ネイティブ講師=良い授業」——その思い込みが、スクールを止めている
あるスクールオーナーさんに、こんなことを言われたことがあります。
「うちはネイティブの先生がいるので、授業の質は問題ないと思っています。」
そのとき、私はこう聞き返しました。
「“良い先生”って、どういう基準で判断されていますか?」
少し考えたあと、返ってきた答えは——
・ネイティブだからです
・英語が流暢だから
・子どもたちも楽しそうなので
このやり取り、実はこれまで何度も経験しています。
でも——ここに、ひとつ大きな落とし穴があります。
それだけでは、授業の質は証明できません。
一度、立ち止まって考えたい現実
正直、ここは一度立ち止まって考えたいポイントです。
EF(Education First)が毎年発表している英語能力指数(EF EPI)によると、日本は2024年、116カ国中92位。しかも、11年連続で順位を下げています。
さらに、18〜25歳の若い世代に限ると、スコアはより低い傾向にあります。
つまり、スクールに通っているはずの世代の英語力が、最も伸び悩んでいるということです。
「ネイティブ講師がいるから安心」という感覚と、この現実。ここには、見過ごせないズレがあります。
これだけの時間とお金をかけているのに、なぜ結果が出ないのか。その答えの一部は、実は現場にあります。
「話せる」と「教えられる」は別のスキル
英語が話せることと、英語を教えられることは、まったく別の能力です。
文部科学省の調査(2014年)では、小学校で外国語活動を担当する教員の83.2%が、英語の指導資格を持っていないことが分かっています。
これは日本人教員の話ですが、実は外国人講師でも似たような状況が見られます。
Cambridge Core(2025年)の研究レビューでは、日本のALT(外国語指導助手)の多くが、十分な教員研修を受けないまま現場に立っている現状が指摘されています。
「英語を話せる人」として採用されても、「英語を教えられる人」として育てる仕組みがない。
これは、構造的な問題です。
この構造のままでは、どれだけ優秀な講師を採用しても、授業の質は安定しません。
日本人講師の方が優れているケースもある
ここで、少しだけ現場の話をさせてください。
これまで、日本人で英語を教えている先生を何人も見てきましたし、実際にトレーニングもしてきました。
正直に言うと、
・授業設計
・進行の組み立て
・子どもの反応の引き出し方
・教室全体の空気の読み方
こうした点においては、ネイティブ講師よりも高いレベルで授業を行っている日本人講師も少なくありません。
だからこそ、私はスクールオーナーの方にいつもお伝えしています。
「人気のネイティブ講師だけに依存する形で、ビジネスを作らないでください。」
それは、長期的に見て安定しないモデルです。
「楽しい授業」なのに、伸びない理由
実際の現場でも、同じことが起きています。
以前関わったあるスクールでは、ネイティブ講師が明るく、楽しい授業をしていました。
子どもたちも毎回「楽しかった!」と笑顔で帰っていく。
保護者からの印象も悪くない。
でも、半年後。
簡単な英語の質問に、ほとんどの子どもが答えられませんでした。
この状況、思い当たる節はないでしょうか。
なぜ、こうなるのか
母語として英語を使ってきた人は、自分がどうやって英語を身につけたかを、論理的に説明できないことが多いです。
いわば、「自然に使えるようになった」感覚に近い。
一方で、子どもに英語を教えるには、
・どこでつまずくのか
・どの順番で教えるべきか
・どうすれば定着するのか
こうした“設計”の視点が必要になります。
これは、ネイティブかどうかとは関係のない話です。
「楽しい」は、本当に成果の証拠か?
保護者からよく聞く言葉があります。
「先生は優しくて、子どもも楽しんでいます。」
とても嬉しいフィードバックです。
ただ、少しだけ注意も必要です。
東京大学の研究(Yazawa, 2017)では、日本の高校生がネイティブ講師に感じる価値の多くが、「楽しさ」や「本物らしさ」といった感情的な要素であることが示されています。
つまり、「楽しい=成果が出ている」と無意識に判断してしまっている可能性があります。
保護者は、静かに離れていく
そして数ヶ月後。
「楽しかったけど、英語はあまり話せるようにならなかった」
そう感じた保護者は、静かにスクールを離れていきます。
オーナーからすると、「なぜ辞めたのか分からない」。
でも実際には、理由はシンプルです。
授業が“設計されていない”からです。
ネイティブ講師が悪いわけではない
ここで誤解してほしくないのですが、ネイティブ講師が悪いと言っているわけではありません。
自然な発音やリアルな表現、文化的なニュアンス。
これらはネイティブ講師ならではの価値です。
問題は、「ネイティブであること」だけを基準にしてしまっている点です。
面接で、本当に見るべきポイント
例えば、面接でこんな質問をしていますか?
・なぜこのアクティビティを、この順番で行うのか
・生徒が理解できていないとき、どう対応するのか
・1レッスンで、何を“できるようにする”のか
これに答えられない場合、どれだけ流暢でも、授業は設計されていません。
これから選ばれるスクールの条件
オーナーとして、そう考えてしまうのは無理もないと思います。
ただ、これからの時代は変わってきています。
日本の英語教育が長期的に伸び悩む中で、保護者の目は確実に変わっています。
「楽しそう」だけでは、選ばれない時代です。
求められているのは、“変化が見える授業”です。
・英語で話しかけられて、少しずつ返せるようになった
・先生の指示を理解して動けるようになった
こうした小さな成長の積み重ねが、信頼につながります。
最後に
最後に、一つだけ確認してみてください。
あなたのスクールの講師は、こう説明できますか?
「この子は今ここにいる。
3ヶ月後には、ここまでできるようになる。
そのために、この順番でレッスンを設計している。」
ネイティブかどうかより、大切なことがあります。
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Roger / askroger.jp
放課後・週末スクール・インターナショナルスクール・幼稚園の教育設計を支援しています。
参考:EF EPI 2024 / 文部科学省調査 2014 / Yazawa, Y. 東京大学 2017 / Cambridge Core ELT Review 2025


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