J-POPの構造を利用した曲 「休眠記憶について」
皆さんはこの曲を聞いたことがあるだろうか。
この曲は2026年の2月に休見すや氏によって公開された曲である。
聴いたことがない人は一度MVも含めて聴いてみてほしい。その際に注意点があるのだが、歌詞カードやコメント欄等を見ずに聴いてほしい。
※以後、ネタバラシを含みます。曲を聴いた方のみ見ることを強くお勧めします。ほんとうに。信じて。
解説・考察
では、この曲について解説、考察していこうと思う。
まず、デジタルホラー的なOPから始まる。
「記憶局からのお知らせ」
「10年間お取り扱いのない記憶は修和38年4月1日より順次消滅…」
というものだ。
まず「休眠記憶」とは、頭の中にはあるものの、思い出すことのできない記憶のことである。つまり、この曲の状況というのは
自分の休眠記憶が消えてしまわないように10年以上前の記憶を見てみたい。
というものである。では、曲の本編に移ろう。
イントロ
イントロは8小節と十分とられている。
電子音の粒が記憶のように思える表現である。
MVでは銀行の引き出し画面のようなものが映し出されており、記憶を引き出そうとしている様子をうかがうことができる。
ヴァース(サビ前)
ジャングルジムや帯分数といったような懐かしい記憶が羅列されている。
画質があらい!が仕方がない 不確かな価値観がシャッター切ったから 希望に満ちてる ほくろが4px
これらは昔の記憶であるため画質が荒いのだろう。また、純粋な子供時代のため、あの子のほくろというのは希望に満ち溢れていたのだろう。
1番サビ
黒くてきれいな額縁も 田んぼに建ってる鉄塔も
どうにもならない青空も しずかに休眠中
■■■■のお母さんも 立入禁止の看板も
なんでいままで忘れていたの
さまざまな子供時代の記憶が記憶を引き出す際に思い出される。
ここに関してはとりあえずは先に進もう。
ふたりだけのひみつのときも バレたくなくてついたうそも
赤くなるきみの顔も しずかに休眠中
紐付きパーカーも 高くて手が届かないのも
しずかに休眠中
ふたりだけでいる時というものは微笑ましいものである。
欲しいパーカーがあっても値段が高くて買えない。
私は一度目にここを聴いてこう思った。
ここに関してもとりあえずは先に進もう。
間奏
ここで引き出すような効果音が入る。
静かに休眠していた何十年も前の記憶を引き出すのだろう。
取り出しているのは鉄塔が描かれている記憶である。
Cメロ
記憶を引き出したのだろう。ここで大きく物語が展開する。
ちょうど入れるフェンスのあな
きみの後を追ってぬけたら
大きいタワー 遠くなるパーカー
こわくて登れなかったから
ふたりだけの内しょ話
見上げながら花をさかし
「あっ」
ひびく声 ちゅうをふむ足
しずかな風 ちゅうにうく足
ここですべてが明らかになる。
主人公の彼女である人が鉄塔に登った記憶である。彼女はアクティブでどんどん鉄塔を登っていくが主人公は怖くて登ることができなかった。
一番サビの ふたりだけのひみつのとき
とはこの出来事のことだろう。
しかし、彼女は途中で足を滑らせてしまう。
彼女は宙に浮き、静かな風がなびく。
ラスサビ
わすれたかったってことも
田んぼにたってる鉄とうも
立入きん止のかん板も
ふたりだけのひみつのときも
ひもつきパーカーも
赤くなるきみの顔も
彼はすべてを思い出した。彼女はパーカーが鉄塔に引っ掛かり窒息状態になり死亡してしまった。
一番サビでも出てくる赤くなる君の顔というのは照れてるわけではなく、血が頭にのぼっていたいたという意味であることが分かる。
高くて手がとどかないのも
どうにもならない青空も
■■■■のお母さんも
黒くてきれいながくぶちも バレたくなくてついたうそも
しずかに休みん中
彼は彼女のことを助けようとしたのだろう。しかし、結局助けることはできなかった。ただ、空がきれいなだけだった。
エンディング
休眠記憶はすべて詐欺です。
という締めくくりである。この物語はフィクションですと同義であるといえよう。
全体を通しての考察
まず第一に、この曲は2周目のサビで半音上に転調する。これは鉄塔に登るという物理的な高さ、そのときの高揚感、非日常感を「転調」という形で表現したのだと考える。
そして、なんといっても一番サビのミスリードが素晴らしい。
ふたりだけのひみつのときも バレたくなくてついたうそも
赤くなるきみの顔も しずかに休眠中
紐付きパーカーも 高くて手が届かないのもしずかに休眠中
ここの部分は完全にミスリードをしてしまう。ここの歌詞を考えた作者は本当に上手いと思う。
最後に、「■■■■のお母さん」というところだ。
休眠記憶から記憶を引き出すということは思い出せるということである。
ではなぜ、大事なあの子の名前を思い出せなかったのだろうか。
当時本当に忘れたかったのからなのだろうか。
これは「黒くてきれいな額縁」にも共通することである。なぜ葬式中なのに額縁のことだけなのだろうか。彼女の顔を見ようとはしたが見ることはできなかった。そう捉えてもよいと思う。
最後に
この曲はJ-POPのヴァース、サビ、Cメロ、サビという構成だからこそできたものであると思う。J-POPを新たな視点でみた斬新な曲である。
しかし、この曲は31万回再生(2026/07/04現在)となっている。
個人的にはもっと伸びてほしい曲である。
そして、普段私はボカロを聴かないのだが、この曲はボカロであってほしいと思った。無機質なATMの雰囲気を出すにはボカロがうってつけである。
本当にここ数か月で一番衝撃を受けた曲だ。
ぜひとも多くの方にこの曲を聴いて音楽を構造で見るというとらえ方をしてみてほしい。
おしまい


コメント