二人っきりの探偵事務所
どうも、後日リベンジすると言って2日くらい制作に時間かかりました。
そして書いている途中、自分が書きたかったようにはいきませんでした。
最後の辺り、若干キャラ崩壊したのではと思います。
百合小説書く人って凄いですね、私まだ百合小説書き始めたばかりなので全然上手く書けません。
解釈違いあったらごめんなさい。
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日中の喧騒が鳴り止み、限られたもののみが活動している夜。
ここまことみらい市に存在するキュアット探偵事務所も騒がしい日中の喧騒はピタリと止み、ここに暮らす名探偵達も明日に備え深い眠りへと誘われていた。
だが、そんな探偵事務所内で何やら蠢く者たちがいた。
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「……………まただ………」
私は飛び起きるように…………だが心のどこかでわかっていたかのようにベットからゆっくりと体を起こした。
酷い汗だ。
体から止め止めもなく湧き上がる鬱陶しい汗の数々は服へと染み付き、着ている服を皮膚にピッタリ張り付けてきた。
今日は夏を迎えた今の時期でも特に暑い夜であった。
ただでさえ普通に過ごすだけでも暑いというのに、” あんなもの ”を見て体から汗が吹き出てしまった。
私は溜息混じりに息を吐きながら隣に寝るお供妖精のマシュタンを起こさぬようにゆっくりと床に置いたスリッパを履き、ベットから離れた。
そして自室の扉を音を出さぬよう慎重に閉じた後 少し喉が乾いたのでキッチンへと向かっていった。
またあの嫌な光景を悪夢として見てしまった。
忘れもしない、私たちの輝かしい日常が音もなく打ち砕かれたあの日の悪夢だ。
負傷し、何も出来ない私の代わりにあの子が単身突撃をして全てを失ってしまったあの日だ。
私にとっても、あの子にとってもそれは既に過去の出来事であり もうやってこないであろう苦々しい過去の一場面だ。
皆はもう、それをひきずらなくていいのではと言う。
だからと言って完全に忘れ去ることなど私にはできない。
頭の片隅でそんな事を考えていると、あっという間にキッチンへと到着してしまった。
冷蔵庫に入れいるおかげでキンキンに冷えている麦茶を、棚から取り出したコップへと注いでいった。
それを勢いよく体へと送った私は後片付けを瞬時に終わらせて自室へと歩を進めた。
嫌な悪夢を見たせいか、自室へと帰るまでの僅かな時間であっても今日も見てしまったあの悪夢の内容が頭をゆっくりと過ぎってくる。
もしもあの時、あの子じゃなく私が記憶を失っていれば……………
もしもあの時、あの子の覚醒を止められることができれば……………
私がもっと強ければ、あの子のマコトジュエルを簡単に奪い返せたのでは……………
あの悪夢を皮切りに、嫌な考えは頭からどんどん生まれてきている。
こんな思考は直ぐに忘れるのが一番だ。
そうすれば、もうこれ以上後悔なんてする必要ないのだから。
だが過去は消えない…………あの子から私たちとの記憶が一度消えてしまったのも…………私があの子を守るために怪盗に落ちぶれた罪過も…………絶対に消えはしない。
そうして考えに耽りながら自室へと歩を進めていると不意にある部屋に明かりが灯っているのが目に見えた。
その部屋は、ここキュアット探偵事務所 一階のリビング。
普段はやって来る依頼人の対応やマシュタンやシュシュタンといった妖精達と触れ合う、名探偵たちの憩いの場へとなっている部屋。
だが夜はいつも明かりを消して皆寝静まるはずだ。
つまり現在その部屋に明かりが灯っているということは誰かがあの部屋にいるという訳だ。
(多方、あの子たちの誰かが目を覚ましてリビングに入り浸っているだけだろう)
そう思い素直に自室へと戻ろうと思ったその時、リビングの扉が開いた。
「るるか?」
リビングの扉を開け、姿を見せ私に話しかけてきた人物。
それは紛れもなく私の大切な相棒 キュアエクレールこと帆羽くれあだ。
くれあは驚いたように目を見開いて私を見つめていた。
「……………くれあ」
かく言う私もくれあの存在に驚きついつい声を漏らしてしまった。
私たちの間で沈黙が流れること数秒、くれあはリビングの扉をゆっくりと開けて人一人分の隙間を作った。
何だろうかと不思議に見つめていると、くれあは手招きして私を誘い入れようとしてきた。
「るるか………ちょっと話さない?」
