【小論】アメリカの若者はなぜ「社会主義」に手を伸ばすのか。縁故資本主義が生んだ必然
2025年のケイトー研究所/YouGov調査によると、18〜29歳のアメリカ人の62%が社会主義に「好意的」と答えている。同年12月の別の調査では、同じ世代で「資本主義がいい」と答えたのはたった26%。18〜39歳の53%が「2028年の大統領選では民主社会主義の候補に勝ってほしい」と言っている。DSA(アメリカ民主社会主義者)は2026年7月4日に会員12万人を突破した。ゾーラン・マムダニがニューヨーク市長選に勝った前後で会員はほぼ倍増したらしい。
「若者が社会主義を支持している」というのは、もう流行りとかトレンドとかいうレベルの話ではない。事実である。
この現象を見て「若者は歴史を知らないからだ」「教育の失敗だ」と言う人が多い。ケイトー研究所なんかまさにそういうスタンスである。でも私はそう思わない。
若者は社会主義の理論書を読んで感動したわけではない。目の前の資本主義があまりにもひどいから、その反対側にあるラベルに手を伸ばしているだけだ。そしてそのひどさの核心にあるのが、縁故資本主義(クローニーキャピタリズム)つまり、権力と金が癒着して、もう手のつけようがないレベルにまで腐りきっているという現実である。
具体的な話をしよう。2026年のホルムズ海峡危機では、トランプが何か発言するたびに、その数十分前に大量の先物取引が行われていた。誰かが事前に情報を知っていて、それで大儲けしている。司法省が捜査に入っているが、たぶん誰も捕まらない。米財務省は原油の先物市場に「介入する」と公然と言い、日本政府も同じようなことをやった。2008年には、めちゃくちゃな賭けをして大損こいた銀行が税金で助けられて、家を失った一般人には何もなかった。製薬会社はロビイストを使って薬の値段を下げさせないし、テック企業は規制の穴をついて独占を築くし、国防産業は政府と人材をぐるぐる回して契約を取る。
で、そのたびに「これが自由市場だ」「これが資本主義だ」と言われる。若者がこれを見て「こんな資本主義ならいらねえよ」と思うのは当たり前ではないか。馬鹿だからじゃない。目が見えているからだ。
ただここで一つ言っておきたいことがある。「今の資本主義がクソだ」という診断が正しいことと、「だから社会主義にしよう」という処方箋が正しいことは、全く別の話である。
歴史を見れば分かるが、国が経済をもっと握るようにすると、権力と金の癒着は解消されるどころかもっとひどくなる。ソ連のノメンクラトゥーラ(特権階級)、中国の太子党、ベネズエラのボリブルジョワジー。全部「社会主義」の看板のもとに生まれた新しい特権階級だ。国が「誰に何を配るか」を決める権限を持てば持つほど、その権限に群がる連中が出てくる。当然の話である。
若者が本当に欲しいのは「権力と金のズブズブの関係をぶっ壊すこと」だろう。だとしたら国の権限を増やすのは逆効果になりかねない。
いちばんまずいのは、正当な怒りがまともな改革に結びついていないことだと思う。
ロビイング規制をガチガチに厳しくする。政府と企業の間の回転ドア人事を禁止する。独占を解体する。政治献金を完全にガラス張りにする。インサイダー取引をやったら確実に刑務所に行くようにする——これは「社会主義」でも「資本主義」でもない。単に「権力者が好き勝手できないようにする仕組み」の話である。
でも若者の不満が「社会主義」っていう漠然としたラベルに吸い寄せられている限り、縁故資本主義で甘い汁を吸っている連中は安泰なのだ。「ほら見ろ、あいつらはソ連を作りたいんだ」と言えば、一発で批判を無効化できるから。
62%の若者が社会主義に好意的。この数字は社会主義の勝利じゃない。現行システムへの不信任決議である。問題は「市場か国家か」ではなく、「どうやったら権力者が腐敗しにくい仕組みを作れるか」だ。その問いに正面から向き合わない限り、縁故資本主義は看板だけ塗り替えて何度でも復活する。


コメント