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「私はフェミニストです」と名乗るのが怖いあなたへ──2人の若きSNSコンテンツクリエイターの対談

メンタルヘルスを切り口に、社会・政治問題やジェンダー、人種差別への学びを深めるテーマをソーシャルメディアを中心に発信するBlossom the Media。編集長の岡田笑瑠が、フェミニストでクリエイターのYuiと対談。10月10日の世界メンタルヘルスデーに、フェミニズムに対する若者の等身大の声に注目する。

「平等な社会」よりも、「公平な社会」を

Photo Olga Ubirailo  Getty Images

Photo: Olga Ubirailo / Getty Images

Emiru Okada(以下、Emiru) 少し前までは、社会の多様性と包摂性を高めるために、D&I(Diversity & Inclusion)という言葉が多く使われていましたが、今はその概念が進化し、DE&I(Diversity, Equity, & Inclusion)と、そこに公平性が加わったことは今の社会的不平等な構造を変えていく上で重要な変化だと感じています。こうした中、平等は皆が同じあることで、公平はマジョリティと同じように活動や挑戦ができるようになるために、マイノリティが何かしらの支援を得られるようにする、と言う意味だと私は思っているのですが、Yuiさんは今日本に必要なことは何だと思いますか?

Yui 「平等」と「公平」の違いを分かりやすく比較しているイラストを昔大学の授業で見かけたのですが、「平等」は身長差がある全員に同じ高さの踏み台を、「公平」は身長差を考慮して、背の低い人には踏み台の高いものを、背の高い人には踏み台の低いものを用意していました。それを見ると、公平は一人ひとりのアイデンティティや生まれ持った属性によって被る不利益や差別、抑圧の部分に着目していて、各々の必要に応じた対応に繋げられるので、やはり公平性をより重視した取り組みがあらゆる格差を埋める鍵だと思います。

Photo 123RF

Photo: 123RF

Emiru 私も平等を得るためには公平から、と考えています。ジェンダーギャップ指数を見れば明確ですが、日本では未だに子育ては女性の仕事だと想定されていたり、女性が管理職に起用されづらい状況があります。まずは女性に対して機会を与えることを重視する必要性を強く感じます。正確に言うと、日本人でシスジェンダーの男性以外の方々にも公平な支援を提供してもらいたい。でも正直なところ、私は日本で生まれていますが、アメリカで暮らしている年数の方が長いので、日本に住んでいる女性たちが経験している男女差別や不公平というものであまり苦労していないと感じます。 Yuiさんは不公平さや不平等さを経験したことはありますか?

Yui 育った環境やバックグランドによって経験する不公平・不平等の経験は違いますよね。私は高校生のとき、選択的夫婦別姓制度について考えさせられる体験をしました。日本では学校の卒業記念に印鑑を貰える伝統があるのですが、私の高校ではその印鑑を名字と名前のどちらにしたいかを事前に選べたのです。大抵名字の方を選ぶのが自然かもしれませんが、その時の私は一瞬迷った結果、名前にすることにしました。当時はいつか男性と結婚するのだろうと思っていたので、名字にしてしまったら結婚後に使えなくなると思ったからです。

Emiru 日本にそんな素敵な伝統があるなんて知りませんでした!でも私だったら印鑑=名字のイメージもあるので、名字を選んでいたかな。

Yui そうですよね(笑)。下の名前での印鑑登録もできますが、そもそも自分が男性だったらそんな選択を思いつきもしなかっただろうに、と想像すると今でも悔しいです。残念なことにまだ日本の法律では夫婦別姓が認められていないので、婚姻届を出す異性カップルのうち95%は女性が男性の姓に変えているのが現状です。もちろん改姓することに抵抗がない女性もいますが、さまざまな理由で家族から受け継いだ名字を存続したいと望む女性もいます。同性婚の法制化も同様ですが、2人で決める人生の選択が社会の「ふつう」や制度によって奪われることなく、それをただ尊重し応援する法律にアップデートされて欲しいです。

