第19話

💛 浴衣
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2026/07/02 18:00 更新
花火大会の日。

待ち合わせ場所に向かうと、すでに仁人くんは腕を組んで立っていた。
あなた
ごめんおまたせ!
あなた
…待った?
仁人
待ってないよ
そう言いながら目を合わせようとしない。でも、待ち合わせ時間より十分も早く来ていたことは、わたしも知っている。
あなた
でも仁人くん来るの早かったね!
仁人
たまたまね
短く返されて思わず笑うと、″何笑ってんの″ と少しだけ不機嫌そうな顔をされた。
あなた
浴衣、どうかな…?
少し照れながら聞くと、仁人くんは一瞬だけこちらを見て固まる。
仁人
あなた
え、変??
仁人
いや…
それだけ言って歩き出してしまう。
あなた
ちょっと!感想!
仁人
…似合ってる。
あなた
きこえない!
仁人
あー!もう、似合ってるって言ってんの!
耳まで赤くしながら言われたその一言だけで、準備に時間をかけた甲斐があったと思えた。


屋台では射的に夢中になったり、かき氷を半分こしたり、金魚すくいで笑い合ったり。仁人くんは相変わらず、私の様子を見て、私が喜ぶたびに少しだけ表情が柔らかくなる。


花火が始まる少し前、人混みが一気に増えた。
あなた
…わっ、
誰かと肩がぶつかり、思わずよろける。

その瞬間、手首をぐっと掴まれた。
仁人
…ちゃんと前見て
あなた
ご、ごめん…
仁人
はぐれたら探すの面倒だから。
そう言って、掴んだ手は離さない。

私がそっと指を絡めると、仁人くんは少しだけ驚いた顔をした。
あなた
…嫌だった?
仁人
いや、
そう返しながら、今度は向こうからぎゅっと握り返してくる。

その手の温かさに、自然と笑みがこぼれた。

夜空に大きな花火が咲いた。

赤、青、金色――次々に色を変える光が二人を照らす。
あなた
きれい…
思わず見上げる私の隣で、仁人くんは花火ではなく、私を見ていた。
あなた
…こっち見て、どうしたの?
仁人
…見てない
あなた
嘘、こっち見てた!
図星だったのか、仁人くんは小さく舌打ちをして目を逸らす。
仁人
うるさい、
そんなやり取りをしているうちに、最後の大きな花火が夜空いっぱいに広がった。

歓声が上がり、人の波が少しずつ駅へ向かっていく。

二人もゆっくり歩き始めた。
あなた
今日はありがとう!楽しかった!
仁人
俺も、あなたの下の名前ちゃんと一緒に来れて楽しかった
素直な言葉が聞けるなんて思っていなかった。
あなた
珍しい…
仁人
…花火の日くらいは、ね
照れたように笑うその横顔が、いつもよりずっと優しく見えた。

家の前に着く。
あなた
じゃあね!
仁人
…まって、
あなた
ん?
仁人
今日さ…


仁人
浴衣、めちゃくちゃかわいかった。
あなた
顔を真っ赤にしながら視線を逸らす姿が可愛くて、思わず笑ってしまう。
仁人
笑うなよ、
あなた
だって嬉しくて!
その言葉を言い切ると同時に、″ あーもう、″ と小さくため息をついた仁人くんは、照れ隠しをするように私の腕を軽く引いた。

気づけば、二人の距離はあと少し。
仁人
……今日くらい、俺から
優しく頬に手が添えられる。

少しだけ目を閉じると、唇がそっと重なった。

花火みたいに一瞬で終わる、優しくて甘いキス。

離れたあと、仁人くんは真っ赤な顔のままそっぽを向く。
あなた
…照れてる?
仁人
照れてない、
そう言いながらも、帰ろうとするあなたの手をもう一度ぎゅっと握る。
仁人
また、来年も一緒に行く。
ぶっきらぼうな言い方なのに、その約束だけはどこまでも優しかった。

あなたは繋いだ手を握り返し、″ うん ″ と笑う。
あなた
約束だよ!
その返事に仁人くんは照れくさそうに笑って、″……絶対だから ″ と小さく呟いた。

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