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3月8日は国際女性デー。なぜ日本では性差別がなくならない? 世界の報道からみる、日本のジェンダーギャップ

世界は日本のジェンダーギャップをどのように報じているのだろうか? 不同意性交問題や性交同意年齢の低さ、日本の女性たちのマンガやアニメでの描かれ方に対する若者たちが感じている違和感、ブラック校則やアイドル文化など── NYで活動するジャーナリストのシェリーめぐみが、 日本に根付くジェンダー不平等を探るとともに、ジェンダーエクイティがもたらす恩恵について考える。
2018年新宿駅前にて、財務省の福田淳一元事務次官のセクハラ問題を受けて行われた「私は黙らない0428」抗議デモのようす。Photo REUTERS  Issei Kato

2018年新宿駅前にて、財務省の福田淳一元事務次官のセクハラ問題を受けて行われた「#私は黙らない0428」抗議デモのようす。Photo: REUTERS / Issei Kato

2023年2月、日銀の新総裁人事が発表された直後、ロイター通信から「男性ばかりの日銀は、日本の男女平等にとって新たな打撃となる」という記事が出された。日本のジェンダーギャップを世界に伝えるこうした記事は、ここ数年かなり目につくようになっている。そこで必ず挙げられるのは、世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数だ。

2022年、日本は146カ国中116位。特に深刻なのは政治分野で、女性議員の割合は10%、さらには首相経験者はゼロという現状から139位をマークしている。また経済分野でも、女性の賃金は男性の6割、管理職の女性割合は15%であることから121位と低迷している。一方、政府系金融機関フォーラムの報告書によれば、日銀の男女平等ランキングは世界185の中央銀行のうち142位とされている。

日本の社会のあらゆる場面で決定権を持つのは、ほとんど男性だということを、今や世界中が知っている。今回は、アメリカメディアの報道を中心に、日本のジェンダーギャップがどのように伝えられているのか、なぜ深刻な問題なのか、そこから私たちが学ぶべきことは何かを考察する。

不同意性交問題に見る、世界の中で日本の立ち位置

2019年、アメリカでは#MeTooムーブメントが巻き起こり、ハリウッドを文字通り牛耳った大物プロデューサーから人気俳優、セレブリティシェフ、政治家までが続々と性犯罪に問われていた頃、日本ではレイプ容疑の裁判で、次々に無罪判決が出された。これを取り上げた若者向けニュースメディア「Vice News」はこう報じた。

「日本の性犯罪刑法は、1907年に施行された法律がほとんどそのままになっている。暴行を受けた際に反撃したことを被害者が証明できなければ、強姦罪とはみなされない。それが強姦事件を引き起こす原因にもなっている」

日本でレイプが犯罪として成立するためには、暴行・脅迫、心神喪失などの厳しい要件を満たすことが求められる。そのため、ただでさえ恐怖やアルコール、薬物などによって拒絶が困難な状況にあった被害者が、その理由を説明できなければならないのだ。

しかし、アメリカやヨーロッパの多くの国ではこんな要件は存在しない。性行為に及ぶ前に「同意」がなければ、犯罪になる。つまり、「セックスする?」という質問への「イエス」という同意があった場合のみ合法。それ以外は全て犯罪なのだ。そうでなければ、相手を尊重していないことになるという考え方だ。

明治時代から変わらない日本の性犯罪刑法を改正しようという動きは進んではいるが、欧米と同様に、同意があったかどうかそのものに焦点を当てた「不同意性交」を盛り込むまでには至っていない。

さらにこの刑法に関して、アメリカでは驚かれる事実がもう1つ。それは、日本の現行の性交同意年齢が13歳だということ。これは世界最低レベル。13歳以上の子どもは同意能力があるとみなされるため、彼らとの性行為は法定強姦にはならない。一方アメリカのほとんどの州では、18歳未満の相手とセックスをしたら、たとえ同意があっても事実上レイプになる。

法務省の法制審議会は、刑法の性犯罪規定改正の要綱を2月17日に斎藤健法相に答申し、成功同意年齢を16歳に引き上げることなどが盛り込まれた。だが、これまでの性交同意年齢の低さが、児童ポルノや、アニメや漫画での女性への性的搾取を許す風潮に繋がってきたという見解もある。

アニメと漫画から見えてくる、日本人女性のステレオタイプ

日本のアニメや漫画文化が海外でも人気が高いのは言わずと知れた事実だが、その一方でアメリカの若者が強い違和感を抱く一面もある。2022年4月、日本経済新聞朝刊に掲載された、コミックス『月曜日のたわわ』の全面広告が炎上。これをアメリカでいち早くとり上げたのは、アニメファンに人気のニュースサイト「Anime News Network」だった。