Emiru それは女性ならではの悩み、経験かもしれません。アメリカでは多くの女性が結婚後も旧姓で働くことが多いので、私も迷わず別性を選択すると思います。私の勤務先の病院でも、「私が頑張って手に入れたのに、どうしてその学位をパートナーの名字で名乗らないといけないの?」と言う人は多いです。でも日本ではそれが逆に保障されていない社会であることが問題。色々なことが危惧されていますが、アメリカでは目立った問題もなく導入されていますし、選択的であってはいけない理由は何もない気がしています。

フェミニズムやアクティビズムへの誤解

Photo paula sierra  Getty Images

Photo: paula sierra / Getty Images

Emiru 私が個人的にもうひとつ危惧しているのが、日本ではフェミニズムやアクティビズムは悪い印象が持たれてしまっているという点。アメリカでは出身地や年齢と同じように、アイデンティティの一つとして「自分はフェミニストだ」と自己紹介するのをよく聞きますし、誰もフェミニズムやフェミニストに対して抵抗がない印象があります。なぜフェミニズムやアクティビズムに対する認識がこんなにも違うのでしょうか。

Yui ひとつは、フェミニズムを全くの別物である男性差別・嫌悪と混同させる風潮が存在するからだと思います。もうひとつは、特に日本では、これまでの学校教育で対話や議論が重要視されてこなかったため、自らの意見を主張する行為をネガティブに捉える文化があることが関係しているかもしれません。自分と馴染みのない意見を言われたとき、自分への個人的な攻撃や人格批判だと認識してしまう心理が働くのだと思います。

一方フェミニズムは、ジェンダー不平等・不公平な社会構造や政治に異議を唱え、すべての人にとって公平な社会を作るための打開策の議論や対話を基本とする思想の上に成り立つと私は考えます。当然その議論は男性を含むすべての人にオープンな訳ですが、まだ十分に保障されていないさまざまな状況下にいる女性(トランス女性を含む)の権利について注目したトピックが多いため、それを男性を排除しようとする概念だと誤解する人も一定数いるのだと思います。

Emiru 確かに、以前より国際化が進んだ日本でも、女性が男性と同様に最前線で活躍することで、これまで男性たちが手にしていた発言力、影響力、権力が奪われてしまうと感じている人も多いのかも知れません。この誤認識の理由として、ジェンダーやフェミニズムを含む、社会問題に関する教育が行き渡っていないという問題があるのかなと思います。本来のフェミニズムの意味や目的が知られないまま偏見が広まりすぎていますし、日本でアンチコメントをしている人たちは、自分の特権を認識していない人たちが多いという印象があります。

Yui 社会のシステムがいかに家父長制・男性優位思考のもとで回っているのか、もし人々が客観的に見ることができたら、フェミニズムの必要性を認識しやすくなります。おかしいと思ったことにはおかしいと言い、暮らしや世の中に対して抱く不満を社会に訴えることは自然なこと。でもフェミニズムに対する一定の思い込みやハードルが、多くの人たちをアクティビズムから遠ざけてしまっていると感じます。

Emiru 今のままだと難しいかもしれませんね。決まったフェミニストのなり方がある訳でもないので、まずは日常的にフェミニズムに繋がる、もしくは大学の講義、ワークショップ、SNSの投稿など、とにかく誰もが興味を持ったらフェミニズムと触れ合える機会を作ることが大事だと感じ、私たちも発信しています。Yuiさんは、日本におけるフェミニズムの次なる課題は何だと感じていますか?

