事件巻き込まれ体質 - 豚丼@とんどんの小説 - pixiv
事件巻き込まれ体質 - 豚丼@とんどんの小説 - pixiv
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事件巻き込まれ体質
 皆さまお久しぶりです。1月ミスドアではお世話になりました(こくみ庵が)。通販はフロマージュさんにて行っておりますので、お暇でしたら覗いてみてください。
 
 さて今回は東京に遊びに行った火村と有栖が事件にまきこまれる。なんとあの毛利探偵と遭遇します!ちびっこ探偵たちは出てきません。
 かるーく書いただけの粗い話なので、雰囲気でお楽しみいただければ幸いです。

 ラストに高校生探偵もほんの少しだけ登場してます。怒らないでください・・・!

 なんでコナンなのかというと、先日太陽にほえろとコナンのテーマを混ぜて弾いて遊んでたので・・・ww
ええ、何となくです。
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2019年2月24日 21:53

 その日、毛利小五郎はある出版社のパーティーに出席していた。
 別に出版社に知り合いがいるわけでもなく、もちろん世話になったわけでもない。いくら小五郎が名探偵だとしても、いまだ本を出版しませんか、という依頼はないのだ。
 それなのに、一応上等なスーツを着てこの立食パーティーに参加しているのには、わけがある。

 先日小五郎はいつもどおり閑古鳥の鳴く事務所を締めて、娘と小生意気な子供を家に帰して、一人で飲み屋で至福のひとときを過ごしていた。
 その直前、客がいない事務所でビールで喉を潤そうとしたら、年々母親に似てくる娘が「お父さん! 昼間から飲みすぎだよ!」とか「仕事中でしょ!」などとすぐに怒ってくる。良いじゃねえか、どうせ依頼人なんて来やしねえよ、いつだって閑古鳥が鳴いてるんだからよ!と自嘲混じりに返せば、そういうことじゃないでしょ!体壊すよ! と倍以上の言葉が返ってくる。まるで別居中の嫁のような口うるささだ。辟易して下の喫茶店に逃げ出せば、居候しているちびっこが目を丸くして「どうしたのおじさん、もしかしてお酒飲んで蘭ねえちゃんに怒られて、逃げ出してきたの?」と幼い口調で心をえぐってくる。奥ではウエイトレスと最近入ったウエイターがくすくすと笑っていて、うるせえうるせえ! と言いながら事務所を締めて、俺は一人で飲むんだ、お前ら帰れー! とやさぐれて、ふらりと店に入ったのだ。

 その店は初めて入ったのだが、料理も美味く値段も庶民的だった。こりゃいい店を見つけた、これから通うかなと上機嫌で飲み食いしていたら、カウンター席で横に座っていた親父が話しかけてきて、話が盛り上がった。
 正直何を話したのかはさっぱり覚えていない。まあ、どんな仕事を? と聞かれて、ちょっと探偵業を……とニヒルに答えれば、この辺で探偵……? もしかして、毛利さんですか?と言われて、俺ってやっぱり有名人!? とちょびーーーーと鼻の下は伸びたかもしれない。
 しかも妙に聞き上手な相手に、気持ちよく話を聞いてもらって、旨い酒にうまい飯で少しだけ事件の話をしたことはしたが、間違っても個人情報がわかるような話はしていない。それだけは確信がある。なんたって自分はプロなのだから。
 だが何がどうしてそうなったのか、相手がよろしければ……とこのパーティーに誘ってきたのだ。タダ飯にタダ酒が飲めるというその点だけで、いやあ悪いですなあ、そうですか、じゃあ。と小五郎は二つ返事で承諾した。
 店を出る時にその男からこの招待状を貰って、ジャケットの内ポケットに入れて、上機嫌で帰宅してそのまま寝落ちた。

