不動産クラウドファンディングで運用中とされながら、売却されていた物件(撮影:楽待新聞編集部)

トラブルが相次ぐ「不動産クラウドファンディング」で、新たな問題が明らかになった。

その事業の1つである「victory fund」を運営するカチデベロップメント株式会社(東京都中央区)は、不動産特定共同事業の廃業を東京都に届け、受理された。7月中旬、突如出資者にも会社から通知が届いた。

さらに、「運用中」と表示する複数の案件について、対象物件を第三者に売却したにもかかわらず、速やかに出資者に通知していないことが判明した。ある出資者は「売却の連絡は大きく遅れ、出資金の償還(出資金の払い戻し)も行われていない」と話す。

カチデベロップメントは、不動産特定共同事業の廃業後も償還に向けて取り組むとしている。しかし、これらの案件に集まった約14億円の出資金がどのように管理されているのか、また償還の原資が確保されているのかは明らかになっていない。

相次ぐ「不動産クラファン」のトラブル

不動産クラウドファンディング、通称「不動産クラファン」。

個人投資家から集めた資金で事業者が物件を購入・運用し、賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組みだ。少額から不動産投資ができるとして注目を集めてきたが、一方で、事業者への行政処分や行政指導、償還の遅延、運営会社の破たんといった問題も相次いでいる。

2024年6月には「みんなで大家さん」の運営会社と販売会社が行政処分を受けたほか、「ダイムラーファンド」を運用していた事業者が破たんする事案も発生している。

こうした中、ファンドの運営状況に疑義が持ち上がったのが、カチデベロップメントが運営する「victory fund」。SNSなどで出資者から運用状況を懸念する声が上がっていた。

「運用中」のはずの5物件、登記簿では売却済み

カチデベロップメントは2021年3月にvictory fundの運用を開始。これまでに累計40件を超える案件を立ち上げ、投資家から資金を集めてきた。想定利回りが10%を超えるものも多い。

victory fundのサイトより引用

楽待編集部は6月、ウェブサイト上で「運用中」と表示されている案件の対象物件について登記簿(登記事項証明書)を取得し、所有者の状況を確認した。すると、このうち5件の物件が、すでに第三者に売却されていたことが分かった。

運用中に売却されていた対象物件

2025年8月に売却された第34号は、約11カ月にわたり「運用中」と表示され続けている。この売却について、出資者への説明など適切な対応は行われていたのだろうか。そこで、victory fundの複数の案件に出資してきた人物に話を聞いた。

出資者が訴える「契約違反」

出資者のAさんは、2020年ごろから不動産クラファンへの出資を始め、「期間が終われば元本と分配金が戻る手堅い投資ではないか」と感じ出資先を増やしていった。その中でファンドを組成したばかりのvictory fundに出会ったが、次第に「怪しさ」を感じるようになった。

「償還が近づくと新たなファンドが募集されるように感じたほか、案件の想定利回りが12%などと高くなったり、Amazonギフト券プレゼントまで付いたりするようになった。それが自転車操業のように見えていた」

Aさんは、物件が売却されていた案件の一部にも出資していたが、売却後もしばらく通知はなく、出資金の返還も行われていないという。

その後、2026年6月になって、第34号と第35号について売却済みであるとのメールが届いたという。契約締結前に交付された書面には、物件売却後は遅滞なく分配すると記載されているのに守られていないと憤る。

「第34・35号については、6月に突然『去年売却した』とメールを送ってきた。明確な契約違反をされ、お金も戻るのか不安だ。不動産クラファンではほかにもトラブルが起きていて、業界としてモラルがどうなのかと感じる」

カチデベロップメントから出資者に物件売却などを知らせるメール(2026年6月)

弁護士に聞く「運用中」表示の論点

不動産クラファンの運営ルールを定めた不動産特定共同事業法(不特法)では、勧誘時などに事実と異なる説明をすることを禁じる規定のほか、広告表示に関する規制、財産の分別管理義務、財産管理状況の説明・報告義務などが定められている。

違反の内容や程度、情状によっては、指示や業務停止命令、許可の取り消しなどの行政処分の対象となり得る。

今回のvictory fundを巡る状況を、どのように整理できるのか。不動産法務に詳しい関口郷思弁護士に、あくまで一般的な見解を聞いた。

「契約上、第三者に対象不動産を譲渡した場合には遅滞なく利益の分配を行うことになっているのであれば、清算・分配の手続きをせずに漫然と『運用中』と表示し続けるのは、当然投資家との間での契約違反となる」

