ファクトチェックはなぜ届かないのか、「上から目線」は逆効果 参院選で拡散した外国人の偽情報、誤り修正も態度や潜在意識は変わらない恐れ
▽無意識に生まれてしまう思考の偏り 偽情報が拡散してしまう理由を、人間が持つバイアスの観点から説明するのが安野智子中央大教授(社会心理学)だ。 認知バイアスとは、私たちが情報を認識して判断する際に、無意識に生まれてしまう思考の偏りだ。人類が進化の過程で獲得した脳の「省エネ機能」が関係するとも言われている。 安野さんは、①自分にとって分かりやすい情報を信じやすい「認知的流ちょう性」、②何度も見た情報を正しいと思いやすい「真実性の錯覚」、③自分の考えに近い情報は注目しても、反対の情報は無視しやすい「確証バイアス」、④目立つものに原因を求めやすい「目立つ刺激への原因帰属」といった認知バイアスに注意が必要だと指摘する。 例えば、物価高で生活が苦しくなっている実感があると「普通の日本人が大切にされていない」というメッセージは分かりやすく、信じやすい(①)。そうした投稿や意見に繰り返し触れるうちに確信は強まり(②)、同様の意見にばかり着目するようになったり(②や③)、外国人という目立つ存在に原因を求めたりしてしまう(④)。そういった具合にさまざまなバイアスに陥っていく。
誤りを指摘する情報があってもなかなか響かないのも③のバイアスなどが関係している。安野さんは「自分が一度信じてふに落ちた情報は、後から誤情報だと分かっても訂正を受け入れにくい」と説明する。 ▽SNSは人間のバイアスを強化する 安野さんが、もう一つ指摘するのが人間のバイアスを強めてしまう環境的な要因だ。人はただでさえ分かりやすい情報を信じてしまいがちだが、SNSにはそれを強化する特徴があるという。 多くのSNSは利用者の閲覧履歴を基に、関心に沿った投稿を優先的に表示する仕組みを取り入れている。そのため、自分の価値観に合った情報にしか触れなくなる「フィルターバブル」と呼ばれる状態が生まれやすい。 さらに、価値観の近い利用者とばかりつながり、コミュニケーションを繰り返すうちに、自分の考えは多数派で正しいのだと思い込む「エコーチェンバー(反響室)」も起こりやすいという。 ▽人の脳はだまされやすい