真実が暴かれて、あの子がまた傷付くくらいなら、私は偽りの世界で覆ってもいいと思った。
食べかけのチョコミントのアイスが溶けて、私の手を汚していく。去り際のかつてのあの子の面影がよぎって胸がざわつく。
らしくない、こんなの。
やっぱり、ここに通うのはやめるべきだった。
まるでストーカーでしょ?
我ながら未練がましいと思う。
ここのアイスが好きだから。
(あの子の手作りケーキが食べたいから)
そうやって自分を偽る嘘が、ボロボロと崩れそうになる。あの子の前だと、自分が騙しきれないのは変わらない。
私のこと、忘れてるくせに。ね、くれあ。
プリキュアだった頃の記憶が失われても、昔みたいな事を言うんだね。
私のことを知らないまま、私が望む言葉を投げ掛けてくれる存在が次第に居心地が良くて、同時に苦しくなる。
たかが常連客、あの子は優しいから誰よりも優しいから憶えているだけ。店員のリップサービスに心を揺さぶられて──
私を見つめる微笑みが、ずっとそこにあれば良い。
私の隣でなくても、今度こそ戦いに関係ない場所で、プリキュアから開放された世界で幸せになってくれたら、また奪われるくらいなら、そう思うのに。
胸を締め付ける、この感情は何?
また私の名前を呼んでくれる期待で、喜び跳ねる心臓がいちいちうるさい。
もう一度、あの子が私の隣で?
好きなアイスのフレーバーを覚えくれただけで、大きく揺れ跳ねる心臓が、霧が晴れた世界を求めてうるさい。
手を伸ばせない代わりに、足元の影であの子に重なり合う。
今の私のことをどう思っているのか、教えて?
その瞳の奥まで暴きたくて仕方ないと思うのは、性根の探偵魂がまだ燻ってないから、なのか。
「……時間」
わざわざ丁寧に予告カードで知らせた時間が迫る。
黄昏が煌めいて、テラス席の青い影がオレンジ色に移り変わっていた。窓辺から伸びた夕闇が、パティスリーチュチュの店先の百合の花に影を落とす。
アイスはすっかり溶け切っていて、彼女が私のために用意してくれた手作りケーキを溶けた液体が汚していた。
新米プリキュアの2人をイメージしたって、記憶失った癖に、無意識にプリキュアに近付いて本当にばか。
同時に思う。
ほかの人ばっかだめだよ。
私のことを考えてつくってよ。
好きだよ、くれあ。
「……やっぱり、真実なんて、ウソで覆い隠すべきだ」
偽りのベールを被り、光に背中を向ける。ますます影が濃くなる世界で、かつての自分たちと重なる面影を振り払う為に、その足を進めた。