【長編小説】夕暮れの微睡み──【推理小説】
夕暮れにさしかかる午後四時、うたたねをうちながら娘は眠っている。こんな物騒な世界にも、こんな大事な娘が気持ちよさそうに眠っている、ただそれだけは、俺の胸を打つ光景だった。俺は、娘が俺の管轄する刑事的事件に巻き込まれないように、そして、交通道路機関で危険な目に遭わないように、持っていきたかったから、娘の様子も外からしばしば注視することがあった。そんな明くる日、事件は起きた。白河幼稚園で、二十数名の児童が、硫化水素によって意識を失ったのだ。娘は、まだ三歳だから、住内にあるこの幼稚園に通っても何ら不思議ではなかった。一体、誰が硫化水素を撒いたのか、幼稚園の職員にも判然としなかった。私は、娘が幼稚園に行きたくない、と言っていたのは、正解であったのかもしれない、と息を呑んだ。
硫化水素事件は、またたく間に世間に広まっていった。相当な子ども嫌いによるものか、てきとうに殺めたかっただけなのか、という説が出てきて、何だか俺は悲しくなった。娘の命に異変はなかったものの、子どもを失うということは相当重いことであろう。死亡させるという悪だくみは、どうして抱いたのであろうか。検察側も、防犯カメラに犯人の映像が映っていないか、白河幼稚園で足跡や指紋は残っていないか、厳重な取り調べが始まった。
しばらくすると、防犯カメラに、怪しげな男四名が映っており、ガス製品を所持していたことが判明した。怪しげな男四名は、国外へ向かった、という情報も入手した。国外と言えば、飛行機に乗って別の国へ向かったのだろうか。俺は、検察側の人間として、この男たちの調査を本気でやらなければならない責務にかられた。
男たちは、飛行機に乗っていたか、空港での取り調べが始まった。空港では、「そんな男たちは見ていない」「男が複数人いる光景は見ていない」という回答がみられた。しかし、本当はいまにも空港から飛び立とうとしている予感がした。「なぜ男たちは見えないんだ?」と私は訊きたくなった。
空港に乗っているはずの男たちは、しめしめと思っていた。それに私は気付いた。──「わかった!透明人間になったのだ。魔法で自分たちの姿を視えなくしたのだろう」という結論に至った。検察は、透明人間になっている者を見つけるため、飛行機内を調査しに向かった。俺は、「気を付けろ!刃物があるかもしれないし、見えないようではこちらが不利だ」と注意した。検察は、「透明人間が分かる」と信じていた。そして、「透明から見えるようになる」と信じていた。ようやく男たちの姿があらわになった。検察は魔法で、両腕を縛り、銃は持たせなかった。


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