ある日の帰り道。
わたしは沈み始めている太陽を後にして幼なじみの 山中柔太朗くん と並んで歩いていた。
駅へ向かう途中、彼は電柱に貼られた一枚の張り紙を指差した。
『 猫を探しています 。 』
写真には白と茶色の毛並みの猫。つぶらな瞳が印象的だった。
思わず呟くと、それを聞いていた彼が張り紙に目を向ける。
その日はそのままその場を後にしたものの、私はどうしてもその猫のことが気になってしまった。
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数日後の帰り道、路地裏から小さな鳴き声が聞こえた。
私が声のする方へ駆け出すと、彼も慌てて後ろからついてくる。 生い茂る雑草を掻き分けて奥の方を覗くと、そこにはあの張り紙の子とそっくりな猫がいた。
間違いなく、あの猫だった。
私たちは張り紙に書かれていた電話番号に連絡し、無事に飼い主の元へと届けることができた。飼い主さんはとってもいい人で、私たちに何度も頭を下げた。
私たちは断ったが、恩人だから。という理由で猫カフェのチケットを渡された。
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翌日の日曜日。私たちは例の猫カフェに訪れていた。
店主はすぐに私たちに気付いて笑顔で出迎えてくれた。
店内に入ると、たくさんの猫たちが思い思いにくつろいでいた。
私はすぐにしゃがみこんで、1匹の猫を撫でた。
すると、他の猫たちも撫でろと言わんばかりに寄ってきて気づけば私の周りは猫で溢れていた。
私は得意げに笑った。
それからもたくさん写真を撮ったり、おもちゃを使ったりして遊び続けた。
気づいた時には彼とはほとんど話していなかった。
抱き上げた猫を見せようと振り返る。
しかし、彼は不機嫌そうにしていた。
彼の低い声は私をぞっとさせた。
予想外の言葉に私はぽかん、としてしまった。
そうだね。と彼は優しい声で答えた。
そしてゆっくり立ち上がり、私の隣へ来てしゃがんだ。
猫を撫でる私の手元を見つめたあと、その視線がまっすぐ私へ向く。
少しだけ真剣な顔。
胸がどきりと鳴った。
低く、優しい声。
その言葉と同時に、私の心臓が大きく跳ねた。
膝の上の猫が ″にゃあ″と鳴く。
なのに今は、その声すら遠く聞こえた。
だってもう、目の前の彼から目が離せなかったから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。