【短編小説】罪の告白Ⅱ
私は、様々なものを殺めてきました。家の隅に糸を張り巡らす蜘蛛も、夏の香りに舞う蚊も、黒く塗りつぶすように殺めました。虫というものは脆く、人間を殺めるよりも罪悪感を感じませんでした。虫が巨大化したら、虎よりも、像よりも強いことは間違いない、とは思いました。蜻蛉(とんぼ)も巨大化すれば、手が強力であるように思います。でもいまは小さいから殺めやすい、とは思いました。遺伝子操作によって、蜻蛉を巨大化させることは、想像しにくいかもしれませんが、強力な存在、いいや、蚊の方が蜻蛉よりも強力な存在であるように思いました。しかし、私は虫たちに恐れることは認めたくありません。また、虫が遺伝子操作されることは認められない、そういう倫理観は大切にするのに、殺害ということの倫理観はまったく皆無であったのでした。虫が嗤ったら、とか、虫が口から喋ったとしたら、ということは倫理的に認められないものの、その虫たちの自由を奪う、殺害ということの倫理観は、てんで出来はしなかったのです。虫たちが強くなることや自由を認めないという私の思想を持つのは、決して私だけではないでしょう。いまの文化では、蝿を蝿叩きで潰したり、蚊を潰したりすることが一般的であります。幼い頃は、そのような殺害行為に違和感を覚えますが、大人になるにつれふつうの行為に思えてくるのです。私の殺害行為というものは、虫だけでなく人間にも及びました。人間の、何がいけなかったのでしょうか。心の中では、人間を殺めることは良くないこと、という発意もありましたが、私には人間が虫と同等に見えてくるのです。虫と人間は虐げられる生物である、という思想を持つ私は、人間の自由も認めませんでした。人間に特別な事柄を認めない私は、自分自身でさえも酷く傲慢であったと思います。反省という事柄がどこか希少価値があると発意し、自分自身の反省をするに至ります。


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