 次の日に目が覚めて顔を洗ってリビングに行けば、不機嫌そうな顔で自分のジャケットを吊るしてくれている娘がいて、お父さんこんなの入ってたよ、と渡されたソレを見て、小五郎はアレは夢じゃなかったのか……と思いだしたのだった。
 そして娘と子供がパーティーだってーと期待した目で小五郎を見てきたが、なにせ経緯が経緯だ、子どもたちを誘うわけにはいかん、と自分一人で参加することになり、今に至る。
 ここへ来てみれば誘ったヤツがいるに違いない、そうすればぼっちで壁の花になることもないだろうと思ってきてみたのだが。

「どこにもいねえじゃねえかよ……」

 そうなのだ。誘い主が会場のどこにもいないのだ。しかも出版社と言っても、いつも小五郎が読んでいるような芸能雑誌ではなく、固そうな本のパーティーらしい。作家らしき人物がそこここに居るが(妙に本オタクな子供でもいればアレは誰だれだと目を輝かせて走り回るだろうが)小五郎にはさっぱりわからず、仕方がなくひたすら飲み食いして過ごしていた。
 一流ホテルだけあって、どの料理も美味い。日本酒やワインも豊富だったので、酔わない程度にあれもこれも、と誘った相手が来ない不自然さもすっかり忘れて、小五郎はパーティーを楽しんでいた。

 周りはパーティーが始まってしばらくは歓談に勤しんでいたので、その間に小五郎はあらかたのメニューを制覇し、あとは適当に飲んで帰ろう、と周りを見回しているときだった。

「ウッ!!!」ガシャン!

 突然自分の近くのテーブルにいた男が、大きな声を出して取り皿を落としたかと思えば、そのまま首をかきむしり、ばったりと倒れ込んでしまったのだ!
 呆然とした小五郎だったが、いち早く倒れた男に走りより、脈を確かめる。

「……息はある! 誰か、救急車を!それと、このフロアにいる人は動かないでください! スタッフ含めて誰も外に出ないように! 出たら犯人として扱いますよ!」
「……はい!!」
 どこからか返事がしてあちこちから電話を取り出したり、スタッフがドアを締めて回るのを小五郎は横目で確認しつつ、倒れた男の様子を伺った。その口からふわりと匂いが立ち上る。
「これは……アーモンド臭!? という事はこの人が食べたものの中に毒が……!?」
 小五郎が男の食べたものを確保しておかねば、と周りを見回すと、被害者が落とした皿のそばに男が一人しゃがみ、もうひとりが中腰で見ていた。
「おい! あんたら! それに触るな! 毒が仕込まれているかもしれないからな!」
 小五郎が低い声でそう凄めば、しゃがみこんでいた男が顔を上げる。

 ……イケメンだな。小五郎は思った。娘の幼馴染の家に住み着いている男や、下の喫茶店に居る男もイケメンだが、こいつもまたひと目を引くほどのイケメンだ。その若白髪が自分の身近な2人よりは年上だろうと思わせるが。
「毒ねえ……」
 つぶやいたその声は、これまたバリトンのイケボイスというやつか。声まで良いとはなんて嫌味な男だ、小五郎は思った。それに続き、もう一人もしゃがみ込み、皿に残っていたソースを指につけて、舐めた。
「あ!! お前!! よせ!!」
 小五郎が慌てて静止するも遅かった。
「ペロッ……これは……! 青酸カリ……!」
「おい馬鹿! 吐き出せ! 飲み込むな!!」
 何という大馬鹿なヤツなのか。人が眼の前で倒れていて、しかも毒かもと忠告しているのにソレを舐めるとは!しかもこの被害者の匂い、これは、奇しくもヤツが指摘したとおり青酸カリの可能性が高い……! 慌てた小五郎が馬鹿者に詰め寄る前に、イケメンが相手の額をペシリと叩いた。
「馬鹿なこと言ってるんじゃないよ。不謹慎だろうが」
「ああそうやな、悪かった。でも、これは青酸カリではありませんよ?」
 舐めたヤツが前半イケメンに、後半のセリフを小五郎に向かって言って、ニコリと笑った。
「はあ? 素人に何がわかる! この人の口からアーモンド臭がしているんだよ!!」
「そりゃあそうでしょうね、これ、アーモンドのアイスと濃縮ソースですから」
「はあ?? 何いってんだ! 毒物だったらアーモンド臭は青酸カリなんだよ! それに万一違うにしろ、毒が仕込まれているかもしれないものを舐めるなんて……!」

