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第23話

🩷💛
244
2026/07/14 18:00 更新
放課後の教室には、夏の終わりの風がゆっくりと流れ込んでいた。

文化祭の準備が終わり、残っているのは私と勇斗くんと仁人くんの三人だけ。窓の外ではオレンジ色の空が広がっていて、グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえてくる。
勇斗
やっと終わったー!
勇斗くんが大きく伸びをしながら机に突っ伏した。明るくて、誰とでもすぐ仲良くなれて、いつも場の空気を軽くしてくれる人。そんな彼の隣にいると、自然と笑ってしまう。
仁人
おつかれさま
仁人
片付け、手伝ってくれてありがとう
仁人くんは段ボールをまとめながら、静かにそう言った。派手ではないけれど、気づけばいつも周りを見ていて、困っている人を放っておけない。ふとした優しさに何度も助けられてきた。

私は二人の間で、なんだか落ち着かない気持ちを抱えていた。

文化祭の準備期間、勇斗くんとは毎日のようにふざけ合っていた。ペンキで手を汚して笑ったこと、休憩中にジュースを半分こしたこと。どれも楽しくて、胸が弾んだ。

でも、遅くまで残った日に ″暗いから送ってく″と何も言わずに隣を歩いてくれた仁人くんの背中も、忘れられなかった。

どちらといる時も、違う形で心が温かくなる。
勇斗
ねぇ、帰りアイス食べてかない?
勇斗くんが椅子を回しながらこちらを見る。
仁人
…もう店閉まるでしょ?
仁人くんが苦笑した。
勇斗
じゃーコンビニ行こうぜ
そんな何気ないやり取りを聞きながら、私は笑った。二人が一緒にいる空気が好きだった。だからこそ、この気持ちが変わってしまうのが怖かった。

片付けを終えて校舎を出ると、空はすっかり藍色に染まっていた。

コンビニへ向かう途中、勇斗くんが少し前を歩き、仁人くんが私の隣を歩く。夏の夜風が制服の袖を揺らした。
仁人
あなたの下の名前ちゃん、最近楽しそうだよね
仁人
文化祭、ずっと準備頑張ってたから
横顔を見ると、街灯の光が彼のまつげを照らしていた。
あなた
仁人くんもいっぱい助けてくれたよ?
そう返すと、仁人くんは目を細めた。

その時、前を歩いていた勇斗くんが振り返る。
勇斗
おーい、早く来いって!
走って戻ってきた勢いで、私の手首を軽く引いた。その瞬間、心臓が大きく跳ねる。
仁人
…勇斗、危ないから
仁人くんが小さく呟いた。
勇斗くんは ″あ、ごめん″ と笑って手を離したけれど、指先に残った熱が消えなかった。

コンビニでアイスを買い、公園のベンチに並んで座る。三人でいるはずなのに、どこか静かな時間だった。
あなた
…文化祭終わったらさ!三人でどこか行こうよ!
その言葉に安心しかけた時、隣から低い声が聞こえた。
勇斗
俺は三人じゃなくてもいい
思わず勇斗くんを見ると、アイスの棒を見つめながら続けた。
勇斗
…二人でも、行きたい
空気が止まったようだった。

勇斗仁人くんも黙ってしまう。いつもの明るい表情が少しだけ揺れた。
仁人
ちょ、勇斗?
勇斗
仁人もだろ?
仁人くんが慌てて止めようとするも、食い気味で勇斗くんが続けた。

図星をつかれたのか、耳を少し赤くした仁人くんが目を逸らして述べた。
仁人
…そうだけど、
胸がぎゅっと締めつけられる。

二人とも、同じ気持ちだったんだ。

夜の公園で、蝉の声だけが遠くに響いていた。
仁人
ごめん、急に、
仁人くんが視線を逸らす。
勇斗
俺は引かないから。
勇斗くんはそう言って、私を真っ直ぐ見た。
勇斗
俺、あなたの下の名前ちゃんといる時が一番楽しいから、ちゃんと特別なんだって気づいた
仁人
…俺もだよ
二人の視線が重なる。

逃げたくなるくらい恥ずかしいのに、不思議と嫌じゃなかった。

答えなんて、まだ出せない。

でも、夕焼けの教室で笑い合った時間も、夜道を並んで歩いた時間も、全部が大切だった。

風が吹いて、木々がさらさらと揺れる。

私は小さく息を吸って、二人を見た。
あなた
…答え、出せそうにないから…もう少し、このままでもいい?
夏の終わりの夜。

まだ答えのない恋は、静かに始まったばかりだった。

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