捨てた。
以前は大人になるにつれて疎遠になったが結局捨ててはいなかった、和解も出来ずにしこりがあるまま微妙な距離だった存在。
スケートをやりたい。やるための土台は全て整ってからそう打ち明けた。
家計的にスケートなんて許可できない、今は辛抱しなくてはいけないバカなことを言うのをやめろ、と言った父。
兄弟が4人いるのよ、あの子達にも習い事をさせていないのに司にだけやらせることはできない、と言った母。
正論だ。意地悪でも虐待でも無い、正しいこと。……わかっている。以前の両親に言っても同じことを返されただろうと見当がつく。
そして勝手にスケートを始めて定職に就けず、まだそんなんをやっているのか、と言われるのだ。
だから、司は、今回家族の説得を諦めた。
まだ中学生だし普通の仲の良い、少し両親が忙しくて兄弟で過ごす時間が多いくらいの関係だった。今の司ならこのまま上手く立ち回って仲良い家族として生きられただろうに、その未来を捨てた。
わかった。俺は好きなことをします。あなたたちの援助は受けないしこちらも関わらないからそちらも関わらないで、俺のすることに口出ししないで。
それをやんわり伝え、激怒する父と泣く母を置いて家を出た。まだよく分かっていない幼い弟二人を置いて出てきた。
兄だけは同意も反対もしていなかった。怒ったような困ったような微妙な顔をしていたが、口を出さなかった。彼だけは、司が色々なものを我慢して飲み込んで生きていたのを少しだけ知っていたから。
だが司はスケートがしたいのだ。今回だけ、こんな我儘も狡いことをするのも今回だけだから。もうしないから。だから、司は。

結論を言うと、司はほぼトップに君臨する割と有名な男子シングル選手となった。
毎回メダルを取れるわけではないが、男子スケーターとして名前が上がることも多い知名度の、そこそこ上手いと言われる立場にいる。
「慎一郎さん、頑張ってください!」
「ありがとう司くん、君もね」
あの鴗鳥が現役のうちに司もオリンピックに出場するという、以前の司が聞いたら意味がわからないほどの幸運も掴み取った。以前は瞳と共に全日本に出場していた20歳の時である。
この晴れの場を終えたら引退かと囁かれている、出場するスケーターの中で最年長である鴗鳥。彼ともまあ会話をするほどの関係性だ。鴗鳥といえばスケーターの中でもレジェンドすぎて仲良くさせてもらってはいるが、記憶にあるより若い彼に、勝手に未来の鴗鳥の姿を感じで遠慮してしまっている現状だ。
だっていまだに、あの現役時代の鴗鳥と、同じ氷上で鎬を削る仲であるというのはにわかに信じがたい。
司の憧れで原点なのは確かに夜鷹純だ。司のスケートの神様のような人。司の目指す場所であり成りたい存在の、神様。
でも鴗鳥慎一郎のことも憧れていて、もちろんファンなんだ。あの夜鷹がいるために金メダルを逃していると外野に言われ続けた不遇で不屈の人。体格も良く同じ高身長で怪我もしていたのに、氷上に舞い戻りオリンピックという場でメダリストになった。
オリンピック、世界で競う場、そんな場所で鴗鳥は以前銀メダルをとった。
もしかしたら今回は鴗鳥が1番になるかもしれない。そう期待していた。

そんな初めてのオリンピックで、司は台乗り出来なかった。

冷静な司の心は、やろうと思えば取れた機会だったな、と理解していた。身体的にも好調で一番良い時期。
こんなことを言うのは銀に輝いた鴗鳥に対しても金銅のメダルを取った選手にも、その他オリンピアンにも聞かせられない。夢見がちな妄言であまりにも舐めた言葉。
出来るかもと思っても、結果がなければそれは負けと同然。
あの人が、鴗鳥慎一郎がメダルを取る姿が見たかった。
淡い期待を持って自分以外のことを考えていたら少しだけミスをして、司は5位。そして鴗鳥選手は前世と同じく銀メダルを取ってにこやかに引退していった。

夜鷹純とは、今回姿さえ見ていない。
鴗鳥よりももっと早く20歳で引退してから噂すら聞かなかったし、大会で会う鴗鳥から夜鷹のことは一切聞かなかった。そもそも親交があるとはコアなファンだったあの頃の自分でさえあの日まで知らなかったのだから、今も徹底して隠しているのだろう。
表に出てきたのだって狼嵜光選手という繋がりからだ。そしてさらに行方不明になった件があって・・・色々、あって、戻ってきて・・・あれ、それでどうなったんだったか。
覚えていないが、覚えていないのならそれは自分にとって覚えていなくても良いことだったんだろう。
そして帰国しまた新たにメダルを目指していた矢先、住んでいたアパートが火事になった。
目が覚めたら目の前は黒い煙、そこから先の記憶は、無い。

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コメント

  • Lily
    6月27日
  • らっちょ
    6月25日
  • ゆべし
    6月3日
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