 と怒鳴りつけているそこへ、警察が到着した、と従業員が制服警官達と共に飛び込んできた。小五郎は被害者から離れて、乱入者の二人を押して現場を確保する。程なく救急隊も到着したので、小五郎は青酸カリによる中毒である可能性を告げた。しかし先ほどのイケメン達が会話に割って入ってきた。
「俺は青酸ちゃうと思うけどなあ……」
「呼吸困難のわりに全身の筋肉の弛緩、意識はあるようだが言葉は発せない。この状況で考えられるのは」
 そして二人で顔を見合わせて、せーの、と声を合わせた。
「「テトロドトキシン!」」
「馬鹿かお前ら! 意識消失呼吸困難でこれだけ急性なのは、青酸カリなんだよ!」
「アーモンド臭もあるってか?」イケメンがもうひとりにふざけたように言えば、彼にアリスと呼ばれていた性別不詳(声からすると男だが、名前だけ聞けば女だ。見た目はどちらとも取れなくもない)の方が返す。
「せやけど、この人急性やないし……」
「……どういうことですか?」
 3人の話に戸惑っていた救急隊員が口を挟む。それにアリスの方が応えた。
「この人、会場に来たときからフラフラしとったんです。どうしたんかなー思うてチラチラ見てたんで、間違いありません」
 さらにイケメンが続ける。
「私も見ていました。あまりに様子がおかしかったので近づいてそれとなく様子を見ていたんですが、ろれつも回らなくなってきて、食べ物も口からポロポロこぼしてました。そうしてとうとう意識消失です。脳の疾患も疑ってはいたのですが、計算は出来てましたから……」
「計算、ですか?」
 救急隊の質問にはまたアリスが答える
「電話がかかってきて、ろれつの回らない口で、でも何やら暗算して応えてましたよ?」
「なるほど……」
「ですから、テトロドトキシン、脳疾患、青酸カリ。この辺を疑っておいてください」
 イケメンが締めたタイミングでちょうど搬送の準備も終わり、被害者は運ばれていった。小五郎は面白くなく思いながら、救急隊の背中を見ていた。自分の見立てを否定されて面白い訳がない。しかも自分はそんなに前から被害者を見ていなかった。
「クソッ……」
 思わず毒づいたその時。

