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中国からのインバウンド激減が、日本の観光産業と経済効果の両面を「むしろ強靱化する」と言える根拠

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(写真:bee/PIXTA)

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2026年の半年間(1~6月)のインバウンド実績が揃いました。2108万人となったので 、25年の同期間と比較して2.0%の減少となりました。

その減少要因は、言うまでもなく、中国人観光客の減少です。中国からのインバウンドは、半年で206万人、前年対比で56.4%の減少です。19年は959万人でしたが、今年は400万人を切るでしょうから、そこから約500万人の減少要因となっています。

インバウンドに占める中国人観光客は9.8%と、03年以来の低水準です。03年から25年までの期間において、中国人観光客は全体の21.2%を占めていましたが、その半分以下です(下図)。

(出所:日本政府観光局のデータを基に筆者作成)

※外部配信先では図表が正常に見られない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご覧ください。

中国以外の地域からの訪日観光客は増加

とはいえ、26年のインバウンドは25年の4268万人に対して大きく減らないでしょう。私は4100万人はキープできると考えており、中国人観光客の減少要因を他の地域の増加で相殺することになります。中国以外の地域は13.3%も伸びています。この勢いで、仮に中国人観光客が横ばいだった場合、供給の制約を考慮しても、26年は4500万人を超えることになっていたでしょう。

地域別に細かく見ていくと、中国を除くアジアからのインバウンド伸び率は14.9%と大幅に増えています。26年通年では、約300万人増、率にして12.4%増加して、2775万人程度になると予想しています。

(出所:日本政府観光局のデータを基に筆者作成)

「欧米豪」など、アジア以外のインバウンドは7.4%増加の約955万人と、1000万人に近づくと見ています。アジア地域以外からのインバウンドは、遠い分だけ長く滞在するので、1人当たりの経済効果が非常に大きいのです。

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第二次安倍政権では、インバウンドを大きく増やす戦略を掲げた中、欧米豪向けの戦略にも力を入れていました。その結果、12年に比べて、25年にアジア以外の観光客は4.5倍となりました。アジアは4.0倍の増加ですが、その中で、中国が一番伸びて6.4倍で、中国以外のアジアは3.6倍でした。それが一転して、今年は中国からの観光客が激減しました。

これにより、Xなどで騒がれていた、実態のない「オーバーツーリズム」もあまり喧伝されなくなった印象を受けます。

今年はインバウンドがほぼ横ばいになるので、政府が掲げた30年に6000万人の目標を達成するために、来年以降の成長率目標は引き上げられます。もし今年4500万人まで伸びていれば、4年間で1500万人を増やすために、年7.5%の平均成長率が必要でした。26年の土台を4100万人とすれば、必要な平均成長率は10%となります。ハードルとしてはかなり高くなりますが、決して不可能な目標ではないと思います。

中国に依存するのはリスクが大きかった

中国人観光客の減少を受け、私は中国人に過剰に依存しない観光戦略を構築すべきと考えています。そもそも、私が欧米豪戦略を提言したのは、経済波及効果や、リスク管理の面で、特定の地域からの観光客に依存せず、世界満遍なく誘致する必要があると考えたからです。また満遍なく誘致することにより、季節ごとの観光客数の偏りを平準化しやすくなります。

下のグラフにありますように、年間を通してインバウンドの需要はほぼ一定で、あまり大きな山や深い谷がありません。実はこれは偶然ではなく、そうなるように設計した結果なのです。ただ、これからも中国人観光客が少ないままで推移するという前提に立つと、この制度設計をやり直す必要があります。

(出所:日本政府観光局のデータを基に筆者作成)

制度設計をした時に、誘致する地域によって、訪日をする時期が違うことが判明しました。欧米豪は多かれ少なかれ春と秋に山があります。中国を除くアジアは年末年始に山があります。中国人観光客は珍しく、7月と8月に大きな山があります。ちょうど他の地域からの訪日が少ない時期ですので、需要を平準化させていくために、大きな役割を果たしていました。

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そもそも、インバウンドは、観光地需要の平準化に大きな貢献をしています。国内の観光客はどうしても週末、大型連休に集中する傾向が強く、観光産業の生産性という点で大きな課題になっていました。インバウンドは日本人観光客があまり訪れない日にちを埋めてくれるので、観光産業に大きく貢献しているのです(参照→「京都はオーバーツーリズム」という大いなる誤解 データが暴く"インバウンド悪玉論"の不都合な真実)。

今後、中国人観光客が減ると、夏に谷が発生することが予想されます。おそらく、今年の7月と8月のインバウンド減少率は大きく出ると思います。

さて、ここでどうするかが問題です。

第二次安倍政権のインバウンド戦略は大きく分けて、主に以下の2点でした。

① 日本政府観光局の情報発信の革新

②観光産業の徹底的なインフラ整備

こうした取り組みを進めるために、国際観光旅客税が新設されました。国内外の観光客の満足度を高めて、単価を高めて、集中問題などの対策にも活用されています。

情報発信が大きく変わっていた

日本政府観光局の情報発信戦略も大きく変わりました。徹底的な分析に基づいて、海外事務所が増やされました。グローバルキャンペーンも展開されました。伝統と革新を中心にアピールしていた戦略を改めて、日本には多様な観光資源と魅力があることを訴求。雪国から亜熱帯まで、山、海、文化、アクティビティ、国立公園を中心とした自然を幅広く発信して、海外における訪日のイメージを一新しました。和食だけではなく、洋食もトップレベルと世界有数の食文化もアピールされています。

こうした努力により、4000万人の目標が達成されたので、次は6000万人を達成するために、新しいグローバルキャンペーンが始まっています。

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今回のキャンペーンは、行きたいけどまだ来られていない人向けに、そしてリピーターを増やすべく、日本観光の魅力を四季に分けて、四季別の魅力を深堀りすることで、いつ日本に来てもそれぞれの魅力を楽しめることを訴求するキャンペーンとなります。確かに、長く滞在する人でも、特定の季節しか滞在しません。平均して1週間ですから、秋に訪れた場合は、秋の魅力しか体感しません。

そこで魅力を四季別にアピールすることによって、「春に行って楽しかった。でも今度は夏に行けば、違った楽しみがありそうだね」といった反応を狙っています。

これは、これは、中国人観光客が減少すると、夏の誘致に大きく悪影響が及ぶ対策にも使えます。

「日本の夏は暑いから避けよう」などとも言われますが、他のアジア諸国には夏でもインバウンドが訪れています。また、日本=桜、日本=紅葉、というイメージを一新するべく、冬と夏の固定観念を変えて、これまでとは違う夏と冬の魅力をアピールしたいと思います。そのために、四季のキャンペーンが実施されています。

昔はそれほど自然をアピールしていなかったので、冬の訪日は少なかったですが、スキーの成功によって、冬のインバウンドは順調です。中国人観光客が減るとなると、夏が課題となるので、夏のキャンペーンは極めて重要で、目下全力で取り組まれています。

日本人観光客にも恩恵が及ぶ

日本のインバウンドの成功は、円安によってもたらされたわけではありません。インフラ投資と情報発信による政府の戦略の結果です。

また、インバウンド戦略の結果として整備された観光地を、日本人観光客も大いに楽しんでいます。事実、日本人観光客の単価も大きく上がって、観光産業の相乗効果は確認されています。

中国人観光客の依存度を下げても、夏の課題にしっかり取り組み、3000円になった国際観光旅客税を観光産業の設備投資に徹底的に充てることによって、私は30年の6000万人、外貨収入15兆円、経済波及効果30兆円の目標を達成できると考えています。

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