【短編小説】利己的な欲求──お嬢様と執事の非日常的世界
とんだ化け物がやってきた、と執事は内心を定かにさせないように俯く。スギル国王が退位して、娘の麗華様が上位即位することになったのである。執事は、この即位劇が起きることは薄々気付いていた。麗華様が国王のひとり娘である以上、この即位は不可抗力であったのだと誰よりも分かっていた。麗華は、「なんか問題ある?」と執事に詰め寄った。執事は、「いいえ、お嬢様が国王になられたことは、大変おめでたいことであります」と丁寧に応じた。麗華は、まだ国王になったことを実感できないでいた。麗華は自身が偉いということについてまだ判然としなかった。国王になったことがどれほど重いことなのか、これから他国の長と関わる未来の重みを考えても漠然としたままであった。麗華は、「あんた、執事なんだから私に応援してくれるんだよね」と切れの良い調子で言った。「その通りです。スギル元国王の遺言に、麗華様を支えるように指示されています」とまた丁寧に応じた。麗華は、「じゃあ、私の欲求、聞いてくれる?」と言った。「ええ、何かおありでしょうか」と応えた。麗華は、「綺麗なドレスを一緒に作って欲しい」その言葉に愕いた執事は、「……分かりました、試着室に行ってみます」と応じた。ああ、待って……と麗華は言った。「何でしょうか」と応えると、「空を飛びたいから、大きなドローンが欲しい」とややはっきり言った。
ドローンも手配してきます、と執事は言って、仕事が増えたと思った。執事というのは、大変な職業なのだ。


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