「事務局長のパワハラ」で揺れる「世界最大の人権NGO」で何が起きたのか…実名告発した女性職員が明かす“恐怖の罵声”と“別の犠牲者”
世界最大の国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」の日本法人(東京都千代田区)が、事務局長(当時)によるパワーハラスメント問題で揺れている。今年4月にパワハラ被害を告発したのは、職員の大福(おおふく)美穂さん(42)。適応障害を発症して休職に追い込まれ、ハラスメント調査や職場改善を訴えても聞き入れられないとして、実名告発に踏み切った。法人は7月6日、これまでの対応の遅れを認めて謝罪する声明を発表したが、労働組合は「課題が残されている」として対決姿勢を崩していない。世界中の人権問題に目を光らせるアムネスティで、なぜ職員への人権侵害が放置されたのか。大福さんに組織の内情を聞いた。 【画像】「事実の隠蔽だ…」アムネスティ職員が思わず残した“魚拓” * * * 「人生を懸けて仕事に打ち込んできたのに、事務局長に全否定された気持ちになりました」 2021年からアムネスティ日本の事務局で勤務する大福さんは、休みの日も人権問題についての本を読んで知識を深め、志をもって働いてきた。だが25年1月、公募によって新事務局長にA氏が就任すると、不適切な業務指示で職場を混乱させる、急に不機嫌になる、といったA氏の問題行動に苦しむようになったという。 「事務局長の指示に対して意見すると、『わかっていない』『説明不足だ』などとほかの職員たちの前で罵倒されました。仕事ができない職員として扱われ、理不尽に責められるストレスで、自分で前髪を抜いてしまう抜毛症を発症しました」 大福さんは同年5月末、ハラスメント相談員を務める理事にA氏からの被害を訴え、理事長による全職員へのヒアリングが行われた。しかし、そこで挙がった「指示が思いつき」「高圧的な態度をとらないでほしい」といった苦情がA氏本人に伝えられたことで、職場の雰囲気はさらにギスギスとした気まずいものになったようだ。
■恐怖と混乱で体がこわばり、思考も停止… そして9月9日、大福さんにとって決定的な出来事が起きる。留学先から久々に戻った元アルバイトスタッフの相談に乗りつつ談笑していたところ、A氏から突然「大福! 大福!」と呼び捨てで怒鳴られたのだ。 「私たちが楽しそうに話していたのが気に食わなかったのか、『は? 何? なんなんだよ?』『だったら別室でやれよ!』と大声で詰め寄られました。恐怖と混乱で体がこわばり、思考も停止し、あのとき私のなかで限界を迎えたと思います」 翌日から、大福さんは頭痛や目まいに襲われるようになった。常に頭がぼーっとして、メールの文面を見ても何が書いてあるのか理解できない。病院に行くと適応障害と診断され、やむなく休職した。休職中も、理事会や組織内のハラスメント防止委員会に対し、第三者によるハラスメント調査と職場環境の改善を求め続けてきたが、「対応中」との回答が来るばかりで具体的な進展はなかった。 「こんなに声を上げているのに、どうして届かないの……?」 A氏から受けた心の傷に加え、献身してきた組織への不信感や絶望感が、心身をむしばんだ。体を起こすのもしんどく、ベッドで寝たきりの生活が続くようになった。 大福さんがいなくなった事務局では、次なる“犠牲者”も生まれていた。A氏は60代の男性職員に対し、大福さんが担当していた会費・寄付金の請求業務を引き継ぐよう命じた。決済システムに不慣れだった男性職員は不安を吐露し、二重引き落としのミスも起きたが、A氏は「あなたの仕事です」と業務遂行を求め続けた。男性職員はプレッシャーに耐え切れず適応障害を発症し、2週間休職することとなった。 労働組合によると、A氏からの無理難題や叱責によって職場環境は悪化の一途をたどり、サービス残業が110時間を超える職員や、耐えかねて退職する職員もいた。今年2~3月には、ついに会費・寄付金の引き落とし業務が停止。しかし、法人ウェブサイトでは「自動化された決済エコシステムの構築」のための「一時的な停滞」として発表された。