「腰痛」に関する総説をまとめてみた
腰痛の9割は「原因不明」?
最新レビューが示す、検査と治療の考え方
この論文は何を調べたのか
今回の論文は、医学誌『JAMA』に掲載された腰痛のレビューです。ここでいう腰痛とは、肋骨のいちばん下から、お尻の下のしわまでの範囲に生じる痛みで、脚の痛みを伴う場合も含みます。腰痛は世界で約6億1900万人に影響していると推計されるありふれた症状です。
著者らは、2005年から2026年2月までに発表された研究を検索し、臨床試験、追跡研究、複数の研究をまとめた解析、国際的な診療指針など108件を検討しました。
腰痛の多くは1か所の異常だけでは説明できない
医療機関を受診する腰痛患者の約90%は、「非特異的腰痛」に分類されます。これは、骨折、感染、がん、神経の圧迫など、痛みを説明できる特定の病気が確認されない腰痛です。
ただし、「原因がない」という意味ではありません。筋肉、関節、靱帯などの働きに加え、気分の落ち込みや不安、動くことへの恐怖、仕事上の負担や裁量の少なさ、社会経済的な状況など、複数の要素が異なる形で関係すると考えられています。例えば、画像で見える1つの変化だけを、痛みの唯一の原因と決めつけにくいのが腰痛の特徴です。
まれでも見逃せない原因があります
腰から脚へ伸びる神経の障害や脊柱管狭窄症は、初診の腰痛の5~10%です。骨折、脊椎の感染、がん、炎症性の病気、内臓や血管から伝わる痛みは、それぞれ1%未満と報告されています。
しかし、稀だから無視できるわけではありません。がんの既往、発熱、最近の感染や脊椎の処置、外傷、骨粗しょう症、長期間のステロイド使用などは、特定の病気を疑う病歴になります。
また、最近尿が出にくい・漏れる、股の周囲の感覚が鈍い、脚の筋力低下が進むといった症状は、腰の神経の束が強く圧迫される「馬尾症候群」の可能性があり、緊急の画像検査と専門的な評価が必要とされています。
「とりあえずMRI」がよいとは限りません
危険な病気を疑う所見がない非特異的腰痛では、レントゲン、CT、MRIを一律に行うことは勧められていません。検査をしても治療結果がよくならず、痛みとは無関係な変化を偶然見つけ、追加検査や不要な治療につながる可能性があるためです。
実際、MRIで加齢性の変化が見つかった割合は、腰痛がある人で77.8%、腰痛がない人でも74.4%でした。つまり、「椎間板がすり減っている」「膨らんでいる」という画像所見があっても、それだけで現在の痛みの原因とは断定できません。
急な腰痛の対応:動ける範囲で動く
6週間未満の急性非特異的腰痛は、多くの場合、時間とともに改善します。研究をまとめた結果では、痛みの平均値は発症時の56点から6週間後に26点へ低下し、12か月以内に約72%が回復しました。
基本は、重い病気の可能性が低いことや予想される経過について説明を受け、無理のない範囲で日常生活や仕事を続けることです。長い安静は回復を遅らせる可能性があります。
追加の対処として、腰を温める、専門家による徒手療法、マッサージ、鍼治療は、短期間の痛みを小さく軽減する可能性があります。ただし、効果は概して大きくありません。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋肉の緊張を和らげる薬(筋弛緩薬)も、痛みをわずかに減らしましたが、NSAIDsには胃腸障害や腎機能障害、筋弛緩薬には眠気などの副作用があります。
アセトアミノフェンや全身投与のステロイドは有効性が示されず、オピオイド系の鎮痛薬も明確な利益が乏しいことから、副作用を踏まえて限定的に扱うべきとされています。
3か月を超える腰痛:運動と心理面への支援が治療の中心
12週間を超える慢性非特異的腰痛は、急性腰痛より改善しにくく、12か月以内の回復は42%でした。ただし、痛みが完全になくならなくても、動ける範囲や生活機能を改善することは可能です。
治療の第一選択は、運動、認知行動療法などの心理的治療、両者を組み合わせた支援です。運動には筋力トレーニング、有酸素運動、ピラティス、柔軟運動などがありますが、特定の種類だけが明らかに優れているわけではありません。継続しやすさ、費用、体力、利用しやすさに合わせて選ぶことが重要です。
心理的治療は、「痛みは必ず組織が壊れている証拠である」「動くとさらに悪くなる」といった考えを整理し、避けていた動作や活動へ段階的に戻ることを支援します。運動と心理面への支援を組み合わせた治療や、複数の専門職が関わるリハビリテーションにも、小さいながら改善効果が示されています。
薬は、非薬物療法で十分に改善しない場合の次の選択肢です。NSAIDsにも一定の利益がありますが、胃腸障害や腎機能障害などのリスクがあります。抗うつ薬やオピオイドについては診療指針によって評価が異なり、期待できる利益と副作用を慎重に比較する必要があります。
非特異的腰痛に対する脊椎注射、脊髄刺激、固定術や人工椎間板手術は、一般的には勧められていません。侵襲的治療は、痛みの原因として妥当な部位が特定され、非侵襲的治療で改善しない場合に限って、慎重に検討してください。
この論文から読み取れる「腰痛」への対応
腰痛治療の中心は、「画像で異常を探し、安静にし、強い薬で痛みを消す」ことではありません。危険な病気を見分けたうえで、非特異的腰痛では、痛みについて正しく理解し、日常生活を保ち、急性期には必要最小限の対症療法を、慢性期には運動や心理面を含む包括的な支援を組み合わせる、という考え方が重要です。


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