世界では討論の場として活用されているSNS

インターセクショナル・フェミニスト・コミュニティAWAKEファウンダーのYui。

インターセクショナル・フェミニスト・コミュニティAWAKEファウンダーのYui。

Yui これは本当にたくさんあって難しい。ひとつは、フェミニズムに関心があったり、社会に違和感を抱いている人たちにとっての安全でインクルーシブな居場所が少ないこと。フェミニズムについて気軽に話せる人が身近にいないという人も多いので、同じ問題意識を共有する仲間と心理的安全性が保障された空間で繋がり、エンパワーし合うことができる機会は貴重です。私自身もフェミニストのコミュニティの皆さんにいつもたくさんのことを教わったり、パワーを貰っているので、情報や意見を交換し合い、連帯を強め、フェミニズムの勢いを前進させるためにも、この繋がりを更に広げていきたいです。

そしてもうひとつは、フェミニズムに関する正しい知識や情報にアクセスするリソースがまだ限られていることです。情報発信といえば、笑瑠さんもブロッサムを通してたくさん素敵なコンテンツを発信されていますが、メディアを運営する立場、あるいはアメリカで育った人として、日本のフェミニズムや社会問題に関する情報アクセスについてどう思いますか?

Emiru 活動している中で常々思っていますが、本当にリソースが少ないと感じます。日本のSNSでは特にフェミニズムに限らず、社会問題に関して安全に自分の意見を述べたり、ディスカッションをする場が限られています。私はよくSNSの投稿をきっかけに、さまざまな問題と向き直したり学び直すことが多いのですが、ほとんどが英語で、日本語の投稿は多くはありません。特にフェミニズムに関しては、アメリカではよくインスタグラムやXで討論が行われているのを見ますが、日本語で検索をかけると大半が批判で、学べる機会さえない印象があります。気になるトピックの情報を得た上で、そのトピックに関する話し合いができる包括的なプラットフォームをこれからも続けていきたいですし、そうしたリソースやプラットフォームがこれからもっと増えることを願っています。Yuiさんにとって「守りたい未来」とは?

Blossom the Media編集長の岡田笑瑠。

Blossom the Media編集長の岡田笑瑠。

Yui 特に少女や女性が社会の構造的問題や抑圧など、自分ではどうすることもできない障がいに影響されることなく、その人自身が本当にやりたいことを実現できる未来が見たいです。フェミニズムがかつての私をジェンダーバイアスから解放し、自分の生きたいように生きていいのだと教えてくれたように、誰もが自分の望む生き方をするための選択肢を持つことができるよう、これからもフェミニズムを通して人をエンパワーしていくことに力を注いでいきます。またジェンダー問題と向き合う際の視点として、インターセクショナリティの概念や、気候変動など他の社会課題との関連性にも注目しながら進めることも欠かせないと思います。選挙権がある場合は投票に行ったり、自分の状況や関心に合った形のアクティビズムを実践することも大切ですね。

Emiru 女性が社会的抑圧や偏見のせいでやりたいことが阻まれてしまうことは、個人のメンタルヘルスにも大きな悪影響を及ぼします。性別やジェンダー、さまざまな属性が尊重されて、各々がありのままに生きることができる社会になってほしいです。そこまでの道のりは長いけれど、私たち一人ひとりが出来ることをして、社会に変化を求めることが第一歩になるのではないでしょうか。

PROFILE
Yui
ハワイの大学で文化人類学とコミュニケーション・メディア学を専攻。 卒業後日本に帰国し、会社員として働く傍ら、Instagramでフェミニズムやセルフラブなどをテーマにコンテンツを発信。昨年、インターセクショナル・フェミニスト・コミュニティAWAKEを立ち上げた。

Blossom the Media
メンタルヘルスをはじめ、人種やジェンダーの差別、政治、気候変動など、わたしたちが直面するさまざまな社会課題についてソーシャルメディアを通して発信し、今ではフォロワー数は7万人を超えるBlossom the Project(2020年4月に中川愛が設立)。そのプロジェクトの一環として、2021年1月に社会運動、芸術、文化を融合するメディアプラットフォーム/ウェブマガジンBlossom the Mediaをローンチ。学生やさまざまな職業に従事するZ世代のメンバーが集まり、岡田笑瑠が編集長を務める。Yuiとの対談の番外編や詳しいバックグラウンドについては、同マガジンをチェック。
https://www.blossomthemedia.com/?lang=ja

Text: Emiru Okada Editor: Mina Oba