田中美津は与謝野晶子や
平塚らいてうと並んでいる
2015年の7月に、NHKのEテレ特集シリーズ『日本人は何をめざしてきたのか 未来への選択 第二回 男女共同参画社会 女たちは平等をめざす』が放送された。戦後70年の女性解放史を90分にまとめた証言ドキュメンタリー。まさに歴史を切り拓いてきた、たくさんの魅力的な先輩たちに貴重なお話をいただいたが、私が個人的に最も惹かれたのはウーマン・リブの「田中美津」だった。
「女性解放も大事だけれど、私の解放はもっと大事なのよ!」
昔話を聞くだけでなく、現在の彼女の活動を記録したい、そう強く思うようになって調べてみたら……『フェミニズムの名著50』(平凡社刊)で世界中から選ばれた50冊の中に、与謝野晶子や平塚らいてうと並んで、田中美津さんの『いのちの女たちへ』が選ばれている。日本から選ばれたのはたった5冊、しかもこのとき存命なのは田中さんだけ。私は思った。いま「田中美津」を記録しておくことは、生きている平塚らいてうを撮るようなものなのかも知れない。
いろいろな後押しが重なって2016年、小さなカメラを持って週に一回程度、田中さんの外出に同行し、そこで語られる言葉をすべて記録することから撮影が始まった。最初の頃は何がテーマなのか定まっておらず、構成台本もないまま、講演や集会など公の場での田中さんの発言だけでなく、途中休憩の喫茶店での会話から何から、とにかく面白いので回し続けていた。
それから、76歳になった今も現役の鍼灸師として治療を続ける日常。ウーマン・リブ時代の田中さんは1対多数の関わりで、その卓抜した言葉によって女たちを魅きつけた。しかし鍼灸師になってからは、1人に3~4時間かけて、患者と1対1で向き合う。
体がよくなっていくことで、心も自然と軽くなり、前向きに“私”を生きるように変わっていく女性たち。36年にもわたってこの仕事を続けているのは、なぜなのか?ここにも深掘りしてみたくなる興味深さがあった。
女にとっても男にとっても、本当の“私”を生きぬくことは、70年代より現代の方が、もしかしたらさらに難しくなっているのではないだろうか。同調圧力が強すぎて、ちょっとでもはみ出そうものならバッシングやイジメにあったりするのに、エネルギーを発散させられるような居場所はなく、内へ内へとひきこもってしまう。
ウーマン・リブから45年以上が経って、「田中美津」は今、どんなメッセージを残そうとしているのだろうか。そして、それは現代の私たちの問題につながっているはずだ。
……この予想が確信に変わるのは、撮り始めて2年後である。
◇第2回「「ウーマン・リブのカリスマ」田中美津が未婚の母になり鍼灸師になった背景」では、田中さんのもうひとつの一面を伝える。
ドキュメンタリー映画『この星は、私の星じゃない』
https://joji.uplink.co.jp/movie/2026/32586
2026年7月17日~23日までアップリンク吉祥寺にて再上映決定。予約はHPより。
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