「洗脳されていた」 被害女性が問う学校の安全管理体制 小学館漫画原作者“性加害”問題~「こども性暴力防止法施行」まで半年
■“拒否すれば居場所失う”…「エントラップメント型性加害」
こうした上下関係を悪用した性加害は、「エントラップメント(わなにはめる)型」とも呼ばれる。エントラップメント型の性加害では、まず加害者が日常生活や会話の中で自分の権威を高めたり相手をおとしめたりする言動によって、心理的に加害者に逆らえない状態に相手を追い込んでいく。そうして築かれた上下関係の中で性的な要求をおこない、被害者はもし要求を断れば、評価を落とされるのではないか、学校や職場で居場所を奪われるのではないかと思ってしまい、加害者は被害者のそうした弱みにつけこんで性加害を行うという特徴がある。 Aさんもこうした関係性の中で、当時は「拒否する」という選択肢がそもそもなかったと訴える。 「私には、相手を拒否した後も安全に学校生活を続けられるという条件がありませんでした。私は不登校を経験しており、その学校は、その後にようやく通うことのできた場所でした。また、母親が私のために選んでくれた学校でもありました。私は、その学校に通い、母親に今度こそ『ちゃんとした姿』を見せたいと思っていました。絵を学び、その先で美術大学へ進みたいという希望もありました。そのため、相手を拒否することは、一つの要求を断ることではありませんでした。学校での居場所、絵を学ぶ機会、母親からの信頼、将来への希望を失うことのように感じていました。相手の機嫌を損ねれば、学校に行きづらくなるのではないか、自分の方が問題のある人物として扱われるのではないかと恐れていました。最初に断りたいと感じた場面は、相手の車内でした。私は、自分の意思だけでその場を離れることができず、相手の機嫌を損ねないような遠回しの拒否しかできませんでした。その場を安全にやり過ごしたい、早く帰りたい、学校にいられなくなることだけは避けたいという気持ちが強くありました」 さらに、Aさんは男性から、行為について、「Aさんが望んだことだった、Aさんにも責任があると繰り返し説明された」という。 「私自身の実感としては、『洗脳されていた』という表現が近いです。強い苦しみの中で、相手に心理的に依存するようになりました。その結果、大人であり講師である相手の行為ではなく、明確に拒否できなかった私の方に責任があると思わされました。自由な同意が成立するためには、何を求められているのかを理解する知識、拒否しても安全であること、その場から自由に離れられること、拒否した後も不利益を受けないこと、守ってくれる大人がいることが必要です。当時の私には、そのいずれもありませんでした」