「おお、毛利くんじゃないかね。また君がいる時に事件か……。まったく」
「いやそう言われましても警部どの……。本当に偶然でありまして」
 顔見知りの目暮警部がその体をおもそうに揺すりながら、どこか暢気な掛け声とともにやってきた。隣には高木刑事もいる。
「それで。どんな状況なのかね?」
 呆れたように警視庁捜査一課の目暮警部が腰に手をあてて小五郎に尋ねたが、それには小五郎は後ろにいる二人組を指さして嫌味たっぷりに言った。
「私は被害者が倒れたから駆けつけただけですが、どうやら後ろの彼らはもっとよく見ていたそうです。話を聞くなら彼らからどうぞ」
「……そうなのかね……? えー、あなた方、被害者とはどういうご関係なのです?」
 目暮の質問にそれにアリスがモジモジと応えた。
「関係はないですよ、ただ、あの人がここに入ってきたときに偶然目に入って、なんかフラフラしとるなーって見とっただけです……」
「ふうむ、そちらの方は?」
「私はコイツがあまりにじっと見ているので何かと思っただけです。確かにフラフラしていましたが酔っぱらいとは違う。脳疾患なら早めに病院へ行ったほうが良いと忠告しようと、近づいた所で彼が倒れたんです」
「なるほど……。彼が何を食べていたかは分かりますか?」
 それにはまたアリスが応えた。
「入ってきてすぐにウエイターにカクテルを貰って飲んでました。そのあとはステーキに、うどんに、ピザをそれぞれ少しずつ」
「キャビアも喰ってたし、寿司も少々。最後がその、アイスです」
「アイスねえ……」
「全部自分で選んで取ってましたから、それに毒を入れることは不可能でしょう。それにここに来たときからおかしかったですから、毒ならその前です」
「ですから、毒だとしたら、その症状から考えて我々はこう思ったんです」
「「テトロドトキシン」」
 また二人が仲良くハモる。流石に警部も何だこの二人は、とドン引きしていた。傍らの高木は明らかに引きつった笑顔になっている。
「どっかでふぐを喰ったんやろな」
「自分でさばいたか、免許のない人がさばいたのか」
「フグは美味いけど怖い魚やからなあ」うんうんとうなずきあう二人に、
「と、ところで毛利くん!」
 二人の漫才をどうやって止めるか迷ったらしい目暮警部が、小五郎に話を振ってきた。
「は、何でしょうか」
「君はどうしてこのパーティーに?見たところ出版社主催らしいが、君にどんな接点があるのかね?」
「いやあ、それがですねえ」
 小五郎はふらりと入った居酒屋で隣り合った人と意気投合し、彼が招待状をくれたのだ、と目暮警部に伝えた。
「それで、その男はどこにいるんだ?」
「いやあ、それが会場のどこにもいないんですよ。大体これが出版社のパーティーだとも私は聞いていませんでしたし」
「……それなのに、参加する気になったのかね……?」
「そりゃあ、まあ、タダで美味しい料理と酒がいただけると言われれば……。場所も一流ホテルですし? まさか招待主がいないとは思いませんでしたけど」
「相変わらず食い意地の張った男だな、君は……」
「ああソレで……」
 目暮と小五郎の会話に、後ろからアリスが割り込んだ。小声で独り言に近かったが、小五郎の耳はしっかりとその発言を捉えた。
「ああん? それで、とはどういう意味だ?」
 小五郎が目つきも悪く振り向きながらアリスに凄めば、どこかの小学生を彷彿とさせるようなすばやい動きで、アリスはイケメンの後ろに隠れた。
「あ、あの、お一人で特に誰とも話もしてなかったので……。ほら、こういうパーティーですから、誰とも話をしないのは珍しいなと」
 よく見ているヤツだ。小五郎は思った。イケメンの影に隠れて顔だけだしている様子とか、その観察眼と喋り方が、本当にここにはいない、チョコマカとよく動くちびっこい居候に似ている。
「こういうパーティーとは?」
 目暮がアリスに質問した。
「今日のパーティーは出版社の創立記念なんです。ここに参加しているのは作家陣と編集者達が殆どで、ですから顔を合わせれば出版の話になるような……そんなパーティですから一人で美味そうに食事をしているその人は目立ちまして」
「あんた方だって二人でずっと居ただろうが。それこそ第三者なんて絡んでなかっただろう?」
 小五郎が意地悪く発言する。小五郎は自分を招待した男を探して会場中を見回していたのだ。その中でもこのイケメンは目立っていた。ダークスーツに身を固め、軽く前髪を上げているその姿は男から見てもイケメンだった。しかも寄ってくる女性陣を相手にせず、横のアリスの世話ばかり焼いていた。アリスにしつこく言い寄る男(編集者か?)がいれば短時間でさりげなく引き離し、アリスが誰かと話をしている間に食べかけの皿を確保しておいて、更に料理を盛る。話が終わればその皿をアリスに押し付け、食べさせる。
 アリスもスーツを来ていたが、こちらはえんじ色の細身のスーツで、肩に余裕でつく長い髪もあって性別がわかりにくい。足元が革靴なのでかろうじて男か?と判断できる程度だが、男装と言われれば納得しそうな雰囲気で、とにかくふたりとも目立っていたのだ。それで小五郎も、顔見知りもいなくて見るものもないから、なんなんだアイツラは、とチラチラ見ていたのだ。
「それは……」 
 アリスがバツの悪そうな顔で返事をすれば、すかさず目暮が質問をした。
「あなた方は何故このパーティーに?出版社の関係者なんですか?」
「はあ、一応私がお世話になっていまして」
 応えたのはアリスだった。
「私は小説家でして、先日こちらの雑誌にエッセイを載せてもらったのです。今日はそのゲラチェックに出版社に寄ったら、せっかくだからパーティーにも参加してくださいと誘われました。でも、私もこちらの出版社にお世話になるのはこれが初めてでして、ほとんど知り合いもいなくて、それでコイツを誘って……」
「ふうむ。そちらの彼は?」
「私は、コイツの友人です。今日は別件でこちらに来ていまして、有栖川に泣きつかれて渋々参加を」
「有栖川だぁ? それでアリスなのか?」
 小五郎は心の思わず声に出してしまったようだ。全員の目が小五郎に集まり、すぐに目暮が今更ですがと二人の名前を聞いた。
「私は火村と言います。京都の大学で講義を持っています」
「私は有栖川です。作家です」
 二人は名刺を目暮に渡した。小五郎も高木と一緒に覗き込む。
「ほう、英都大学の准教授……お若いのにたいしたものだ……。そちらが有栖川……有栖さん? ペンネームですかな?」
「いえ、本名です」
 その答えに全員が思わず有栖川を見る。
「そ、そうですか、覚えやすいお名前ですね」
 高木が愛想笑いで言うが、作家は言われなれているのだろう、どうも、とだけ返した。目暮がゴホンと咳払いをして続ける。
「なるほど、お二人が参加していた理由は分かりました。しかし毛利くん、君は本当にトラブルに巻き込まれるなあ」
「トラブルって……。そりゃあ招待主が居ないというのはおかしな話ですが、連絡先を交換しあったわけじゃあないですから、招待主が風邪でもひいて来られなくなっただけなんじゃあないですかねえ、それにそちらサンの言うように、あれがフグ毒なら、事件性もないでしょう。少なくともこのパーティーには関係ないでしょう。もちろん、私ともね」
「それもそうか……」
 目暮が納得しかけた時だった。のんきな声が上がったのだ。

