とある聖者の余暇───読書の秋
田舎のような、都会のような地域に聖者は佇んでいた。この聖者の名は百葉(ひゃくは)と言う。百葉は、毎年、自身の余暇をこの森の中で過ごすことにしているのだが、都会から小鳥たちが森の中では熊が出る、と警告を鳴らしていたことを受けて、今度は都会に向かおうと決意したのである。百葉の余暇は、小鳥を見守ることを達成したうえでの余暇であるから、小鳥の身の安全を確保することに勤しむことになったのだ。小鳥は全部で72羽存在しているというから、世話をしている時間は大分かかると思われた。小鳥たちに餌を与え、住まいを提供し、寝床を設ける、それが百葉の使命であったのだ。
聖者はまだ余暇を堪能できはしなかった。「67……68……69……」と小鳥たちのカウントを取ることも頻繁にあった。小鳥たちは、都会においては熊は出ないが、田舎においては静まっていて落ち着くと思われます、と合唱して語りを聞かせた。どちらがよいかは、百葉さんにも難しいでしょうか、と語りを聞かせた。百葉は、「田舎のような、都会のような地域が自分に合うんだ」と応じた。小鳥たちは、「都会と田舎を足して二で割ると過ごしやすいんですかね」と応じた。百葉は、「合唱コンクールに出て語りを聞かせるとどうだろう」と言った。小鳥たちは、「そういう舞台もいいですね」と合唱して聞かせた。
百葉は、72羽全羽に餌を与えた。このことのために、カウントしていたのだ。またそのカウントが始まる。一羽目に箱家を、二羽目に巣箱を────。
聖者の余暇は、まだ始まらない。それが、聖者の真剣な生き様を思わせた。


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