オフィスの室温「28℃設定」は非効率…光熱費と人件費の「ベストバランスの温度」がわかった【実験で証明】
● 冷気は足元にたまりやすい 集中力を乱す一因に しかしここで注意しなければならないことがある。冷気は重いので足元にたまりやすい。床付近が低温環境になることで人によっては自律神経が過度に緊張状態になり、仕事の能率を落とすことが伊香賀氏らの研究でわかっている。 「大学生を対象に、足元が寒いオフィスで自律神経の状態(交感神経活性度)を調べました。すると基礎代謝が低い傾向にある女性は、低温環境で足の甲の皮膚温が頭部と比べて2℃ほど低下してしまうのです。寒さを感じると、体は末端の血管を収縮させて血の巡りを悪くし、体温を逃がさないような自己防衛を働かせますが、それによってイライラするなど集中力を乱してしまうのです」 一方で男性の場合は、基礎代謝が高いためか、足元の温度の下がり方が“耐えられるレベル”だったという。そして実験対象者に計算問題(ナンバープレース)とマインドマップ(創造作業)を行わせると、「基礎代謝が低い人はナンバープレースの成績が悪い」結果であった。 この結果を踏まえて伊香賀氏は「企業経営者はテナントオフィスを借りるとき“賃料の安さ”だけで決めてはいけません」と指摘する。 「同じ立地でも、断熱性能や日よけがきちんとされている建物は、工事費が高いので賃料も高めになるわけですが、結果的にはそのほうが社員の仕事効率が高まり、会社の業績が上がるということです」 ● 快適な室温を保つには 「断熱性能」と「日よけ」がポイント 実は経営者が職場環境を良くしようと、先の「最も作業効率のいい25.7℃」にしようとしても、エアコンが「設定温度通りの室温」に働くには、建物の設計がきちんとしていなければならないのだ。 快適な室温を維持できる、良い建物であるかどうかの見極めは、「断熱性能」と「日よけ」である。 断熱性と気密性は切り離せない関係にある。
隙間風が吹くような家で考えればわかりやすいが、断熱性が低い部屋では、冬に暖房の温度設定をいくら上げても部屋が暖かくならない。 気密性が低いと、温められた空気は部屋の上部に集まり、隙間から外に漏れ出てしまう。そして漏れた分だけ外から冷気が入ってくる。 これを夏に置き換えると、冷房の温度設定をいくら下げても涼しくならず、冷気は足元にたまり、さらに隙間から外に漏れ出て、漏れた分だけ外から夏の熱気が入ってきてしまうことになる。 ● 熱の出入りが大きいのは「窓」 夏には約70%が窓から入ってくる 断熱とは、文字通り熱を断つことで、冬は外へ逃げていく熱を、夏は内側へ入ってくる熱を断つこと。とりわけ窓からの熱の出入りが大きく、夏の場合、およそ70%が窓から熱が入ってくるのだ。 そのため現在借りているオフィスの断熱性が低いようであれば、窓に対策を講じたい。 「窓ガラスを複層ガラスなどの高性能な窓に変えると、断熱性が高まります。また窓が大きくて日射がたくさん入ってくるような建物なら、頭部のあたりの温度を下げるために、どうしても強めの冷房をかけるでしょう。すると冷えた空気が足元にたまりやすく、上下の温度差が生まれてしまいます。ですから窓にひさし、あるいは外ブラインドなどを付けるのも一案です」 また社員の立場では、足元を冷やさないことが業務効率を高めるために非常に重要だ。特に女性は、夏でも膝掛けやレッグウオーマーなどを利用して冷やさないようにしたい。 さて仕事パフォーマンスを上げるためには、夜に自宅で十分な睡眠が取ることが欠かせない。次回は、夏の暑い夜、エアコンをどのように設定したらいいのか、睡眠効率を上げる環境をお伝えする。 ◆◆◆ >>【第2回】「【実験で判明】寝つきが良くなる「エアコンの設定温度」、タイマーは切るべき?かけるべき?」を読む 暑くて寝苦しい夜、エアコンの冷房を適切に使用することが不可欠だが、より良い睡眠のためにはその温度設定はどのようにすればいいのか。研究結果から見えてきたベストな環境とは――。
笹井恵里子