「本当にそうかなあ~?」
「うるさいぞコナン! お前はだぁーっとれ!」

 思わず小五郎が反射的に叱り飛ばしながら足元を見るが、もちろんあの小憎たらしい小学生は居ない。代わりに准教授にしがみつく作家がいただけだ。
「……毛利さん、でしたね、有栖川が怯えますから……」
 笑いをこらえながら准教授が言い、高木は顔をそむけて笑っている。作家は准教授の陰でコソコソと准教授に言った。
「コナンって誰や、ドイルか?」
「俺が知るか。察するに毛利さんのお子さんなんだろうよ」
「コナンかあ……どんな字を書くんです?」
 有栖川が興味深そうに聞いてくる。うっかり人違いで叱り飛ばしてしまった小五郎は、カタカナだよ、と不機嫌に応えた。

「それより、本当にそうか、とはどういう意味です?」
 目暮は頬に一筋、汗を垂らしながら、軌道修正に必至だ。
「その前に確認させてください。毛利さんは元刑事……いや、探偵ですか?」
 准教授がその努力をムダにするようにイケボで割り込んできた。
「……なぜそう思うんです?」
「先程からの会話を聞いているに、こちらの警部さんとあなたはお知り合いのようだ。被害者が倒れた時の対処の仕方も、手慣れたものだったし、何よりこういう場面になれているようにお見受けします。しかし現役の刑事ならそうあの場で言うでしょう? でも今もってあなたが刑事であるとは誰も言わない。先程私達の名刺を警部さんにお渡ししたときも、毛利さんは警部さんの後ろにまわってらそちらの刑事さんと一緒に覗き込んだ。ただの顔見知りの一般人ならそんなことはしないでしょう。ならば、毛利さんは皆さんと顔見知りの元刑事で、今は比較的時間が自由に使える職業。探偵なのでは、と思ったのですが」
「青酸カリとかすぐに思いつくのも、素人とは思えんしな」
 准教授の後ろでうんうんと作家が頷いている。
 小五郎は内心で舌を巻いた。この短時間でそこまで判断しているとは、コイツ何者なのかと。一瞬俺の名前も関西にまで轟くほど有名になったかと有頂天になりかけたが、違ったのかと顔に出さずに落胆した。
「そういうあんたらこそ、ガッコウの先生の割にこういう場面で落ち着いているだろうが。そっちの作家もな!」
 その言葉に二人は顔を見合わせた。全く、なんだそのタイミングは。
「申し遅れました。名刺にもありますが、私は犯罪学が専門でしてね、その研究の一環で事件現場を見学させていただくことがあるのです。この有栖川はその際の助手をやってもらってます」
「それでこういう場面にも慣れているのですね、なるほど……」
 高木刑事が手帳にメモをしながら呟く。目暮も腕を組んで納得してから、再び会話の軌道修正を試みた。
「なるほどな、偶然にせよ事件現場に慣れているものがここに集まっていた、ということか……。それはそうと有栖川さん、本当にそうか、とはどういう意味なんですかな?」
 それにまた二人で顔を見合わせ、有栖川が君に譲るわ、と火村の肩を叩いた。
「私達は関西の人間ですから、毛利さんのお名前は聞いたことがないのですが、皆さんの接し方を見ているに相当の名探偵なのでしょう。その毛利さんが自宅付近で呑まれていたなら、相手も少なくともお名前で名探偵だと気が付いたのでは?」
「そりゃまあ……たぶんな」
 まさか自分で探偵と名乗ったとは言い難い。名探偵と連呼されて小五郎の機嫌は上向いた。
「名探偵とパーティに参加すれば、招待主も鼻が高いでしょう。しかしその本人がこの会場におらず、事件が起こった。……お前ならどうストーリーを仕立てる? アリス」
「いくつか思いつくけど……。まずはあの被害者を殺害するつもりで、アリバイ作りに毛利探偵を使おうとした」
「それなら招待主がここにいなければ意味がないだろう。アリバイにならない」
「せやな。なら、被害者が事件に合わないように、犯人に対して毛利探偵を牽制に使った」