「…………話すことなんてない」
言葉にすれば一言で済む簡単なものだ。
別に話したいこともないのでこのまま自室に帰るのがおそらく私にとって最善の選択だ。
だが、私は何かに吸い寄せられるように足をリビングに向けて進めていた。
「…………………………」
リビングに吸い寄せられるように入り、くれあに促されるようにソファーに座った私は沈黙を貫いた。
そんな私を隣に座るくれあはジッと見つめていた。
あまりにも私をマジマジと見るので一言何か言っておこうと口を開きかけたその時
「るるか……………悪い夢でも見ちゃったの?」
くれあは静かにそう私に向かって心配そうに呟いた。
「……………………」
それに対して私は沈黙で返してしまった。
正直、彼女に悪夢の事を話せば自分が楽になれる事は薄々感じてはいるしそうすれば絶対心が晴れる。
だが、私はそれを素直に話せなかった。
くれあの質問に対して沈黙で返すことに悪いと感じてはいる私は、何か返す言葉はないのか夜中だというのに必死に頭を回して思考を巡らせた。
そうして私とくれあの間に沈黙が流れて数分が過ぎ去った。
結局自分が納得する返答が思い付かず沈黙を貫いていると、くれあがモゾモゾと動き始めた。
私は何か言ってくるのではと少し警戒しながらくれあを見つめていると、くれあは意外な事を口走った。
「るるか…………おいで」
くれあは私に向けてゆっくりと両手を広げ、私を迎え入れてくれる体勢に入っていた。
「……………なに?」
私はくれあが何をする気なのか理解ができず、つい口を開いて聞いてしまった。
大切な相棒で、気が知れた仲とはいえ 我ながら失礼な事を言ってしまったと少し後悔した。
「少し聞き方が悪かった、ごめん」
そう言おうと、私はくれあに向かって口を開こうとすると、くれあは先程の私の質問に返事をしてきた。
「何も言わないでいいよ、………ほら、来て るるか」
多くは語らず何やら強要するようにくれあは私を誘った。
私は、やはりくれあの考えている意図を察することはできなかったのだが 気がつくとくれあに吸い込まれるように彼女の胸に私の全てを預けていた。
くれあの体は暖かく、今日は夏でも特に暑い日の夜だというのに くれあの体は外の暑さとはまるで違い 体の芯から私を暖めてくれる不思議な暖かさであった。
そしてそんなくれあからはとても良い香りが漂っており、私は直ぐにその香りに包まれてしまった。
先程までお菓子の仕込みをしていたのだろうか、甘い生地の匂い、幾つかのフルーツが出す甘く爽やかな匂い、そして最後にそれらの匂いに混じって微かに香るくれあが大好きな特別な百合の匂い。
彼女のお気に入りであり、今も昔も彼女の近くからは必ずこの匂いが香っている。
「香りは記憶に結びついている」
いつだったか、彼女が私に向けて言っていた気がする言葉。
彼女の言う通りだ。
私は彼女から香るこの匂いを嗅ぐと、まだ2人だけでこの探偵事務所に暮らしていた時の記憶が自然と呼び起こされる。
あの輝いていた忘れられない日々、あの頃を思い出すだけで何だか心の底から何かが溢れてきそうな気がしてくる。
つまりは…………くれあの匂いは、私を心の底から落ち着かせてくれる。
私がそのように昔の記憶を懐古していると、私の体を支えているくれあが不意に口を開いた。
「るるか…………少しは落ち着いた?」
親が子供に言っているような優しい口調だ。
だがそれは、彼女の人柄を体現するには充分な言い方である。
私は、再び黙りを決め込んでいたのだが自然と口が開き彼女に先程から心の片隅に浮かんでいた言葉をまるで息を吐くように喋った。
「貴方の直感が、私が悪夢で苦しんでいると言っているのかしら?」
自然と出た言葉を言い終えチラリと顔を見上げると、表情にはあまり変化は現れてはいないが微かに目元の方に反応が出ていた。
おそらく………いや、図星だろう。
私はその調子のまま自然と言葉を続けた。
「…………正解…………否が応でも私の前に現れるあの日の夢、私が無力なせいで貴方に痛い思いをさせてしまった………あの日の夢…………」
私はその時悲しげに、泣きそうな声でくれあにそう言っていた気がする。
その時の私は、本心ではくれあにそんな事を話すなと言っている。
だが、口から一度出た言葉は直ぐにはかき消せないものだ。
弁明しようとした時には、それはもう時すでに遅しという状況下である。
私が口を開きかける直前、くれあはゆっくりと両手を閉じて私を逃がさまいと優しく包み込んだ。
