私は静かにお昼ご飯が食べたいだけやのに
タイトル通りのお話です。
今回は治と北さんです。(…北さん出演率高いな。)
空前のハイキューブーム。抜け出せません。
頑張って関西弁にしてみましたが、意識しすぎて変かもです。悪しからず。
続きました→novel/20873039
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「うまそうな弁当やなぁ」
昼休み開始のチャイムと共にお弁当箱を広げると、頭上から声が聞こえた。
玉子焼きを迎え入れるための大口を開けながら上を向くと、そこには私のお弁当を一心に見つめるクラスメイト・宮治の姿があった。
「うまそうやない、うまいんや」
玉子焼きを口に含み、数回噛んでから白米を迎え入れる。ん~~~~~~~~まいっ!至福の時だ。
「うまそうに食うなぁ」
「せやから、“うまそう”やなくて、“うまい”んやって。宮も食べる?」
「ええの?」
「特別やで」
玉子焼きを箸でつまんで持ち上げると、宮はその大きな背をかがめてパクリと食べた。
「うっまぁ。出汁巻きやん」
「うまいやろ。今日のはちゃーんと鰹節から出汁とってんねん」
「お母ちゃん料理上手やな」
「なにゆーとんねん、うちが作ったんよ」
「ほんまに?これ全部?」
「せやで」
宮は私のお弁当をキラキラした目で見つめた。今日のおかずは玉子焼き、エビとブロッコリーのマヨ和え、ウインナーだ。
「すごいなぁ」
「すごないで。自分が食べたいもん作っとるだけやもん」
「お母ちゃんは作らんの?」
宮は私の前の席に座り、まるで餌を待つ雛鳥のように「あー」っと口を開けた。
「うち両親共働きでな、お母ちゃん帰ってくるの遅いんよ。朝はギリギリまで寝ててほしいから、朝ごはんとお弁当は自分で作っとる」
マヨ和えを宮の口に運び、続いてウインナーを自分の口に運ぶ。このままやったらおかず足りなくなるかもしれん…。そんな時のためにふりかけを持ってきとる私は天才やな!白米だけでもうまいけど、ふりかけがあるともっとうまい。
巾着からふりかけを取り出し、サラサラとご飯にかける。ちなみにこのふりかけは父の仙台出張土産でもらった牛タンふりかけ。牛タンを食べている気分になるかと言われれば「?」という感じやけど、普通にうまい。
パクッと食べてその美味しさを噛みしめていると、目の前の雛鳥がまた口を開けている。いや、雛鳥とは程遠いほど大きいんやけどね。
しゃーなしに牛タンふりかけご飯も口に運んであげると、ニコニコ笑いながら咀嚼していた。マジの雛鳥やん。
結局お弁当の半分は宮に食べられてしもた。
足りなくもないけどもうちょっと食べたいなと思っていると、宮がお昼に食べる予定やったパンを4つ持ってきて「1つ選んでええよ」と言うので、カレーパン・メンチカツサンド・ジャムパン・あんパンの中からジャムパンをもらった。
「お弁当やないんやな」というと、「弁当は2時間目終わってから食った」と言われた。さすが運動部。
私がお弁当を食べ終わると、宮はパン3つを持ちながら「ごちそうさん」と言って教室を出て行った。
午後の授業は古文か…眠くなるなーと思いながら教科書の準備をしていると、友人2名がものすごい勢いで私の席に駆け寄ってきた。
「ちょっとあんた何しとんの!?」
「何って…何が?」
「さっきの宮君とのやり取り!」
「さっきの…?」
「お弁当!一緒に食べとったやん!」
「しかもあーんしとったやん!」
「いつからそんな関係になったん!!!」
怒涛の質問に若干めまいがした。そういえば、宮はバレー部の人気者やったか。
私は小さい頃から他人への関心が薄いらしい。
なんとか君がかっこいいとか、なんとかちゃんが可愛いとか、あのグループは仲が悪いとか、正直よくわからへん。自分で言うのもなんやけど色恋事にも疎く、彼氏がおったことはないし、ほしいと思ったこともない。
美味しいものを食べとるときが一番幸せや。私の食事を邪魔するやつは許さへん。
「あんなん雛鳥にエサやっとるのと同じやろ。関係なんてなんもあらへん」
私がそう言うと、友人2人は疑いの目を向けつつも私の性格を知っとるから、そこで引き下がった。
次の日から、宮は昼休みになると私の席にやってくるようになった。
よほど私のお弁当が気に入ったらしい。作ってる身ぃとしては嬉しいけど、正直周囲からの視線が痛い。
宮はバレー部の人気者で、学年…いや校内外問わずモテる。そんな男が、特定の女子と毎日お昼食べとるって話がいつの間にか噂になって、毎日色んな人が教室まで見に来るようになった。
「あの人やない?」
「えー思ってたより普通の人」
「胃袋掴むとか卑怯やわ~」
普通の何が悪いねん!!!
