恐らく、ここ二週間ほどで日本農業の運命が決まる。これまで、日本はコメだけは好きなだけ食べられる国だったのが、少なからぬ日本人がコメを十分食べられなくなる国になるかもしれない。その運命の決定権は、農家にも農協にも官僚にも政治家にもない。消費者にある。これはもしかしたら日本の歴史上、初めての事態かもしれない。
このままでは、コメの価格は暴落するだろう。すると「やはりコメ農家では生活していけない」と絶望し、一気大量にコメ農家が廃業するだろう。そして廃業した分の田んぼを、残る大規模農家が受け止め切れず、多くが放棄されることになるだろう。その結果、日本人全員に供給するだけの田んぼの面積を確保できず、フルパワーでコメを生産しても日本人のコメ需要を賄えない量しか作れなくなる状態が慢性化するだろう。慢性的にコメ不足となり、日本人の多くが日本農業コメを食べられなくなり、海外の安い食料を食べざるを得なくなるだろう。
既に数年前から、コメ卸業者の団体が「このままではコメ農家の廃業のスピードのほうが、少子高齢化でコメ消費が減るスピードよりも速くなり、日本人全員にコメを供給できなくなる」というレポートを出していた。それがいよいよ現実になる。
実は2024年にもコメ農家崩壊が起きようとしていた。しかし令和の米騒動で二年連速のコメ高騰が起き、これでコメ農家は多少の利益が出て、少し息を継げた。消費者も5kg3000円台の間は理解を示してくれて、これならコメ農家をもう少し続けてもよいかもしれない、という空気が生まれていた。2025年にはコメ争奪戦となり、何年かの長期契約で買うからコメを譲ってくれ、と交渉する商社もあったらしい。これなら経営が安定すると思い、古くてボロボロになっていた農機具を買い替える動きも出た。ところが。
2025年のコメ争奪戦は度を過ぎて進行し、ついに5kg4000円を超えた。消費者の我慢を通り越してしまった。結果、米離れが起き、コメが大量に売れ残り、2026年の新米暴落の可能性がほぼ全て確定となった。
その様子を見て、複数年で必ず買うからと約束していたはずの商社から「違約金を払うからあの話は無しにしてほしい」と連絡が来て頭真っ白になった農家がいるという。何千万円もの農機具を注文してしまったのに。複数年にわたってコメをそこそこの価格で買ってくれるという話だったから思い切って農機具の更新をしようと思ったのに。このままでは借金で首が回らなくなる上に、コメ暴落で稼ごうにも稼げなくなってしまう。ダブルパンチが少なからぬコメ農家を襲うことになる。
コメというのは、トマトやキュウリなど「腹の膨れない食品」とは違って、暴騰したり暴落したりしやすい宿命を持つ。
水に例えるとわかりやすい。水は足りないと命に関わるから、余分に確保しようとする。しかし余分があるということは、市場経済で言えば在庫がダブついているということ。だからこそタダみたいな値段になる。しかしいったん足りないとなると、金銀財宝を山と積んでもコップ1杯の水が欲しくなる。
これはコメも同じで、無いと命に関わるものは、足りないとべらぼうに高くなるし、不足がないようにと余分を確保すれば、在庫があるとみなされて暴落する。超高値か超安値に値段が乱高下しやすい性質を持つ。
今まさにコメはその状態に置かれている。コメが高騰したかと思うと暴落する。しかも今度の暴落により、農家は取り返しのつかない形で減ることになる。しかも田んぼがダメになり、復活させることが困難になる形で。ここ二週間、無策のままコメ価格が暴落するに任せれば、日本のコメ生産は致命的な打撃を受けることになるだろう。金持ちの外国人と一部の日本人は食べられても、多くの日本人は気軽には食べられない贅沢品になってしまう恐れがある。それが恐らく、この二週間以内で決まってしまう。
この2週間のうちに、コメの暴落を抑えるため、たとえば備蓄米の放出分を買い戻すとアナウンスし、5kg3500円程度に落ち着かせることができれば、コメ農家の完全崩落はなんとか避けることが可能だろう。しかしそれができるのは、農家でも農水省でも大臣ても総理でもない。消費者だけが実行できる。
高市総理は、消費者がコメ価格が安くなることを期待しているだろうと見込み、農水大臣が備蓄米の買い戻しをしてはどうかという訴えを退けたという。そう、高市総理は消費者の「決定」に従っているだけ。
もし消費者自身が「コメを今後も食べ続けるため、コメ価格をある程度買い支えてほしい」と訴えれば、高市総理は方針を変える可能性がある。ここ二週間で世論を変えられるかどうかが決め手となるだろう。
(続く)