記事の中では、週刊ヤングマガジンの担当者のコメントが紹介され、広告の意図を「胸の大きい女子高生が主役のマンガを掲載したのは、通勤中の新入社員の不安を吹き飛ばし、元気づけるのが目的だった」と説明する内容が紹介された。さらに、それに抗議したUN Women日本事務所の石川雅恵所長のコメントも引用された。

「今回の広告は、男性にとっての『女子高生にこうしてほしい』という見方しか反映しておらず、女子高生には『性的な魅力で男性を応援する』という人格しか与えられていません。

明らかに未成年の女性を男性の性的な対象として描いた漫画の広告を掲載することで、女性にこうした役割を押し付けるステレオタイプの助長につながる危険があります」

一方で、2000年にパリで初めて開催されたジャパン・エキスポを筆頭に、アメリカやアジア各地でアニメ・コンベンションが開催され、クオリティが高くジャンルが豊富な日本のアニメや漫画の人気は、世界を席巻している。こうした中「アニメ人気が世界的に広がった今、これは日本だけの問題ではない」と訴えるのは人権ジャーナリズムで知られる「Fair Planet」だ。

「日本のマンガやアニメでは未成年の女性キャラクターが性的に描かれ、キャリア志向の強い女性は悪役になり、愛情表現として許される性的暴行シーンなど、性差別的なテーマも多く見られる」と追求している。さらに、2017年の研究例をあげ「根強いジェンダー・ステレオタイプを反映することの多いマンガやアニメは、人々の性差別的な認識を助長することが明らかだ」と断言。さらに、こうした日本のアニメやマンガの女性キャラクターのハイパー・セクシュアル化が、西洋の“アジア女性フェティシズム”を助長させていると指摘した。

ポニーテールは悪? 矛盾するアイドル文化とブラック校則

AnimeJapan2018の会場にて。Photo Yichuan Cao  NurPhoto via Getty Images

AnimeJapan2018の会場にて。Photo: Yichuan Cao / NurPhoto via Getty Images

2014年に日本は児童ポルノの所持を公式に禁止した。その後、国連は禁止の対象をマンガやアニメにも拡大するよう求めたが、政府はこれに応じていない。さらに言えば、こうした規制がないことから、今でも露骨な性描写のあるマンガ広告がスマホの画面に不意に飛び込んでくる。反対派は、漫画やアニメを児童ポルノに分類することは、人々の表現の自由を侵害するものだと主張するが、これからも論議されるべき課題だろう。

これに関連して、日本の性差別の象徴として例に挙げられるのは、アイドル文化とブラック校則だ。日本のブラック校則は、アメリカの若者の間でも知られつつあり、前出の「Vice」や「ワシントンポスト」紙などでも取り上げられた。Viceは「女性のポニーテール禁止の理由は、うなじが見えると男子生徒や男性教師を刺激する可能性があるから」と日本のブラック校則を説明。これについてアメリカのZ世代に話を聞くと、こうした日本のカルチャーを冷静に見ていることが感じられる。ひとりは、こんな話をしてくれた。

「校内では性的な刺激を嫌って校則で縛るのに、一歩学校を出れば未成年のアイドルにポニーテールをさせ、性的搾取のような活動をさせている。そこには大きな矛盾があると思う」

18歳未満を未成年として性的搾取から守ろうとするアメリカでは、これが当たり前の反応なのだ。

世界3位の経済大国の低迷。少子化と、男性の5倍以上の時間を家事に費やす日本の女性たち

昨年5月、テスラCEOのイーロン・マスクは、「このまま少子化が進めば日本が“消滅する”。これは世界にとって大きな損失だ」とツイートした。日本の人口が11年連続で減少し、2021年には過去最大の減少幅64万4000人を記録したというニュース報道についてのコメントだった。世界一の富豪のツイートによって、日本の人口減少ににわかにスポットライトが当たった。そして、その人口減少の大きな原因が「男女差別」だと報じたのが、イギリス『BBC』とアメリカ『CBS』のニュースだった。

BBCは、「日本はなぜセクシズムから脱却できない」という見出しの記事の中で、日本の少子化の原因について、「子どもを産むと仕事をあきらめたり、出世コースから外れることになるため、産む数を減らしたり、まったく産まなくなる女性もいる。一方で、男性が自分の給料だけでは家族を養えないという、悩みを抱えていることも大きいだろう」と伝えた。

また、CBSは「日本の女性は男性の5倍以上の時間を家事に費やしている。結婚しない、子どもを生まない理由は、日本の女性が仕事と家庭を両立できないことが大きい」と、女性と男性の伝統的な役割分担意識が、結果的に少子化につながっていることを示唆した。さらに、「仕事と家庭の両立を可能にした国々(スウェーデンなど)は、出生率が大きく低下していない」という、ハーバード大学の社会学者メアリー・ブリントン教授のコメントも引用している。

