今日は最悪な一日だった。
頑張って準備してきたことがうまくいかなくて、思うような結果も出せなくて。
家に帰ってからもずっと気持ちが沈んだまま。
泣きたくなんてなかったのに、気を抜いたら涙が出そうで、私はソファに座ったままぼんやりと床を見つめていた。
そんな時だった。
玄関のドアが開いて、聞き慣れた声がする。
佐野勇斗くんだ。
今日はうちに来る約束をしていた。
慌てて顔を上げて笑おうとしたけれど、
その声は思ったより弱かった。
勇斗くんは靴を脱ぎながら首を傾げる。
そう答えた瞬間。
ぽろっと涙が落ちた。
自分でもびっくりした。
隠そうとして顔を背けるけれど、もう遅い。
勇斗くんは何も言わずに隣へ座った。
その優しい声を聞いた途端、我慢していたものが全部溢れた。
途切れ途切れに話す。
頑張ったこと。
失敗したこと。
悔しかったこと。
自分が嫌になったこと。
勇斗くんは途中で口を挟まなかった。
ただ静かに聞いてくれる。
それだけなのに、救われる。
最後にそう呟くと、勇斗くんは少しだけ眉をひそめた。
いつもより真面目な声だった。
その言葉に胸が熱くなる。
結果しか見てもらえてないと思っていた。
誰も気づいてないと思っていた。
でも違った。
優しく言われて、また涙がこぼれる。
勇斗くんはそっと私の頭を撫でてくれた。
大きな手が心地よくて、少しだけ力が抜ける。
勇斗くんの肩にそっと頭を預ける。
すると嬉しそうに笑う気配がした。
まるで子どもをあやすみたいに髪を撫でられる。
恥ずかしいのに、離れたくなかった。
しばらくして涙が落ち着くと、勇斗くんが私の顔を覗き込む。
心臓が跳ねた。
こういうことを急に言う。
本人はたぶん無意識だ。
だから頬に残った涙を指で拭う。
確かにそうだった。
連絡は取っていても、顔を合わせるのは久しぶりだった。
さらっと言われて息が止まる。
また不意打ちだ。
恥ずかしくて顔を隠そうとすると、勇斗くんに手を掴まれる。
少しだけ距離を縮めると、私の額を軽く小突いた。
胸の奥がじんわり温かくなる。
勇斗くんは最後にもう一度頭を撫でた。
そして少しだけ照れたように笑ってから、ぽつりと続けた。
その一言に、今日一日抱えていた苦しさが全部溶けていく気がした。
私は勇斗くんの肩にもたれながら、小さく笑った。
すると勇斗くんも安心したように笑って、もう一度優しく髪を撫でた。
ご愛読いただきありがとうございます♩ ܸ
毎日投稿していましたが、当方受験生で少し忙しいため数日に1回の更新に変更させて頂きます;;
引き続きお楽しみいただけると幸いです 💘
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。