骨太の方針で政府・日銀の共同声明、日銀法第4条に言及し、利上げを牽制
特に金融市場の注目を集めているのは、金融政策に関するかなり踏み込んだ記述だ。高市政権が目指す「強い経済」の実現には、日本銀行の適切な金融政策運営が「非常に重要だ」としている。さらに日本銀行に対して、「日本銀行法第4条と政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携」するように求めた。
政府・日本銀行の共同声明は、日本銀行が2%の物価目標達成に向けて積極的な金融緩和の実施を政府に約束したものであると、政府側は理解しているとみられる。また日本銀行法第4条は、金融政策は「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」としており、政権発足直後に高市首相は、この条文は、(日本銀行が自由に金融政策を決められるものでなく)財政政策と同様に金融政策についても政府が方針を決める、との趣旨の発言をしていた。
これは、日本銀行法第4条の誤った解釈であり、そうした発言は日本銀行法で担保されている日本銀行の独立性を損ねかねない不当な政治介入に当たる、と考えられる。そうした発言をした狙いは、日本銀行の利上げを牽制することだった。
政府は日本銀行の独立性を十分に尊重すべき
そして、骨太の方針では、再び日本銀行の利上げを牽制する趣旨の情報発信を解禁したように見える。6月30日の為替市場で、ドル円レートは約39年ぶりとなる162円台に乗せたのち、さらに円安が進んだ。その背景には、骨太の方針原案についての報道を受けて、政府による牽制で日本銀行の利上げが遅れる、との観測が強まったことがあるのではないか。
6月の利上げは、審議委員が主導したものと推察され、政府の反対を押し切った利上げとなった可能性がある。仮に政府が反対しても、日本銀行は必要と考えれば利上げを実施するが、利上げのタイミングについては政府の意向に一定程度配慮するだろう。
政府が骨太の方針で追加利上げを牽制するのであれば、それは実際に日本銀行の利上げの時期を後ずれさせる可能性がある。
政府による日本銀行の利上げ牽制は、円安、債券安を後押しするものとなってしまう可能性がある。それは経済や金融市場の安定性を損ねることになる。この点も踏まえ、政府は、日本銀行の独立性を十分に尊重すべきだ。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。