「その場合は、やはり招待主がここに毛利探偵がいるぞとアピールしなけりゃ意味がない。やはり招待主が居ない説明がつかない」
「毒殺もなあ、立食パーティーやから本人がどれを食べるかわからない以上、毒の仕込みようがない。誰かがそばにいれば別やけど、それでも親しい人やなければ無理やろ。それも青酸やったとして、致死量は成人男性なら小さじ一杯程度やろ。それを一瞬で仕込むのは、無理や」
 ポンポンとテンポよく交わされる推理に、周りのものが唖然とする。何なのだこの二人は。漫才を繰り広げながらの推理?関西人はみんなそうなのか?
「まだあるか?」
「案外、被害者を助けようと思った」
「……詳しく」
「詳しくされてもなあ……。うーんと、依頼主は被害者が何らかの形で狙われることを知っていた。せやけど直接止める手段を持たなかった。毛利探偵が元警察官なら、逮捕術も使えるやろうから直接被害者が狙われても、少なくとも犯人を捕まえられる可能性が高い。例えば刃物で刺されたとしても、対処が早ければ助かる確率も増えるやろう? 毒を盛られても、やはり素早い対処があれば助かる確率が高い」
「……続けてくれ」
「現に被害者は息がある状態で病院に運ばれた。今もって病院から連絡がないって事は、被害者は無事ってことやろ。フグ毒なら呼吸さえ確保できれば、あとは時間が解決してくれる。ホンマに青酸やったとしても、毛利探偵が救急隊に告げた事ですばやく手当をできる。こんな繁華街なら病院も近いしな。これが毛利探偵が居なかったとして、俺らも居なければ何かが起きても、周りはオロオロするだけで対処出来ずに手遅れや。もし被害者を殺したかったなら毛利探偵を呼ぶ必要はない。せやから被害者を助けたくて毛利探偵をここに呼んだ。どや?」
「……なるほど……」
 感心したような声は高木刑事だ。
「……その考えに、今のところは無理はなさそうだ」
「やった♪」
「……毛利くんは今の意見をどう思うのかね?」
 有栖川の推理にただ呆然としていた小五郎は、その目暮の質問で我に返った。確かにそう考えることもできる。自分のような名探偵をわざわざここに呼んで事件を起こすのは、リスクが高すぎる。だが、防ぐ目的なら。
「確かに、わざわざ私をここに呼んで事件を起こすよりは、その方がありえる話ですね……」
「ふむ。なあ毛利くん、本当にその依頼主はここには居ないのか?変装して潜り込んでいる、という事は……」
「それはあり得ません。何度も会場を見回しました。もし変装したとしても、あの特徴的な体つきは、誤魔化せませんからなあ」
「特徴的な体つきだと?」
「ええ、何しろでっかいんですよ。身長はそこのガッコウのセンセイ位ですけどね、でもプロレスラーか、ってほど肉付きが良かったんですよ。頭髪や服装は変えられても、体型は変えられませんからなあ」
「……そういうことは早く言い給え……。まあいい、確かにここにそんな人物はいないな……」
「ええ。途中から入ってきた人の人体も違いましたし、出ていった人も違います。ですから、ここにはいないと判断したんです」
 どうだ、と二人を見れば、それにはふたりとも反論してこなかった。
「まあ良いだろう。とりあえずここの料理も鑑識が回収しているから毒物が入っていればすぐにわかる」
「警部殿、本当にフグ毒なら効いてくるまでに時間がかかります。被害者の足取りを追うことをおすすめします」
「そうだな、わかった。おい高木!」
 目暮がかたわらの高木に支持をだそうと声をかけたとき、高木はちょうど電話を受けていたが、通話はすぐに終了した。
「警部、被害者は命には別状ないようです。やはりフグ毒だったようで、まだ話は出来ませんが……」
「そうか!」
 命が助かれば、誰が彼にフグを食べさせたのかすぐにわかる。事件は早期解決しそうだ。
 念の為会場の全員の名前と住所を控え、パーティーは混乱の中で終了した。参加者が拘束されずに帰れるだけでも幸運だろう。

