100万円が72年で900億円に。SPXLの強さを最大限に引き出す戦略。
これまでに紹介した金利戦略、200DMA戦略は、 どちらもガチホSPXLと比べて、リスクやリターンにおいて改善はあったものの、 劇的に勝つというところまでは至りませんでした。
金利戦略:DD(ドローダウン)を-65%まで抑えることはできるが、リターンはガチホに劣る
200DMA非対称:ガチホに+2.13ポイント(年率14.68%、DD-61%)
今回は、この2つの戦略を組み合わせることで、シリーズ初めてガチホSPXLを大幅に超える戦略を紹介します。
この戦略では72年間での最終リターンがおよそ9万倍になりました。
100万円を投資していたら900億円になる爆発的なリターンです。
1. 2つの戦略を組み合わせる発想
これまで検証してきた2つの戦略は、見ているものが違いました。
金利戦略:FRBの政策金利(DFF)を見て、極めて低い時にSPXLを保有
200DMA戦略:S&P500の終値が200日移動平均を上回ったらSPXLを保有
異なる情報源を使う2つの戦略を、ひとつにまとめてみたらどうなるか。 それが今回のテーマです。
2. 売買判断のロジック
組み合わせ方は、いたってシンプルです。
毎日2つの戦略のシグナルを確認し、どちらか一方でも「SPXLを買え」と言っていればSPXLを保有。両方が「退避しろ」と言っている時だけMMFに退避する
具体例を見てみましょう。
例1:2009年初頭〜春(リーマン直後の急回復期)
金利戦略:DFFが0.15%まで下がっており、SPXL購入を要求
200DMA戦略:S&P500は200DMAを大きく下回っており、退避を要求
この時、組み合わせ戦略は「金利戦略がSPXLを要求しているから保有」と判断します。 結果として、2009年3月の底値からの強烈な急回復を取り逃さずに済みます。
例2:2007年央(リーマンショック前)
金利戦略:DFFは5%超で、退避を要求
200DMA戦略:S&P500は200DMAを上回っており、SPXL保有を要求
200DMA戦略がSPXLを要求しているので、組み合わせ戦略はSPXLを保有。 ただしこの後、S&P500が下落し始めて200DMAを割ると、200DMA戦略も退避要求に変わります。 そこで両方が退避を要求するため、組み合わせ戦略も退避に切り替わります。
例3:2010年代の通常の強気相場
金利戦略:DFFはほぼ0%でSPXL要求
200DMA戦略:S&P500が安定上昇でSPXL要求
両方ONなので、当然SPXLを保有。
このようにシンプルなルールですが、結果は劇的に変わります。
以下の結果は、全て売買ごとに手数料と税金を考慮しています。
3. 72年バックテストの結果
組み合わせ戦略は、
年率リターン+17.21%、$1が$89,723まで増えました。
ガチホSPXLの約18倍、
200DMA非対称戦略の約4.8倍の最終資産です。
最大ドローダウンは-69%で、ガチホSPXLの-98%から30ポイント近い改善。
リターンを劇的に伸ばしながら、リスクも大幅に減らせています。
4. 何が起きていたのか
これだけ大きな成果が出る理由を、データで確認します。
組み合わせ戦略では、各日において以下の4つの状態が現れます。
両方OFF:金利戦略も200DMA戦略も「退避」を要求 → MMFで待機
200DMAのみON:株価が上昇トレンドで強気相場、金利は通常水準
金利のみON:株価は下落中だが、緊急利下げでDFFが極低
両方ON:強気相場かつ金利も極低
これを72年分、時系列でカラーバー表示すると以下のようになります。
下段のカラーバーを見ると、興味深いパターンが見えてきます。
緑色(200DMAのみON)が圧倒的に多く、約61%。
これは普通の強気相場で、200DMA戦略が単独で機能している期間です。
オレンジ色(金利のみON)は全体のわずか3.3%しかありません。
ただし、ここが今回の戦略の真の価値を生んでいる期間です。
具体的にオレンジが出現するのは、
2008年12月〜2009年6月:リーマンショック後の急回復期
2010年6月〜9月:欧州債務危機の急落直後
2015年8月〜2016年3月:チャイナショック後
2020年4月〜6月:コロナショック後の急回復期
いずれも「クラッシュ直後で株価は200DMAを大きく下回っているが、FRBの緊急利下げで金利が極低になっている」という局面です。
200DMA戦略だけだと、これらの急回復局面では「200DMAより下にいる」のでSPXLに乗れません。 金利戦略がここを拾ってくれているのです。
5. なぜこれが機能するのか
今回の発見は、2つの戦略が実はまったく違う種類の相場を捉えているということです。
200DMA戦略:通常の上昇トレンド(強気相場の本体)を捉える
金利戦略:緊急利下げ後の急回復局面(クラッシュからの反発)を捉える
この2つの相場は、時間的にも性質的にも別物です。
強気相場は数年単位で続く穏やかな上昇、急回復は数ヶ月単位の激しい反発。
200DMA戦略だけだと、株価が下を向いている急回復局面の入口を取り逃します。
金利戦略だけだと、通常の強気相場では発動せず、SPXLの強さを取りに行けません。
組み合わせると、両者の弱点が補完されます。
「強気相場の本体」と「クラッシュ後の反発」を、それぞれ別のシグナルで漏れなく捉える。
これが組み合わせ戦略のメカニズムです。
6. 過去最適化バイアスについて
最後に、この戦略の注意点を書いておきます。
今回示したパラメータ(DFF<0.25/≥2、200DMA +2.5/-5)は、 過去データから「効きそうな値」を選んだものです。 未来も同じ値で最適とは限りません。
ただし、「2つの異なる相場を捉える」という戦略の構造自体は普遍的だと考えています。
景気サイクルがある限り、通常の強気相場とクラッシュ後の反発は今後も繰り返されるはずです。
パラメータの細部はともかく、構造としての優位性は維持されると思います。
逆に言えば、シンプルすぎる戦略では捉えきれない相場が存在する以上、 組み合わせのような工夫は必須だとも言えます。
7. シリーズの到達点
シリーズの第4弾から始まったSPXLの実践運用戦略は、ここで一つの到達点に達しました。
ガチホSPXL:年率12.55%、$4,872、最大DD-98%
組み合わせ戦略:年率17.21%、$89,723、最大DD-69%
リターンは18倍、ドローダウンは30ポイント改善。 これがシリーズで到達した最強の戦略です。
ここから先は、
退避先の選び方(MMF vs SPY)
積立投資との組み合わせ
運用期間による結果の変動
など、実践的な細部の検討に入っていきます。
シリーズの最後に、これらの戦略を自分のパラメータで自由に試せるシミュレーションツールを販売予定です。 運用期間、金利や200DMAの閾値、バンド幅、組み合わせ方法(ANDかORか)、退避先、手数料、税金などを自由に設定して、過去72年のリターンを即座に計算できるエクセル形式のツールです。
組み合わせをANDで保守的に組む、ORで積極的に組むなど、自分の好みに合わせた戦略設計が可能になります。 詳しい内容は、シリーズの最後でお知らせします。
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