Vol.581「宮中某重大事件」
(2026.7.21)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…ついに「愛子さま排除法」(旧宮家系一般国民男子養子法)が成立してしまった。この法律の下では、天皇陛下の実のお子さまである愛子さまが次の天皇になれない一方で、600年遡らないと男系の血筋がつながらない赤の他人が皇族になって、その子が男だったら天皇になれることになる。政治がここまで勝手に天皇制に手を突っ込むのは、まさに前代未聞である。もっとも「前代未聞」といっても、憲政史上にこれを連想させるような前例が全くなかったわけではない。その唯一の例は今から100年以上前の大正時代、1920年から翌年にかけて起きた「宮中某重大事件」である。「宮中某重大事件」とはどんな出来事だったのか?そして、この事件を解決に導いたのは、あの人物だったのだ……!!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…前回は、古代の女官や宦官について書いた(第404回「女性が国家を支える日本に、宦官はいらなかった」)。今回はさらに深掘りして、日本の伝統的感覚が、父系血統を重んじる中国の歴代王朝とはいかに異なるものだったのかを解剖していきたい。中国の、男系男子の血統を守る仕組みは皇帝だけのものではなく、一般社会でも富裕層の男性は妻に男子を産ませることを最優先していた。そんな中国には、男系男子継承を維持するために古くから驚くべき風習が存在したのだ!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…「世論調査」について、どれくらい信頼している?東浩紀がXで「男系は維持すべき、女性天皇は許容する」と発言した件をどう思う?男系固執派は自分に娘が生まれても、その娘は「女だから劣生」で財産分与等の権限はないと思えるの?「愛子様が皇位を継ぐのが自然」と言う82歳の黒沢年雄と、「ネトウヨ男系固執」の70歳の世良公則…この二人の差はどこから生じた?ジャンプ33号に付録として付いた『ONE PIECE』カードゲームのレアカード目当てに転売屋が買い占めた件をどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. ゴーマニズム宣言・第609回「宮中某重大事件」
ついに「愛子さま排除法」(旧宮家系一般国民男子養子法)が成立してしまった。
この法律の下では、天皇陛下の実のお子さまである愛子さまが次の天皇になれない一方で、600年遡らないと男系の血筋がつながらない赤の他人が皇族になって、その子が男だったら天皇になれることになる。
政治がここまで勝手に天皇制に手を突っ込むのは、まさに前代未聞である。
もっとも「前代未聞」といっても、憲政史上にこれを連想させるような前例が全くなかったわけではない。
その唯一の例は今から100年以上前の大正時代、1920年から翌年にかけて起きた「宮中某重大事件」である。
宮中某重大事件とは、当時皇太子だった昭和天皇の結婚相手に内定していた良子(ながこ)女王(後の香淳皇后)の家系に「色盲」の人物がいたことを元老・山県有朋が問題視し、これを破談にしようと画策したというものである。
(「色盲」は現在では「色覚障害」などに言い換えるべきかもしれないが、当時使われていた用語としてそのまま使う)
言論の自由が保障されていなかった当時はこれを詳しく報道することも許されず、「某重大事件」という名称でしか語ることができなかったのだ。
山県は、裕仁皇太子(昭和天皇)と良子(ながこ)女王(香淳皇后)が結婚したら、将来の天皇となる子が色盲で生まれてくる恐れがあると懸念した。山県は「天皇の血統」を重んじ、そこに「劣った血」を入れてはならないという信念を持っていたのだ。
そのため山県は、良子女王の実家である久邇宮家に圧力を掛け、婚約を辞退させようとした。当時「明治の元勲」である山県には、首相をもはるかに上回る絶大な権力があり、そのままだと縁談は流れるところだった。もしそうなっていたら現在の上皇陛下も、もちろん天皇陛下も生まれていなかったことになる。
歴史を左右するような大事件だったにもかかわらず、これは現在の歴史教科書にもほとんど載らず、詳しい日本史用語集や資料集にしか載らないような扱いである。
そしてこの事件に興味を持って研究しようとする専門家もなく、事の真相はほとんど解明されないまま、100年の月日が経っていた。
だが、この埋もれた歴史に光を当てた研究者がいる。
近代史家の石瀧豊美氏である。
石瀧氏は今年、新刊『頭山満 沈黙の昭和史―「宮中某重大事件」百年目の真実―』(筑摩書房)を出版された。
石瀧氏は明治から昭和の敗戦まで福岡に存在した政治結社「玄洋社」研究の第一人者で、わしも玄洋社の中心人物・頭山満を主人公にした漫画『大東亜論』を描く際には、直接お会いしてご教示をいただいたこともある。
頭山満は生涯を無位無官の浪人の立場で過ごしながら、国内外から絶大な信頼を寄せられ、「アジアの巨人」と呼ばれた人物である。
頭山は終戦前年の1944年に89歳で死去、戦後には「右翼の巨頭」というレッテルを貼られ、その存在さえキャンセルされてしまった。
だが実際の頭山は日中不戦論者であり、大東亜戦争末期には老体を押して中国国民軍の総統・蔣介石と直談判で和平交渉をしようとしていた。そして蔣介石も、日本政府の要人には誰とも会うつもりはないが、頭山となら会うと言っていた。頭山満とは、それほどの大人物だったのである。
その事実は戦後、完全に忘れ去られていたが、石瀧氏はその史実を発掘して『頭山満 未完の昭和史』という著書にまとめ、わしもライジングで紹介した。
石瀧氏は続けて埋もれた歴史「宮中某重大事件」の発掘に挑み、ついにこれを形にされたのである。
石瀧氏は「現在は第二の宮中某重大事件が進行中」だという。
時の政治権力者が天皇の「血統」に異様にこだわり、皇室の将来に関わる皇太子の婚姻を勝手に左右しようとしたという構図は、確かに現在起きていることと似たようなものを感じさせる。
だがこの時は、結局は婚約が破棄されることもなく、ご結婚は予定通りとなった。それは、一度決まった縁談をそんな理由で無理やり解消させるのは許されないとして、絶対的な権力者だった山県と徹底的に戦った者がいたからである。
従来はその人物として、昭和天皇の教育係を務めた杉浦重剛の名だけが挙げられていたが、実は当時、杉浦と一心同体で活動し、山県の企みを葬り去った人物がいた。
その人物こそが、頭山満だったのである。
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小林よしのりライジング
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気に…


ゴーマニズム宣言・第609回「宮中某重大事件」拝読しました。 頭山満氏が、宮中某重大事件の解決に深く関わっていたとは、驚きました。 山県有朋が香淳皇后にかけた色盲の疑惑も、その根拠は出鱈目だったのですね。 もともと山県は昭和天皇と香淳皇后のご婚約を快く思っておらず、初めから破談…
今回のゴー宣を読むと、益々大東亜論が未完で終わったんが悔やまれる。昭和天皇が影響を受けた頭山満の人柄と思想、行動は、令和の世に必要やと思う。そうせんとホンマに皇室が滅んでしまう。宮中事件の大元凶山縣に関しては、西郷どんを死に追いやった西南戦争の役直後に文京区に有る椿山荘を購入し、…
木蘭さんのトンデモ見聞録・第405回「「蓄妾制・典妻・女禍思想――男系血統という思想の正体」拝読しました。 父系の血統を厳格に重んじる本家・中国から見れば、日本のように去勢されていない男性が後宮に自由に出入りできるような緩やかな管理では、「これでは例外なく男系が続いてきたなどとは…
あの田中真紀子が、高市総理を痛烈批判するとは思わなかったぜぇ。 皇室典範、外交。 小林よしのり先生も、卒倒するんじゃないか?