6月16日に公開される映画『アシスタント』は、ハラスメントが蔓延る職場で働く若いアシスタント、ジェーンの一日に焦点を当て、ハラスメントがどのように行われ、なぜなくならないのかを描いた作品だ。ガーディアン紙の著名な映画評論家ピーター・ブラッドショーは本作を「#MeToo問題を描いた初めての作品だ」と評したことでも注目を集めている(※1)。
「え、ハーベイ・ワインスタイン事件を告発したジャーナリストを描いた映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』があるんじゃないの?」と思う人も多いだろう。『SHE SAID/シー・セッド』は、2017年に映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行をスクープしたジョディ・カンターとミーガン・トゥヘイのベストセラー回顧録『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』を映画化したもので、ジョディとミーガンの調査過程と闘いを追ったものだ。
両作品とも、組織的なハラスメントの隠蔽に直面しながら、正しいことをしようとする人々の葛藤を扱っている点で共通しているが、ハラスメント問題がハーベイ・ワインスタイン事件とは関係なしに、今も多くの場所で続いており、なくならないという事実を描いている点において、ブラッドフォードは『アシスタント』を高く評価したという。
今回、本作を制作したオーストラリア人のキティ・グリーン監督に取材することができた。映画会社で働くさまざまな人に取材したというグリーン監督が考える、組織の中でハラスメントを生むものと、それを温存してしまう構造とは。
名門大学を卒業したばかりのジェーン(ジュリア・ガーナー)は、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職した。業界の大物である会⻑のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、常態化しているハラスメントを知る。しかし、彼女は将来大きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかないこともわかっている。ある日、会⻑の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意するが――。
職場におけるジェンダー不平等
本作は、映画会社の会長のアシスタントとして働くジェーンの小さなオフィスを舞台にしている。ジェーンの同僚には男性が2人いるが、彼らのランチをオーダーするのも、部屋を掃除するのも、大量のコピーをとるのもジェーンの仕事。男性たちの仕事はキャスティングやロケ地など、もっと映画製作よりだ。
コピー、スキャン、部屋の掃除、食事の手配、上司の家族からの電話応対……細々とした業務を抱えるジェーンは、誰からも名前を呼ばれず、話しかけもされない“透明な”ケア要員。英語では匿名の女性をよく「Jane Doe」と記載するが、主人公の名前ジェーンには“誰でもない女性”という意味が込められているのかもしれない。とにかく、女性は男性の補佐役だというジェンダーバイアスがこのオフィスには確実に存在する。
現実に、職場でのジェンダー不平等はアメリカでも大きな問題だ。2022年の調査によると、米国の女性の賃金は、男性の1ドルに対して平均で約82セントで、過去20年間、ほとんど改善されていないという(※2)。ちなみに、「総合職は男性が就くもの」「一般職は女性が就くもの」というジェンダーバイアスが強く残る日本の男女賃金格差は、男性の100に対して女性74と、アメリカよりもずっと格差が開いている(※3)。
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