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『アシスタント』より
『アシスタント』より

被害者の心理を映像と音で表現したホラー

興味深いのは、ジェーンの精神がどんどん蝕まれていく様子が映像と音で表現されている点だ。ジェーンが混乱し、圧力に負けそうになっていくと、カメラは彼女を頭上から映し、ジェーンは自分自身がなくなっていくかのようにスクリーンの奥に沈んでいく。

このユニークなカメラワークについてグリーン監督はこう話す。

「蛍光灯やオフィスの平凡さを表現することで、ある意味、心理的な圧迫感を与えることができると思ったんです。特にジェーンはセリフがほとんどありません。彼女をあらゆるアングルや距離で撮影して、“心理”を表現しました」

『アシスタント』より

そもそも、この映画には上司の姿が登場しない。上司の部屋からときおり聞こえるひそひそ声、ざわめき、怒鳴り声だけが登場する。社員同士のあたたかな交流はなく、奥の部屋にいる姿を現さない上司にひれ伏す、沈黙の社員たち。そこにコピー、スキャンやコーヒーマシーンの機械音が響く。社会派人間ドラマなのに、ホラー映画のような不穏な映像と音が漂う。

監督はなぜ、上司の姿を見せなかったのだろうか。

「映画『ジョーズ』が怖いのはサメの姿じゃないですよね? 怖いのは、サメが近くにいる、ということ。見えないのに有害な存在を感じさせることを目指しました。それに、これは世界中の多くの会社で起こっている、多くの人々が受けているハラスメントの話。顔のない上司のほうが、観客がより物語に共感してくれるだろうと思いました」

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ハラスメントは「共犯関係」によって温存されていく

ハラスメントの加害者とイネーブラーたちの共犯関係をリアルに描く『アシスタント』。ジェーンはこの後、いったいどうするのか。同僚や人事部のヘッドのように、上司の共犯者になってしまうのか――。

『アシスタント』より

「映画会社で働くたくさんの人々に取材し、実際に起きたハラスメントを観察するドキュメンタリーのような作品に仕上がった」というキティ・グリーン監督。実は、この映画の投資を得るのは非常に難しかったという。

「『この脚本は好きだけど、投資はできない』と何度も断られました。自分たちの業界の搾取的な部分に向き合いたくなかったのが理由かもしれません。#MeTooの後、女性監督の数は増えてきましたが、その変化は本当にゆっくり。男性監督のように投資を受けたり、認知されたりする女性はとても少ないんです」

映画界に限らず、ハラスメントや性差別は加害者ひとりを断罪すればなくなる話ではないのだ。

アシスタント』は6月16日(金)より新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
(C)2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.
配給・宣伝:サンリスフィルム

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