少子化も含め、日本における男女の不平等は、過去30年間の経済の停滞と直結していると考えられている。世界3位の経済大国の停滞は、世界経済にとって大きな不安要素でもある。

日本の改革は表面的という分析も

2021年、第2次岸田内閣発足日の国会にて撮影。Photo REUTERS  Issei Kato

2021年、第2次岸田内閣発足日の国会にて撮影。Photo: REUTERS / Issei Kato

ジェンダーギャップを縮めるための日本政府の方針は、うまく機能していない。リーダーシップに占める女性の割合を30%に引き上げるという政府の目標は、2020年から2030年に延期されたことも、それを裏付けるひとつの要素だ。

また、一見進歩的な日本の動きは、対外的にアピールするための表面的なものに過ぎないと言い切るのは、イギリスのメディア「Unherd」だ。2022年12月の記事では、有名大学に見られる改革を例に挙げ、国連の持続可能な開発目標SDGsを推進するために、「ジェンダー」「人種」など、より進歩的な内容を導入しているが、これは留学生を増やし、日本の大学のランキングを上げるためのアピールだと指摘。さらに、表面的な改革はあっても、大学のキャンパス内では学生運動はほとんどなく、#MeToo運動も日本の大学からは広がらなかったと伝えた。

さらに、日本人は実は男女平等を求めていないのでは? という分析さえもある。大手調査会社「イプソス」のレポートでは、「なぜ日本は男女不平等がもたらす驚くほどの犠牲に目をつぶるのか」というタイトルのもと、「日本では不思議なことに、女性の間でさえ、男女平等の拡大を目指す会話や、それに注がれるエネルギーがあまりない」と指摘している。その理由として、「ジェンダー平等で得するのは女性だけで、だから取り組む責任も女性にある」という誤った認識が今も多くの人の中にあることを挙げている。フェミニズムに関する話題は今までに比べれば増えたとは言えるが、まだ、すべては女性の自己責任であり、声を上げて社会に大規模な変化を起こそうとする必要はないという考え方が多いというのだ。こうした風潮の中では、ジェンダー問題を個人を超えて、より大きな社会問題として捉えるのは難しいと分析する。

「男女は生物学的に異なるものであり、それぞれの役割を担うことで、日本社会全体の調和と安定に貢献している」という日本の性別役割意識はどこから生まれたのか? 複数のメディアや調査分析は、「差別があって当たり前」な日本の教育と、メディアが刷り込む価値観だと主張する。

例えば伝統的なジェンダーの役割分担は、幼稚園から小学校低学年で刷り込まれる。近年自由度は増してきているが、ランドセルをはじめとする男女の色分けなどから「女らしさ」「男らしさ」という価値観を刷り込まれていく。またメディアに関して言うと、テレビ番組の司会者は年長男性、若い女性がアシスタントという光景は今でもよくみる。また、「女子力」というトレンド語をもてはやすように使った影響も大きい。かと思えば、「 “自己責任の下、長時間労働を強いられている男性”の地位が欲しいと思う女性は少ない」と、中年男性たちの旧態依然の働き方にも問題があるという指摘もある。

世界が注目する、日本が選ぶ道。ジェンダー平等はゼロサムゲームではない

国際通貨基金(IMF)のギータ・ゴピナート副代表は、去年9月韓国で行われた「男女平等フォーラム」で、「男女平等こそが経済成長と安定をもたらす」と語った。

実はアメリカのジェンダーギャップ指数は世界27位。決してよい数字とは言えないが、そんなアメリカでもDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)や、あらゆるジェンダー、人種が共存し平等に扱われる状況を作ることが、社会の安定を確保し経済発展につながるという認識が、かなり浸透してきている。

取材したZ世代のアメリカ人男性は、「時々職場で女性が優遇され過ぎているのかな、と感じることもあるが、これまでの圧倒的な男性優位の歴史を考えると、当然だと思う」と話す。

経営学誌の『ハーバード・ビジネス・レビュー』によると、ジェンダーギャップが縮まれば、企業の収益も上がり、ジェンダーエクィティが10%向上するごとに、収益は1~2%増加することがわかっている。

ジェンダー平等は、片方が権利を得ればもう片方が失うというゼロサムゲームではない。女性が力を得れば社会全体が豊かになり、男性にも恩恵は及ぶのだ。

前出のイプソスの調査分析では、「日本が男女間の不平等に関して現状を支持し続けることは、日本が“変化するよりも縮小する方が良い”と判断することを意味する」と述べている。

日本人がどんな未来を選ぶのか、今世界が注目している。

Text: Megumi Shelley  Editor: Mina Oba