松橋事件の国賠訴訟控訴審、熊本県にも賠償命令…警察の長時間にわたる任意取り調べも違法と判断
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1985年に熊本県で起きた「松橋(まつばせ)事件」を巡り、殺人罪の再審無罪が確定した男性の遺族が国と同県に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は27日、国と県に連帯して約2380万円を支払うよう命じた。岡田健裁判長は1審・熊本地裁が違法と判断した検察の公判対応だけでなく、県警の長時間にわたる任意の取り調べも違法と判断した。
事件を巡っては、宮田浩喜さん(2020年に87歳で死去)が任意の取り調べで殺害を「自白」し、逮捕された。シャツを「小刀の柄に巻き、犯行後に燃やした」と供述していたが、弁護団は97年、再審準備中に検察側が開示した証拠から、シャツの布片を発見。この布片が「自白」の信用性を揺るがし、2019年に再審無罪が確定した。
高裁判決は、逮捕前の計9日間約81時間にわたる任意取り調べについて、「犯人との予断に基づいて行われ、自白させることが目的だった」と認定。1審判決が一定程度あるとした嫌疑についても「裏付ける証拠はなかった」とし、取り調べは「任意捜査の限度を超える」として違法と判断した。
また、検察官が公益の代表者であることを踏まえ、「有罪に合理的な疑いを生じさせる証拠がある場合、明らかにした上で、起訴を取り消すか、無罪の論告をすべきだ」との考えを示した。
その上で、「自白」と矛盾するシャツの布片の存在などについて、有罪に合理的な疑いを生じさせる証拠だと把握できたとし、「公判などで明らかにすることや、起訴の取り消し、無罪論告を怠った」と非難。さらに「布片等の存在を明らかにせず、握りつぶした形となっており、検察官の行動には失望を禁じ得ない」と付言した。
今回の訴訟を巡る昨年3月の1審判決は、検察官が布片の存在を明らかにせず公判を継続したことを違法と判断し、国に約2380万円の賠償を命じた一方、県警の違法性は退けていた。
◆松橋事件=熊本県松橋町(現・宇城市)で1985年、男性が刃物で刺されて死亡しているのが見つかり、宮田浩喜さんが殺人容疑で逮捕、起訴された。宮田さんは1審途中で否認に転じたが、熊本地裁は86年、求刑通り懲役13年の判決を言い渡し、その後確定。弁護団は2012年に再審を請求し、19年に再審無罪が確定した。