人のことジロジロ見んな!!!
そんな生活が3日続き、私はついに限界を迎えた。
昼休み開始のチャイムが鳴ると同時にお弁当を持って教室を飛び出す。視界の端で宮が驚いた顔しとったけど、気にしてなんかおられへん。
美味しいものを食べとるときに一番幸せを感じる私にとって、食事を邪魔されるというのは許しがたい行為だ。誰かと食べるのが嫌いなわけやない。むしろ、美味しいものを誰かと一緒に食べるんは好きや。せやけど、遠くから知らん人に指差されながら食べるんは嫌や。
どこか静かな場所でお弁当が食べたい。そんな思いで導き出したのは中庭やった。今日は天気もええから中庭でご飯を食べようと考える人は他にもおったけど、ここにはベンチが複数あるから、1人の空間を確保できる。木陰を選べば人の目も気にならへん。
目星を付けていたベンチに行くと、すでにお弁当箱を広げてる先客がおった。クールそうな男の人。ダッシュで来たのに負けたってことは、3年生やろか。(うちの高校は1年生4階、2年生3階、3年生2階となっている)
しゃーないから他のベンチに座ろうかと辺りを見回すと、すでに椅子取り合戦が始まっていて、空いているベンチはなかった。
どないしよ。芝生やし、べつにベンチやなくてもええねんけど。
「ここ、座るか?」
うーんと悩んでいると、先に座っていた男の人…クールさんがそう言った。
「…ええんですか?」
「ええよ」
クールさんが端に寄ったので、私は反対の端に寄るように座った。
膝の上にお弁当箱を置いて、「いただきます」と手を合わせてから蓋を開ける。今日のおかずはゆで玉子とミニトマト。シンプルやって?ふっふっふっ。今日のメインはこれやない。お弁当箱と一緒に持ってきた保温ポットを開けると、そこからは生姜のええ匂い…。
「豚汁か?」
ポットから漂うええ匂いに幸せを噛みしめとると、クールさんがこっちを見ながらそう言った。
「あ…はい」
「すごいな。弁当に豚汁持ってくるやなんて」
「昨日、生姜が安くって…」
「ええな。うまそうな匂いや」
自分の料理が褒められるのは、素直に嬉しい。クールさんのお弁当を見ると、焼き魚や煮物といった和食が並んどって、豚汁にはピッタリやった。
「あの、よかったら少しいかがですか?」
「ええの?」
「はい。結構自信作やから、他の人に飲んでほしい気もしとって」
「せやったら…これにもろてもええやろか」
差し出されたのは紙コップやった。なんで紙コップ持っとるん??