売却されていた運用中案件の対象物件(撮影:楽待新聞編集部)

一方で、関口弁護士は、不特法上の違反に当たるかについては、資金の管理状況などが分からないため、現時点では判断できないという。

「もし売却代金が他の商品の償還や、別の不動産の購入代金に充てられていれば、『分別管理義務違反』になります。ただし、現段階で外部から確認できるのは、対象の不動産が売却されたという事実までであり、それを超えた判断はできない」

突如、出資者に届いた「事業廃業」の知らせ

こうした中、7月17日、カチデベロップメントから出資者宛てにメールが届いた。それによると、7月3日付で、東京都に不動産特定共同事業の廃業届を提出し、7月7日に受理されたというのだ。

届け出の理由については、「財産的要件、ファンド業務運営および人的構成が法的な要件を満たすことができないと判断したため」と説明されている。

カチデベロップメントから出資者に「廃業」を知らせるメール(2026年7月)

また、同社は、既存ファンドに関する業務を終える目的の範囲で、廃業しても会社が消滅するわけではなく、いわゆる「みなし事業者」として既存ファンドの分配・償還が終わるまで事業者としての義務を負い続ける。

新規ファンドの募集は行えなくなるものの、東京都の指導・監督のもと、償還処理が結了するまで事業を継続するという。しかし、いつ、どのような形で償還処理が終わるのかは不透明なままだ。

楽待編集部は6月下旬、カチデベロップメントに対し、売却済みの物件を「運用中」と表示し続けていた理由や、元本返還の予定などを尋ねる質問状を送付した。7月上旬までの期限を設け回答を求めたが、回答を得ることはできなかった。

その後、7月17日の通知を受けて、それ以降改めて電話での取材を試みたが、回答は得られなかった

出資者のAさんは「連絡の少なさなど違和感を抱きながらも出資を続けたことを後悔している。最終責任はこちらにあるが、不特法に基づく許可審査を行った行政にも一定の責任はあるのではないか」と話した。

そのうえで、「不動産クラファン自体は、価値の低い不動産を蘇らせることに有効なはずだが、私自身はもう今後出資するつもりはない」と語った。

不動産特定共同事業者の許可・指導・監督を担う東京都に取材すると、都は今年4月以降、victory fundに関する問い合わせが複数寄せられたことを受け、同社に状況の改善を図るよう口頭での指導を行ったという。

また、カチデベロップメントの廃業届を受理しており、今後も法令に基づいて対応するが、詳細については答えられないとしている。

出資者は何ができるのか

投資家がいま取れる対応について、関口弁護士は、まず、契約や不特法に基づき、当該ファンドの財産がどのように管理されているかについて、事業者に説明を求めることが先決だという。そのうえで、出資者が検討できる対応としては以下が挙げられる。

・運営会社への財産管理状況の報告請求(不特法上の権利)
・東京都不動産業課への相談・情報提供
・弁護士への相談(仮差押えや、訴訟などの法的手段の検討)
・関連書面(交付書面、重要事項説明書、通知類)の保全

登記簿は誰でも取得でき、対象物件の所在地は契約時の交付書面などで確認できるため、出資中のファンドの物件がいま誰の所有になっているかは、出資者自身でも確かめることができる。

業界全体の構造的なリスクについて、関口弁護士は一般論としてこう指摘する。

「後から募集したファンドへの出資者のお金で、過去の商品の出資者への償還を行う、いわゆる自転車操業的な対応が続いてしまうケースは、これまでも発生している。そのような徴候が見られた場合には非常に危険な状況なので、早期の対応が必要となる」

相次ぐトラブルを受けて、政府も対応を進めている。投資家の保護に向けて根拠法となる不特法施行規則の改正を進め、報道によれば、想定賃料といった利回りの根拠となる情報の開示を、今年9月にも義務付ける方針だ。

今回のvictory fundの問題は、出資者が登記簿を確認しなければ気づくことができなかった。「運用中」という表示を信じていれば、出資金の行方が見えない。投資家の自衛が求められる一方で、規制の実効性もまた問われている。

(楽待新聞編集部)