 高木が受けた電話のあと、小五郎は何げなく関西からの二人組を見ていると、作家の方がチョロチョロと動き回り、センセイの方はそんな作家を見ながら腕を組んで何かを考えていた。
 ウロチョロと動き回る作家は、あの生意気な小学生を彷彿とさせ、何度か少しはじっとしていられねえのか!とゲンコツを食らわせたくなったが、これは別人と自分に言い聞かせて我慢をした。
 まったく、あのガキときたらこういう現場に来ると妙に生き生きとしやがる。この話もしてやったら目を輝かせて食いついてくるに違いない。そこからどんな推理を繰り広げて来るやら。
「……ウチの有栖川がどうかしましたか?」
「ああん??」
 いつの間にかセンセイが近づいてきていた。何を言っているんだ? と小五郎は怪訝そうにセンセイを見た。
「いえ、有栖川を目で追いながらほほ笑んでいらしたので」
「俺がぁ? そんな事、するわけないだろ!」
「……そうですか。何やら微笑ましいものを見ている表情をされていましたよ……。もしかして、コナン君を思い出されていたとか?」
「……なんでアンタがコナンを知っているんだ」
「先ほど有栖川をコナンと叱りつけてらした。それに私が貴方のお子さんでは? と言ったのに、反論されなかった」
「俺の子じゃねえ。知り合いから預かっているくそ生意気なガキだ」
「そうですか。可愛いのでしょうね」
「アンタ、耳は大丈夫か?俺はクソ生意気な、と言ったんだぞ!」
 思わず小五郎が大きな声を出せば、准教授は苦笑した。
「有栖川のセリフへのツッコミも、心配からくる愛情たっぷりなお声でした。今の目線もね。手のかかる子ほどかわいい、そういう事かと思ったのですが、違いましたか?」
「……なら、アンタにとってもあの作家は、手のかかかる子、なんだろうな」
「……はい?」
「アンタもな、作家があんたを見ていない時は、そりゃぁあたたかーい視線で作家を見ていたよ」
 准教授が目を見開く。毛利はざまあみろ、と心の中で舌を出した。ハトが豆鉄砲を食らった顔をしていた准教授が、すぐに顔をしかめて先ほどまでの威勢のよさが嘘のように、小さく呟く。
「……そんな事は」
「今だって俺が作家を見ているから、牽制に来たんだろうが。全く。あーあーお熱いったらありゃしねえ」
「……そんなんじゃありませんよ」
「な~ら、何だっていんうんだ」
 作家は相変わらずフラフラとあちこちを見て回っている。勿論周りからも声を掛けられている。一言二言ですぐに終わる程度の会話だが。小五郎がなんとなく作家の動きを目で追っていると、准教授がボソっと言った。
「……アイツは事件体質なんですよ……」
「あぁん?」
「行く先々でこうやって事件に巻き込まれる。だから、目が離せないだけです」
「……見守ってたって巻き込まれているじゃねえか」
「知らない所で事件に合うより、マシですよ」
「あー……そりゃあまあ…………確かにな」
 
