作中で出てくるバーバヤーガという魔女の描写がすごい。娼館で働かされ、暴力を受け、魔女扱いされてレイプされた挙句に火炙りにされ、そして現代で最強魔女として目覚める。
女たちが受けてきた搾取や暴力が歴史的、構造的なものであることをはっきりと認識し、そのとてつもない力でもって、男の為政者たちを廃して女たちが運営する世界を掲げ、そのために女たちに魔女の力を与えるとともに武力の行使も辞さない。その経緯も動機も社会認識も共感をさせるし、掲げる理想には一定の魅力も感じる。
しかし一方で、セックスワークを仕事と認識するイムリには無理解。たぶんだけど、セックスワークにコロナ給付金が与えられなかったことを問題視した数年前の裁判なんかは、イムリはサポートしてもバーバヤーガはサポートしないと思う。
希望する女には魔女の力を与えて女たちを結集させようとしているが、それに乗らない女性(おそらく子供のいる女性とか障害や人種などでより周縁化されている女性たち)が暴力の犠牲になっても構わないと見做している。
男性ながら性暴力被害者であるジョシュを気にも留めず、クィアなミハイルには敵意を向ける。ミハイル自身は可愛いものが好きな男性として描かれているが、当然トランスジェンダーも敵だろう。トランス女性にはミハイルに向けたのと同じ敵意を向けるだろうし、トランス男性は女性なのにそのことから逃げた存在と見なすのが容易に想像できる。自分の体を捧げながら戦っていて、その究極の捧げ物がどうやら子宮のようなのも、身体の多様性を無視した生物学的決定論に基づく古い世代の女性観に従っていそうだ。
同じ女でも置かれている状況によって経験する困難に、もちろん重なる点もあるが違う点もあること、家父長制的な暴力と抑圧の構造からの解放を本当に目指すなら重なり合う課題を持つ人々との連携が必要なこと、要するにインターセクショナルなフェミニズムでいまや自明視されていることへの視点はほぼ皆無で、自分の経験を一般化し、自分がそうした一般化を許される、その意味では特権的な位置にいることを理解していなさそう。
トランスジェンダーやセックスワーカーの排除を望むフェミニズムはSNSを中心に世界各地で現れていて、それが拗れて人権団体に苛烈な攻撃をしたり、極端な場合にはむしろ家父長制的は右翼と反トランスで結託したりする傾向があるのだけど(某有名フェミニスト作家が極右政治家に投票したと公言したとか、世界的に有名な某小説家が反中絶運動の人物と接近したとか)、バーバヤーガは後者のような本末転倒はしなさそうとはいえ、現代のフェミニズムのこの歪んだ状況をバトル漫画に落とし込むの、すごすぎる。
カルトはあかんで 👩イギリス最高裁「トランス女性は女性じゃないっすね」 👩国連特別報告者「トランス女性は女性じゃないっすね」 👩ニューズウィーク「生物学的女性が女性っす...
なんかブコメでからかわれてるけど、最初からずっとフェミニズム漫画だよねあれ 最後はどう落とし込むつもりなんだろう とりあえず主人公とヒロインの愛で解決、みたいな雑な終わら...
俺はダンテとヴィルがどうなるのかだけが気がかりだよ><
最初の敵がトキシックマスキュリニティの化身で、ルッキズムの話とかもあって、単にフェミニズムを踏まえてる作者というのを超えて、この漫画自体がガチフェミニズム漫画だと思う。
これだけしっかりした描写をしてきたんだから、ハッピーエンドにせよそうでないにせよ、納得のいく結末にはならないと信じてる。
誤字訂正してえらい