ガスライティングに加担してはいけない
とりわけ男性優位社会では、女性が不満を訴えたり、不平や被害を告発したりすると、「フェミニストは怒ってばかり」「自分で選んでその立場についたんでしょ?」「受け流せないなんて大人げない」などと、女性は被害を受けた側であるはずなのに、女性に責任があるような言い方をされることがたくさんあります。社会的なガスライティングを受けているのです。被害者非難を意味するヴィクティムブレーミングとガスライティングは、複合的に性加害の被害者を苦しめます。
痴漢に遭った女性が、「あなたがミニスカートを穿いていたからだ」「赤いドレスを着ていたからだ」と言われたり、レイプされた女性が「あなたが飲み会に参加したから悪いのだ」と責められたりする。私は幸いレイプなどの被害を受けたことはありませんが、日本で何度か痴漢に遭ったことがあります。朝の満員電車の中で初めてお尻を触られたのは小学校4年生のときで、誰にも訴えることはなかったけれど、その後一日中気持ち悪い思いを拭えなかったことを覚えています。
自分の意に沿わない性的なことを強いられたときは、耐え難い恐怖と不快感を味わい、そのうえやはりガスライティングの影響で、「何か私に問題があったんじゃないか」と思ってしまう人もいますし、あるいは「助けを求められなかった自分が情けない」と自分を責めてしまう人も少なくありません。
しかし、どんなに被害者が自責の念を抱いたとしても、性加害が起こるのは、加害者が加害したからであって、被害者がミニスカートを穿いていたり、飲み会に参加したりしたことが原因ではありません。ミニスカートを穿いていても飲み会に参加しても、性的な行為に同意したということではまったくありません。
ガスライティングの現場を目にすることがあったら、どうか加害に加担しないように、被害者をサポートできるような行動を取ってほしい。そうする人が増えることで、被害者だけでなく多くの人の心が楽になるのではないかと思います。
◇4月2日には、具体的に内田さんが住むボストンではどのように子どもたちに「同意」教育を行っているかなどを第3回・第4回でお伝えします。
『ジェンダー・ジャスティス』(幻冬舎)
たびたび発覚する性加害事件。それらは、特別な人間による例外的な出来事といえるのだろうか。問題の背景にあるのは、加害者の悪意・無自覚だけではなく、社会に埋め込まれた偏見、メディアが再生産する固定観念、声を上げない組織文化である、と解くのはハーバード大学医学部准教授で小児精神科医の内田舞さんだ。自身の経験と心と脳のメカニズムから問題の構造を解き明かす一冊。
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