そして胸の前にやって来た右手で私の髪を優しい手つきで撫でてきた。
その手つきは相変わらず上手く、かつての私も一度はこうやって彼女に慰められた気がする。
やはり物思いに耽っていると彼女は口を開いた。
「るるかにはやっぱり全てがお見通し…………でも、素直にそう言わない事を含めると私たちって似た者同士だね」
優しくニッコリと微笑むくれあの顔はやはり可愛い。
純粋無垢なその笑顔を、私はいつまでも見つめていたと思えてしまう。
くれあは話を止める気はないらしく、続け様に私の髪を撫でながら話しかけてきた。
「そうだよね………どうしても見ちゃうよね……悲しいよね………泣きそうになるよね………でも、るるかが嫌でも話してよね…………それでるるかの心が少しでも晴れるなら、私はるるかの話を聞いた事を悔やまないからさ」
優しく微笑むその声は、私の心を落ち着かせる心地の良い声であった。
「…………恥ずかしい」
「フフッ………るるかったら、女の子らしくてとっても可愛かったわよ」
あれから数分間くれあに抱き締められていると、ふと私は我に返った。
我に返った私は、この数分間の出来事とくれあに向けって言った言葉の数々を思い出し、とても恥ずかしい気持ちを抱いた。
そして私は、顔を見る見る赤くして少々乱暴にくれあから離れた。
くれあから離れた私は、ソファーの上でもくれあとの間にもかなりの距離を開けた。
揶揄うようにこちらを見つめるくれあを見ていると、やはり先程までの出来事を思い出し恥ずかしい気持ちが溢れ出てしまう。
「………凄く恥ずかしい…………」
私がブツブツとそう呟いていると、くれあは尚も微笑んだまま言ってきた。
「るるか、良かったわね………今は二人っきりだから誰にも見られなかったわよ」
やはり揶揄うようにそう話すくれあに、私は少々怒りを滲ませながら言い放った。
「揶揄わないでよ!」
「あっ……………ごめんね、るるか」
少し語気を強めたおかげか、くれあは申し訳なさそうに私に謝ってきた。
謝らても私の中の怒りは収まりそうにはなかったが、改めて今の気持ちを見返すと先程より心持ちが楽になった気がした。
気の所為だと片付けてしまえるかもしれない小さな、勘違いのような変化ではあるが先程まで不安に感じていた気持ちはスっと知らぬ間に消え去っていた。
私はまだ怒りを滲ませてはいるが そっぽを向いていたのを、くれあの方に向き直し できるだけ優しく言い放った。
「…………でも、何だかスッキリした…………ありがと くれあ」
恥ずかしげに謝罪の意を伝えると、くれあはパァっと顔を明るくさせ下がっていた眉根は少しだけ上がっていた。
「良かった……………」
少し安心したようにそう言っていたくれあであったが、ほんの少し黙り込んだと思うと再び両手をゆっくりと大きく広げてきた。
今度は何なのかと問おうとすると、今回はくれあの方が先に口を開いた。
「ねぇるるか、改めてもう一度抱き合わない?」
「はぁ?」と声を出そうかとも一瞬考えた。
当然だ、くれあはまたもや意図を理解できぬ事を言ってきた。
普段の私ならこのまま何か言っていたが、心持ちが少し楽になり疲れがほんのり出てきていたのが原因かは定かではないが、私はソファーから立ち上がったかと思うと自然な足取りでくれあのもとに向かった。
そしてまた無言でくれあに体を預けた。
今度は直ぐに両手を閉じて私を抱き締めたくれあは私の耳元に口を近付けると、私にしか聞こえないような小声で言ってきた。
「るるか、今は二人っきりだから好きなだけ私に甘えていいよ」
少しくすぐったいその言葉にムッと顔を顰めていると、くれあは再び呟いてきた。
「今は二人っきり、貴方に憧憬の眼差しを向けるあんなちゃんやみくるちゃんもいないし 今の貴方を揶揄いそうなジェット先輩やマシュタン達もいない…………今なら気を引き締めたりしなくてもいいんだよ」
「私たちは再会した、その喜びを一緒に噛み締めよ」
くれあは不思議だ。
くれあの匂いだけでも、私に強く刺激を与えるというのに くれあの言葉からも私に強い刺激を与えてくる。
再会の喜びを共に噛み締めよう…………それは私が心奥底で願っていたことだ。
今まで口に出していない私の願望を見抜いたのは、おそらく くれあの心のきらめきだ。
二人っきり…………少しくすぐったくなるその言葉に、私はついつい引き込まれてしまった。
私は何もかも見抜かれていそうで少し悔しいと思いながらも、私を抱き締めるくれあの背中に回した腕にゆっくりと力を込めて行った。
優しく見守るお供妖精達優しいねぇ…