そんな疑問は口にせず、紙コップに具と汁を注いで渡すと、一口飲んでから「うまいなぁ」と呟いた。
「ありがとうございます」
「ほんまうまい。料理上手やな」
「そんなんとちゃいます。自分が食べたいもん作っとるだけです」
「それが作れる人は料理上手なんよ。俺なんて、食べたいと思っても作られへんよ」
「お弁当作ってるのはお母さんですか?」
「いや、これはばーちゃんが作ってくれてん」
「おばあちゃんですか。煮物めっちゃ美味しそう」
「食べるか?」
「ええんですか?」
「ええよ。豚汁のお礼や」
そう言って、煮物を私のお弁当に置いてくれた。
「うわ、めっちゃ美味しい」
「せやろ」
「なんやろこの味…昆布出汁の味が濃いけど、しょっぱいって意味やなくて、染みとるって感じ。どうやったらこんなに染み込むんやろ」
「そらばあちゃんに聞かなわからんな」
「え~~~聞いてきてくださいよ」
「ははっ」
クールさんは笑うと美人さんやった。
「明日もここに来るんやったら、聞いといたる」
「来ます!お願いします!」
その後お互い自己紹介をした。
3年生の北さん。とってもええ人やった。
次の日
昨日と同じベンチに行く予定やったのに、残念ながら外は雨。どないしよ。北さんは雨の中であそこに行くとは思えへんけど、約束したし。
まぁお昼にはやむかもしれんし、様子見やな。
そんな私の願いは叶わず、お昼になっても雨は強いままやった。北さんのクラスは聞いたけど、3年の教室に行くのはちょっと勇気いるな…。
「今日の弁当なに?」
うーんと悩んでいると、いつものように宮がやって来た。
「唐揚げと酢の物やけど…やらんで」
「なんでやねん。つーかなんで昨日どっか行ったん?」
「関係ないやん」
「関係ある。大きいポットみたいの持ってたやんか。中身なんやったん?」
「豚汁です~」
「はぁ?なんでそんな美味そうなもん独り占めするん?」
「一人ちゃうわ。決めつけんといて」
「なんやそれ。誰と食うたんや」
「せやから宮には関係ないって言うとるやろ」
「関係あるわ。俺はお前が作った飯が食いたいねん」
宮がそう口にした瞬間、教室の空気が凍った。そして誰かが「プロポーズみたいやな」と言い、私と宮以外が頷いた。
こんなんやったらまた知らん女子に睨まれるやん!最悪や!
机に突っ伏していると、優しく肩を叩かれた。
「なぁ、あんたにお客さん来とるで」
友人が指さした先を見ると、出入口に北さんが立っとった。
「北さん!」
「すまんな。雨やったから教室まで来てもうた」
出入口に行くと、1枚のメモ紙が差し出された。
「昨日言うとったやつ。ばあちゃんがレシピくれたわ」
「わぁ!ありがとうございます」
「作り方聞いてきた子がおるゆうたら、ばあちゃんも喜んどったわ」
「それはよかったです」
メモ紙を受け取り、中を拝見する。ふむふむ。圧力鍋じゃなくても味を染み込ませることはできるのか。
「なんで北さんがこいつに会いに来とるんです?」
頭に重みを感じると同時に、頭上から声がした。私の頭頂部に己の腕を置く男、宮治。自分がデカいからって他人の頭を腕置きにしたらあかんでって、幼稚園で習わんかったんか???
「なんや、治と同じクラスやったんか」
「え、北さん宮と知り合いなんですか?」
「おん、俺もバレー部や」
まさかの北さんバレー部発言。顔はめっちゃ文系なのに、ガタイいいなと思たわ。
「治、人の頭に腕置いたらあかんで。痛がってるやん」
「…すんません」
おぉ!宮がすんなり言うこと聞いた!北さんすごい!
「2人はなんで知り合いなんですか?」
「俺らはそうやな…お昼ご飯仲間やろか」
「なんやそれ。俺かてこいつと昼飯仲間ですわ」
な、なんか静かな火花が見える。
「こいつが作った玉子焼き食うたことあります?めっちゃうまいんですよ」
「この子が作った豚汁飲んだことあるか?めっちゃうまいで」
「豚汁!!北さんと飲んだんか!」
「玉子焼き食べてみたいわ。今度作ってな」
う、うるさい。
私は静かにお昼ご飯が食べたいだけやのに!!!
続きは角名が撮ってたけど、間違って消しちゃったってさ。