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一時のスキャンダルで終わらせてはいけない

私は2023年10月に、FRaUwebでジャニー喜多川氏の性加害問題について前後編の記事を寄稿しました。私は旧ジャニーズタレントの努力を尊敬していますし、これからの活動も心から応援しています。だからこそ、性加害が常態化し、そのことを放置してきた事務所が信頼を取り戻すために、できることはたくさんあると提案をしました。隠蔽や保身を目的にするのではなく、本質的な変革を起こすことこそがタレントのキャリアを守ることに繋がると綴ったその記事の中から一文を抜粋します。

「例えば、今こそメディアとのつながりをふんだんに使って、性暴力を日本社会から撲滅するためのキャンペーンを企画するとか。自分たちの間違いも含めて、性被害がいかに人権を奪うものであるかを、若い世代にも理解できるかたちで、白書として出していったり、性暴力撲滅につながる法制度の改正を働きかけたり、性被害者への支援団体に寄付をしたり。単なるイメージ回復のためではなく、真剣に『性加害は許さないという姿勢』を、前に出るタレント任せではなく、運営者自身の行動で伝えることが大切でしょう」 

『所属タレントの心のケアも重要…精神科医が語るジャニーズ性加害問題の解決策』 より一部抜粋 ) 

現状、事務所の社名や運営は変わり、退所していった人たちも多くいます。被害者への賠償なども行われているようですが、その間、社会的な発信はほとんどなく、性暴力が社会からなくなるために事務所が起こしたアクションは残念ながらありませんでした。そして、タレントを起用するメディア業界全体も大きな変革を起こすことはありませんでした。

さらに、被害を告発する人に向けられた誹謗中傷は未だに絶えることがなく、その結果大変残念ながら自死されてしまった方もいらっしゃいました。何かに対して意見を言うということと、誰かを傷つけるためだけに無責任な言葉を投げる誹謗中傷は大きく異なります。

例えば、人の家族や住所といったプライバシーを明かすとか、殺害予告などの脅迫をするとか、その人に関して根拠のない嘘を広めるというのは「意見」ではありません。自由や権利や安全を奪う発言は、言論の自由が保障された社会の中でも「正義」ではありません。そういった誹謗中傷が発生した際には、強い影響力のあるメディアや芸能事務所が「誹謗中傷をやめよう」と本気のキャンペーンをしてくれたらどんなにありがたいことだろうと思いますが、ジャニーズ問題のときには、被害救済の責任者からはむしろそれに逆行するような発言もあり、残念でなりませんでした。

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今回発覚した問題についても、一時盛り上がるだけ盛り上げ、炎上するだけ炎上させて終わったのでは再び同じことは起きてしまうかもしれません。 

どうすれば性暴力の問題が再び起こらない社会になるのか、起きたときに加害者に対してどう対応することが必要なのか、社会構造としてそういうことが容認されないようにするためにはどうしたらいいのか、また、被害を受けた方に対して安全を守ってあげることができる社会をどうしたら作れるのか、といったことを話し合う必要があると感じます。単なる有名タレントや一放送局の「スキャンダル」や「ゴシップ」として取り上げるだけで終わらないでほしいと思うのです。

社会の中でシェアされる認知は、深く文化に根付き、一人ひとりの無意識の中に刻まれているために、その変化には時間がかかります。だからこそ、我々は意識的に、自分の無意識と向き合う必要があると思うのです。ニュースで耳にする出来事や言葉の根幹にはどのような無意識の偏見があるか、我々一人ひとりが気付く努力をしていくことで、多くの人の尊厳が守られる社会へと前進できると信じています。

内田舞さんの著書『ソーシャルジャスティス』(文藝春秋)。「キャンセル・カルチャー」について著書でも触れている。 

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