 あの預かり子供も行く先々で事件に合う。自分がいればまだ危険に巻き込まれないように監視してやれるが、そうじゃない所だと、あのガキは自分から危険に突っ込んでいきやがる。娘は駄目だ。抑止力が弱すぎる。あの自由過ぎるほどに飛び回るガキを殴ってでも制止できるのは、俺だけだ。

「火村、もう帰ってええって! ……何や二人、ずいぶん仲良くなったんちゃう?」
「そうかな。じゃあ毛利さん、また機会がありましたらお会いしましょう」
「けっ、そんな機会がない事を祈るよ。じゃあな、気を付けて帰るんだな」
 小五郎は片手をポケットに、片手を面倒臭そうに振りながら、出口に向かう2人に背を向けた。目暮警部に挨拶をして自分も帰らなければ。遅くなると娘がうるさい。
 飯も酒も美味かったけど、酔うほど飲めなかったし、騒動で終わる一日となるとか、本当に俺も運がないな、と小五郎は大きくため息をついた。

事件巻き込まれ体質
 皆さまお久しぶりです。1月ミスドアではお世話になりました(こくみ庵が)。通販はフロマージュさんにて行っておりますので、お暇でしたら覗いてみてください。
 
 さて今回は東京に遊びに行った火村と有栖が事件にまきこまれる。なんとあの毛利探偵と遭遇します!ちびっこ探偵たちは出てきません。
 かるーく書いただけの粗い話なので、雰囲気でお楽しみいただければ幸いです。

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佳架
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2019年3月4日
to-ya※更新停滞中
to-ya※更新停滞中
2019年2月26日
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