プリクラをスマホに挟んだ自衛隊員
観客からは「中国に負けるな!」の声
富士総合火力演習で重なった戦前の歴史
プリクラをスマホに挟んだ自衛隊員
観客からは「中国に負けるな!」の声
富士総合火力演習で重なった
戦前の歴史
2026年6月7日、陸上自衛隊で最大規模の実弾射撃演習「富士総合火力演習」の取材で静岡県御殿場市に向かった。
高市早苗政権下で、日本が戦争のできる国へと変わる今、「国を守る」という言葉に隠れる戦闘の実態を想像するためにも、演習を見なければならないと思ったからだ。
もし、戦争が起きたり巻き込まれたりした時、戦うことになる自衛隊員はどこにでもいる若者だった。
演習後、会場から「中国に負けるな! 」という声が聞こえた。勇ましい言葉が若者たちを戦地に向かわせた歴史が重なった。
爆発音で耳鳴り
小雨の降る富士山麓。カッパを着た私はカメラを構えていた。ファインダーには、70メートル先に停車する陸上自衛隊の戦闘車両を収めている。
砲弾を発射した瞬間、赤い炎とともに爆発音が響いた。耳栓をつけ忘れた左耳の鼓膜に痛みが走り、「キーン」という耳鳴りがする。驚いて力みすぎたのか、レンズを支えていた左手の人差し指がつり、少しの間、曲がらなくなった。
陸上自衛隊の富士総合火力演習は、実弾を使った演習だ。島嶼部への攻撃を想定した演習には3000人の自衛隊員が参加し、8.2億円分の弾薬が使われた。
新入隊員を含む5400人の自衛隊員は、研修として演習を見学した。一般人を含む4800人も招待された。
「命中。敵操作手撃破」
近くで砲撃があるたびに全身が強張った。別の火器が火薬の入った弾を撃つと、山肌で爆発。白い衝撃波が見えた後に、黒い土が飛び散った。
目の前にある主砲が私の方を向いたら……。恐ろしくなり、演習が早く終わってほしいと思った。
会場には隊員間のやりとりが音声で流れる。
「こちら狙撃班。敵、ドローン操作手発見。狙撃する」
「カン、カン」と的にあたったような金属音が響くと同時に一言。「命中。敵操作手撃破」
会場にアナウンスが流れる。
「我に脅威を与える敵ドローンについては、あらゆる手段を活用して潜伏地域を特定して、排除することが重要です」
撃破や排除とは、敵操作手を殺傷したということだ。実際の戦闘では、「敵」とされる人にも名前があり、友人や家族がいるはずだ。自衛隊は、人を殺めることが仕事になりうる組織なのだと感じた。
あどけない顔つきの隊員たち
人を殺めることを想定した演習を見たことで、より印象に残った姿がある。見学していた若い自衛隊員たちの姿だ。
私が撮影していた報道席の隣に、迷彩服を着た自衛隊員の一団が座っていた。高校を卒業したばかりのような、あどけない顔つきをしている。
演習前、小泉進次郎防衛大臣が車窓から手を振って会場に現れた。それを見た隊員たちは、「きゃー」と歓声をあげて手を振り返す。通り過ぎると、芸能人を見たかのように、近くの隊員同士で笑い合っている。
彼ら、彼女らはどんな様子で見学するのだろう。観察していると、演習を撮影するスマートフォンに目が留まった。クリアケースの内側に友人と並んで撮ったようなプリントシールが入っている。どこにでもいる高校生や大学生と変わらない。
恐怖を感じる演習から、不意に日常へと引き戻されたようだった。「自衛隊員」という言葉に括られない、個々人の姿を垣間見た。彼らが、人を殺めるための訓練を受けている。
勇ましいだけの無責任な言葉
演習後、会場を去る小泉大臣の撮影に向かった。カメラを回していると、一般の招待者がいる方向から男性の声が聞こえた。
「中国に負けるな! 」
勇ましいだけの無責任な言葉だ。そんな言葉が、戦前の日本を戦争に駆り立てたのではなかったのか。
戦争になれば、演習に参加した自衛隊員が戦場に立つことになるかもしれない。戦うことは、相手を殺す側にも殺される側にもなるということだ。ついさっきまで隣にいた若い隊員たちの顔が浮かんだ。
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