少し前、こんな記事が配信された。
「多数決で変えてはいけない伝統がある」旧宮家「男系男子」養子として迎え入れる意味 皇室典範改正
https://news.yahoo.co.jp/articles/2ed41596cf070a8bcb13893d0d05c833dc7768cd?page=1
『ABEMA Prime』に出演した倉山の発言要旨である。
相変わらずの「先例バカ」だ。
しかも歴史を時系列だけでみて因果関係を抽出し、それが真実だと思い込む。
本人は知識を披瀝しているつもりかもしれないが、迷信の域を出ない。
たとえば冒頭、倉山は皇室の伝統を語るうえで3つのポイントがあると言っている。
1)悠仁さまは神武天皇から74世目(系譜を示す)、これをどうやって続けるのかを先例に基づいて議論すること。
2)皇位継承が途絶えそうになったときの例として継体天皇の先例があること。なお女性は結婚したら皇室に入れるが、一般男性は神武天皇より前の神話の時代から1人も入っていない。
3)旧宮家の経緯。こちらは原文ママで紹介。
「御花園天皇が弟の貞成親王の子孫に対し『未来永劫、皇室に残れ』という直命を下した」
まず1)について。
神武天皇から続く系譜とは、おそらく自身の著書で掲載した「正統(しょうとう)」とやらの図だろう。
「万世一系とは」などと銘打ってこの系譜を載せているのだが、「王」「親王」「皇子」などが「正統」に連なっており、単にあみだくじのように悠仁さまから神武天皇まで男の血統を辿っていったら辿れました、というだけの図に過ぎない。
だから何?としか言いようがない。欠史八代も何の疑いもなく「正統」に入れているのが笑えるレベル。歴史学なんぞ完全スルーの所業。
あのね、そもそも課題とされているのは「皇位継承」なんだよ。
誰から誰に皇位が継承されたか、なんだよ。
そこには女系男子も、男系女子も、女系女子もいるんだよ。
古代は合議制、双系。以上。
男の血だけでつなげるために、血まなこになってあみだくじを創作したところで、歴史観のないバカしか騙せない。
次に2)について。
継体天皇の即位は、手白香皇女との婚姻が前提である。手白香皇女の父は仁賢天皇であり、母は雄略天皇の皇女・春日大娘皇女。これは、傍系が正統性を担保するための手段。つまり「女系の血」も重視されていた。だからこそ手白香皇女が産んだ子(欽明天皇)が当時は正統な皇位継承者とされていたのだ。双系たる所以。
以下は、河内春人著『継体天皇』から。
「五世紀の倭王権は、その内部に複数の王族集団が並存していた。その競合のなかで大王に相応しい人物を安定的に輩出できるようにするシステムだった。継体天皇の北陸集団もその一つであり、その意味で継体天皇の即位は五世紀の論理に則っていた」
わかるかな、倉山クン。「競合の中で相応しい人物」を選んでいたんですよ、当時は。
「父の父の父の父まで遡り、その子孫である継体天皇に継いでもらった」などという単純な話ではない。
継体天皇という「先例」は、複数の集団の中から選出される実力の持ち主であったこと、かつ男系の血が重視されていた証ではなく、女系の血も重視されていたということを示している。
なお、「女性は結婚したら皇室に入れる」という発言は、女尊男卑のような印象操作。
前近代では婚姻による身分の変更はない。一般女性が男性皇族との婚姻により皇族となったのは明治典範からだ。家父長制が反映されただけの話だ。
それより、明治典範はこれまで全く先例のないことをやってのけたのだ!!!
先例を重んじる倉山なら、怒り狂って然るべきではないか。ご都合主義か。
最後、3)について。
御花園天皇→こちらはライターの誤字?
弟の貞成親王→おかしいね、貞成親王は後花園天皇の父だよ。弟は貞常親王。
倉山は、後花園天皇が弟の子孫(=伏見宮家)に『未来永劫、皇室に残れ』という直命を下したのだから、旧宮家の男系男子に正統性があると言わんばかり。
先例バカに中世バカが加わる、タチが悪い。
600年前の話をそっくりそのまま持ってこられるなら、たった85年前、「進め、一億火の玉だ!」と謳った大政翼賛会のスローガンもそのまま持ってこられるのか?
「いやいや、時代が違いますから」で終わる話だろう。
連綿と続く歴史の中で皇室が何を大事にしてきたか、そのエートスを無視して先例だけが伝統だなんて、歴史を知らない、学んでいないと言っているに等しい。
さらに、後半では、
・養子は、過酷な運命を辿る「茨の道」であること(←だったらなぜそんな人権無視の所業をするのか)
・法律を作ったうえでないと頼めないこと(←立法事実がないのに立法すること自体がおかしい)
・過去の女性天皇は「結論から言うと全員不幸(=独身、政治的混乱の中で翻弄された)」だったこと(←ふざけんな。男尊女卑のテンプレ発想。お前が女性天皇の幸不幸を決めつけるなんぞ100000000年早いわ!)
などと述べている。
最後はこれ。
「続いてきた伝統を今の一時の多数決だけで決めて、後で取り返しがつかなくなってもいいのかという話だ」
取り返しがつかない事態ってナンデスカ?
愛子天皇になったら、取り返しのつかない事態になるんですか?
なんで??
国民統合の象徴に女はなれないとハッキリ言ったらいいじゃないの。
倉山はもっともらしい知識(正しくは、ボクちゃんが信じる思い込み)を披瀝して「自分だけがわかっているふう」を装うが、その実、都合のよい解釈と対症療法的なこじつけの羅列に過ぎない。
本人が「語らないこと」「語れないこと」にこそ、真実がある。