安青錦、手負いのそぶりをみじんも感じさず 1場所での返り咲きへあと1勝/名古屋場所
大相撲名古屋場所10日目(21日、IGアリーナ)現行のかど番制度で、今場所10勝以上すれば大関復帰となる関脇安青錦(22)は横綱豊昇龍(27)を上手投げで破り、1場所での返り咲きへあと1勝とした。豊昇龍は4敗目。横綱大の里(26)は大栄翔(32)を浴びせ倒して6勝目。「綱とり」に挑む大関霧島(30)は伯乃富士(22)を寄り切って8勝目を挙げ、勝ち越した。平幕琴栄峰(23)は切り返しで阿炎を破り、安青錦と1敗で首位に並ぶ。 土俵に立てば、手負いのそぶりをみじんも感じさせない。左足には幾重にもテーピングを施す安青錦が、豊昇龍を左からの上手投げで土俵へたたきつけた。 「体が勝手に動いてくれた。止まってしまうと横綱はいろいろな技をもっているから」 左でまわしを引き、横綱の胸に頭をつける得意の前傾姿勢。出し投げを打ち右も深く差し込み、土俵中央での強烈な投げ。2日連続の横綱撃破で1敗を守った。現行のかど番制度では関脇に転落した今場所、10勝以上すれば1場所で大関復帰となる。その2桁白星に王手をかけた。 8日目の隆の勝戦で左足親指を痛め、支度部屋で左足を引きずって歩く姿は痛々しい。勝負審判として土俵下で見守った師匠の安治川親方(元関脇安美錦)は打ち出し後、冗談めかせて本音ものぞかせた。 「痛みに耐えて、よく頑張った。感動した」 かかりつけの医師を東京から招き、部屋へ戻ってからアイシング、治療を続ける弟子を間近に見ている。「痛みもある。力も入らないだろうがよくやっている。休んでもいいとは言えないよ」。 平成13年夏場所千秋楽。優勝決定戦で横綱貴乃花が横綱武蔵丸を破り、13勝2敗で22度目の賜杯を抱いた。前日の取組で右足を負傷。武蔵丸との結びの一番では完敗した。だが、決定戦は気迫の上手投げで投げ捨てた。内閣総理大臣杯を授与した当時の小泉純一郎首相の名言が「痛みに耐えて-」。安青錦が賜杯を抱けば、歴史が繰り返されるかもしれない。 「どんな体勢になっても自分から攻めようと思った」。安青錦の鬼気迫る圧迫感は、横綱をもひるませる。(奥村展也)