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どうなる?北上市立大学 「未来への投資」か「財政規模にあわせた選択」か 岩手・北上市 

2026年7月21日 0:00
どうなる?北上市立大学 「未来への投資」か「財政規模にあわせた選択」か 岩手・北上市 
岩手県北上市はいま、人口減少時代でも公共サービスの維持を図るためのひとつの策として、工科系市立大学の設置を目指しています。去年、関連する予算案が市議会で否決されましたが、その後も大学設置を諦めていない市と、断念を求める市民団体とで、議論は平行線をたどっています。北上支局・熊谷記者が取材しました。

人口およそ9万人、製造業を中心とした「ものづくりのまち」として発展してきた北上市。市は去年10月、国への工科系市立大学の設置認可の申請に必要な基本計画の策定に関する予算案を市議会に提出しました。

北上市議会 議長
「賛成の議員の起立を求めます」

迎えた採決…その差は、わずか1票でした。

議長
「賛成少数であります。よって本件は否決されました」

北上市 八重樫浩文 市長
「未来の北上市にとって、持続的な発展のためには大学が必要だと思っている」

市は否決された直後の会見で、「大学設置をあきらめない」と表明。これに対し、市民団体は…

北上市立大学設置を考える市民の会 後藤誠子 代表
「本当であれば否決されたところで終わりのはず。民意が、市議会が否決したわけだから」

北上市が大学の設置にこだわるワケ。市が去年3月に策定した大学の設置基本構想によりますと、人口減少や少子化、地球環境の悪化などが複合的に進行することで、社会保障制度の縮小や生活インフラの衰退につながるいわゆる「2050年問題」に対応するためとしています。

そこで浮上したのが、大学設置という「将来への投資」でした。まち全体をキャンパスとして地域の企業などと連携し、世界標準の教育・研究と人材の育成にあたることで産業の発展を促し、持続可能な北上市を目指します。北上市立大学は4年制で1学年の定員が120人、大学院の設置も見込んでいます。整備費用はおよそ117億円、このうち、国の補助金を除いた市の負担はおよそ83億円と見込まれています。

しかし、基本構想では、卒業生の多くが市の外へ流出する可能性が高いと見込まれるなど、税金を投じて大学をつくることのメリットがわかりにくく、予算案に反対したある議員は、「基本構想には具体性がなく、設置の是非を判断できる材料がなかった」と語りました。

市民の会・反対集会
「止めるぞー!市立大学!」

北上市立大学の設置断念を求めている市民の会です。市民の会は「メリットばかりが強調され、持続可能性やリスクが不明」、「将来への投資よりもいまの福祉や教育環境を充実させるべき」などとして、「大学によらないまちづくり」を市に求めています。

北上市立大学設置を考える市民の会 後藤誠子 代表
「減っていくもの(人口)はもう仕方がないんじゃないか。それはもう受け入れて、減っていくのであれば形を変えてみたりとか、全部のサービスをやらなくても、ちゃんとみんなで考えて分け合って、ひとりひとりの困りごとを解決できるような施策に市の税金とかお金を使ってほしい。「大学が建って私たちの生活こんなふうに良くなった」と感じられるような政策だったらいいと思うけれど、世界に羽ばたく人材を作るために北上市で税金を使うということは、やっぱりちょっと方向性として違うのではないか」

一方、北上市は、これまで開いてきた市民説明会のなかで、まちへの波及効果を具体的に提示できていなかったことを認めたうえで、その具体像を示すためにも、次の段階に進む必要があるとしています。

北上市 政策企画課 坂田信彦 課長補佐
「建物の基本計画とカリキュラムを決めるソフト面の基本計画がある。それには当然学長であったり、そこで働く教員も見つけなければならない。教育の質を保証しましょうということが、我々の考えている世界標準ということで、そこは有識者の力を借りながら練り上げていく。地域の課題を解決するからこそ『市立』なのだと。我々の政策のグリップ(管理)が効く、地域の課題解決に直結するからこそ『市立』と設定している」

「人口減少」への対応で考え方が割れている市当局と市民の会。そもそも、この少子化の時代に地方自治体が大学をつくることは得策なのか?

地域大学の振興について検討する国の有識者会議の座長で、群馬県前橋市の私立の大学共愛学園前橋国際大学学長、大森昭夫さんです。

共愛学園前橋国際大学 大森昭夫 学長
「今回の基本構想を見ると、学生たちがどのぐらい定着してくれるかという目標のようなものは見えてこなかった」

大森学長によりますと、前橋国際大学は海外や地域の企業と連携して、「世界を学んだ地域人材」の育成に取り組んできた結果、卒業生全体の7割から8割が県内に就職するなど、全国的に注目を集めているといいます。

共愛学園前橋国際大学 大森昭夫 学長
「(北上市は)大学を作ることが市にもたらすプラス面が見えるような具体的なカリキュラム案も含めて提示して、話し合いの場を持つということが必要ではないかと思う。それから市民のみなさんも、いま大学というもののイメージはだいぶ変わってきているということ。特色ある学びをしながら地域の活性化に寄与している大学ってたくさんあるので、そういう学びの手法というか方向性によって地元の人材育成、地域の未来をつくる人材を育成していくことは可能です」

大学の設置に反対している市民の会は今月11日、2050年の北上市のあり方を考えるワークショップを開きました。

北上市立大学設置を考える市民の会 後藤誠子 代表
「いままで全部、行政に北上市の運営というものを任せきりにしてきてしまった私たち、50~60代の大人の責任というのは本当にあるなと、責任を感じている。だからこそ、いまここで『私たちもこういう市にしたらいいな』という考えもあるし」

一方、北上市も魅力ある大学について市民と考えるワークショップを、19日に開きました。

北上市政策企画課 坂田信彦 課長補佐
「我々はいまの北上市をさらによくして未来に引き継いでいく義務があると思っているので、大好きな北上市を将来にわたってよりよくしていきたい、その思いでやっている」

市はワークショップでの議論も参考に、早ければ9月にも基本計画策定のための予算案を市議会に再提案する見込みです。予算案が可決されれば、市として大学設置の方針が決定し、設置の可否については国が判断することになります。

持続可能なまちのあり方は、「投資による発展」か、それとも「税収の規模に合わせた選択」か…市民にとって真の利益とは何かを模索する議論はいま、合意の形成に向けて正念場を迎えています。
最終更新日:2026年7月21日 18:46
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