「セクハラ受けてナンボ」カメラがある車内で着替えも… 女性トラックドライバーの労働環境を変えるために必要なことは?
「セクハラ受けてナンボ」と笑う先輩女性ドライバー
女性ドライバーが多く集まるイベントで、セクハラ被害について質問をすると、毎度ベテラン女性ドライバーたちからこんな声が上がる。 「セクハラ?ないない。セクハラと思ったらセクハラなんで」 「そんなもの笑ってかわせないと、この業界ではやっていけませんよ」 そんな大先輩の“武勇伝”を聞いて、誰が「セクハラされて辛い」と言えるだろうか。 ベテランドライバー自身も、間違いなく過去に女性としての壁を経験してきている。 超男性社会のなか、周辺男性からの女性蔑視にも聞こえないふりをしたり、セクハラも笑ってスルーしたり、この過酷な男性社会を必死に生き延びてきたはずだ。 しかし、こうした経験をプライドに変えてしまったクインビー(女王蜂)が根性論を語ることで、悩みを抱える新人女性は居場所を失う。 根性論に走ってしまうのはベテランだけに限らない。男性社会にうまく順応した若手の女性にも同じ言動が起こり、それが周囲の女性を萎縮させている。 「力こぶを披露(ひろう)する女性のせいで、この業界に入る女性は力持ちじゃないといけなくなる。同僚の男性から『あの子は酒も飲めて、手荷役も嫌がらず、業界の子って感じ。〇〇さん(自分)ももっと頑張りなよ』と言われた。業界は今、その力仕事を撤廃しようとしているのに」
ブルーカラー版「ガラスの天井」
現場に女性ドライバーを増やしていこうとするには、こうしたベテランドライバーたちが若手の悩みに耳を傾けなければならない。 そして、何よりも現場の女性労働者を増やす前に、更衣室を作り、記録映像に対して「私が見ます」と言えるくらいの発言権のある役員クラスの女性を増やさなければならない。 しかし、ブルーカラー業界にある「ガラスの天井」は、「強化すりガラス」なのではと思うほど、頑丈でその先が不透明だ。彼女ら自身、自分が今どのくらいのポジションにいるかを見失っている状態だと言える。 とあるトラック関連の展示会が開かれた際、その隣の会場では、2日間にわたり50名以上の識者や運送企業経営者が座談会形式でセミナーを開催。どのプログラムも客側は老若男女満席に近い状態だったが、登壇者の側を見ると、SDGsや人手不足が論じられる会に、女性は4名しかいなかった。 何よりもこの業界の状況を象徴していたのは、数ではない。その4名は1つのプログラムにまとめられ、「私たちのヒミツの話し…そっと教えます♪」(原文ママ)なるタイトルが付けられていたことだった。 この構図は、もはや「女性にも話す場は与えてやったんだから、俺たちの邪魔をするな」というメッセージでしかない。 最後の音符のマークに、むしろ女性登壇者がゼロのほうがましだったとさえ思った。 実際、男性ばかりの座談会を聴講すると、落胆度はさらに増す。 「うちの会社、女の子たくさん入ったよ」 残念なのは、こうして女性ドライバーが男性から「トラガール」や「女の子」といった、幼稚な言葉で呼ばれても、数少ない女性役員から「異論」が出ないことだ。 本人らも、自分の役割がいかに重要なのか、まだ気付いていない。男性と対等に話をさせてもらえていないことに気付いていないのかもしれない。